目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
「なんだ、これは?」
これを初めて見た人間は、みんなそう言うね。
「はい。これは筐体です」
壁に向かって、1番から6番のナンバリングされた6つの大きな箱型の機械が並んでいる。そして壁の上部には大型のモニタースクリーンが設置されていた。
そう、前世のゲームセンターであったアレである。
ゲーム筐体を大型にし、より本格的にした密閉型のボックスタイプを想像してもらえばよい。
「MSのコックピットを持ち出しまして、
みるみる大佐と大尉の顔が不穏なものになっていく。
ノイン大尉が呆れたように首を振る。
「何を作業しているのかと訝しんでいたが、まさかこんなものを作っていたとはな」
彼女が赴任する前から作業してたからね。知らなくても仕方ない。
「つまり中尉、君は大金をかけて軍学校にあるシュミレーターをわざわざ作り上げたというわけだな」
「はい。いいえ、大佐。これはそれ以上の物であります」
「私には違いがわからんがな! こんな玩具を作るためにどんだけの金を無駄に――」
「そいつは聞き捨てならねぇお言葉ですね、大佐」
ガルマ大佐のセリフを遮って出てきたのは、シゲさんだった。眼鏡の奥の目が妙に座っている。
「貴様は?」
「第1機動小隊整備班長のシバ・シゲ曹長であります。大佐のいう玩具ですがね、これでもうちら整備班が総出で作り上げた一品なんですよ。なんせこれで、うちの整備班のあらかたがMSを動かせるようになりましたからね!」
ガルマ大佐は確認するように、ついてきていた参謀に目を配る。
参謀はタブレットを手に取ると、なにやら調べ始め、
「確かに第1機動小隊の整備回転率は、従来かかっていた時間の半分以下になっておりますが、整備員がMSを扱えているかは――」
「ノイン?」
「申し訳ありません。私が赴任した時点で、メンバーのほとんどがMSを扱っておりまして……そういうものなのだと」
ドヤァ。
信じられないものを見たような顔を大佐が向けてくる。
「大佐、ここはひとつ、大佐自身でこいつの出来を、有用性を確かめてみてはどうです?」
「私が、だと?」
シゲ曹長の言葉にガルマ大佐は鼻白む。
当然だ、基地内では大佐がMS適性試験に落ちていることは知れ渡っている。
一部の人間はそれで『親の七光りがなきゃMSに乗ることもできない坊や』なんて陰口を叩いてるぐらいだ。
だが、僕らが作ったこのシミュレーターの真価は、そうした人間でもとりあえずMSを動かす技量を身に着けさせるとこにある。
「そこの君! 大佐がシミュレーターに乗られる! 新品のパイロット用ヘルメットを持ってきてくれ!」
遠巻きに覗いていた整備員の1人に素早く指示を出して外堀を埋めてやる。
「私は、MSには――」
「指揮官が前線兵器のことを熟知していれば、それだけで末端の士気が上がりますよ」
そう言ってやると、渋い顔をして睨んできたが、諦めたのかため息を吐いた。
「私もザビ家の男だ。だが、こいつが使い物ならないと判断したら、相応の責任は取ってもらうぞ!」
もちろん。
だから大佐も覚悟してくださいね。