目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
幕は切って落とされた。
「各機! シュミレーションは頭に入ってるね!」
スロットルペダルを踏み込みながら、ノーランは敵陣地に向けて155mm榴弾速射砲を乱射する。
「61式にだけは気をつけろよ!」
連邦の陣地には高射砲を防衛するために、対歩兵・車両用の防御火器と61式戦車が配備されている。
前者は小型目標に対しての武装であるためMSに痛打を与えることはかなわないが、61式戦車が持つ150mm砲は脅威だ。
開戦当初こそザクの装甲すら抜けない代物だったが、現在では砲弾を変え、直撃すればドムですら致命傷を負わされる程の威力を持っている。
加えて、こちらのゲーツはザクよりも装甲が薄い。掠めただけでも全身がバラバラになるかもしれないと思うと、ノーランは胃の中が冷たくなる気がした。
連邦は敵が襲撃してくると予想していなかったのか、初動が鈍かった。近接防御火器が銃砲を向けてくるが関節にさえ当たらなければ装甲板を抜けるほどの火力はない。
「ドクは砲撃! なにやってんの!?」
前進が遅れている3番機に檄を飛ばす。初の実戦だ。ノーラン自身余裕を見失っていた。
MSはジオン最新最強の兵器だ。
だが、新しいということはこれまでの戦訓を活用できない、戦術や戦略を一から築かなければならないということだ。
部隊長のミュラーも、他のメンバーもMSは扱えない。結果、適性試験に受かったノーランたちは手探りでMSの戦い方を模索しなければいけなかった。
「いま撃つぜぇ!」
175mmの砲弾が、あさっての方角に飛んでいき、着弾して爆ぜた。
「ドク!?」
「うぎぎぎぃやあ!? 肩が! 肩がやられたぁ!」
「やられたのか!?」
「ちがうぅ! 肩が、勝手に吹き飛びやがったぁっ!」
ゲーツの肩上部には武装を装着可能な懸下装置がある。3番機はそこにマゼラトップの砲身を詰めたものを取り付け、簡易的な砲戦仕様機としていたのだが、砲撃の反動を殺しきれずに装置ごと吹き飛んだのだ。
見ればドクの機体は仰向けに倒れ込んでいる。
「早く起き上がれ! トニーはカバーしろっ!」
不甲斐ない同僚に苛立ちを隠さずノーランは舌打ちした。
トニーが応答する。
「ちいと戦車の数が多すぎないか!」
いや、言うほど61式の数は多くない。だが、武装トラックに乗った歩兵がこちらに向けて肩撃ち式のロケットランチャーをぶっ放してくる。
胴体に命中し、少なくない衝撃がノーランを襲うが、さすがにMSだ。装甲が一部ひしゃげた程度のダメージしかない。
「そんなもんで! 出てくるからさぁ!」
155mmを武装トラックに向けて撃つ。
車両の爆発とともに、先程の兵士は砂地に転がり動かなくなった。
「後続のマゼラ隊がつくまでにもっと数を減らさないと!」
さらに乱射した銃撃で、61式が1両爆発した。次のターゲットを攻撃するが、当たらない。
155mmは威力はあるが、口径が大きいせいで空気の抵抗を受けて弾道が安定しないうえに、ゲーツの腕では反動を殺せていない。さらに発射サイクルも長いため、修正射撃で無駄に弾を浪費する。
ノーランが逃した敵をトニーの銃砲が仕留めた。
さらに敵陣地に数発の砲弾が刺さり始める。
後続のマゼラアタック隊の砲撃だ。
――隊長が合流した。
ほっと息をつきかけた瞬間、頭上を閃光が走り抜けていった。