目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第49話 Side『オルド・フィンゴⅡ』

 

 大佐を1番筐体に押し込めて、僕は通信用ヘッドギアを装着する。

 

「それでは起動していきます。大佐、まずは正面のタッチパネルで機体を選んでください」

 

「ザクだけでなく、ドムもあるのか」

 

 大佐はドムを選択。

 

「はい。選びましたね。では機体起動シークエンスに移ります。大佐、MSの立ち上げ手順は覚えてらっしゃいますか?」

 

「バカにするな!」

 

 怒声を返してガルマ大佐は自機の起動を行うが、やはり手間取っている。

 

「ずいぶんと本格的なのだな」

 

 横からノイン大尉がそう感想を述べてくる。

 

 壁掛けの巨大モニターには、使用している筐体内の様子と、シミュレーターによるCGが分割して表示されているので、外にいる者も状態を確認できるのだ。

 

「もともと先任であるラムザット大尉のドムが、コックピット周り総取っ替えになったのがきっかけでして」

 

 1番筐体は、ラムザット大尉のドムのコックピットを改造して作ったものだ。操作系がお釈迦になったため、パーツ取りに回され、中央ブロックは分解廃棄されるはずだったのだが、勿体ないから修理して何かしらできないか? と思った次第。

 

 なので軍学校にある簡易的なシミュレーターシートとは違い、こちらは実機と変わらない仕様だ。

 

「はい、立ち上がりました。練習用のミッションはこちらで選ばせてもらいましたので、作戦概要に目を通して頂いて、よければ発進となります」

 

「はぁ……くだらない茶番だな」

 

 批判しつつも、ガルマ大佐はしっかりとミッション内容に目を通している。この辺、真面目なんだよなぁ。

 

 やがてミッションスタートとなり、モニターには青い空と赤茶けた砂漠が映し出される。

 

 作戦内容は、単機で連邦の小陣地に挑み、トーチカ群を破壊するという内容だ。

 

 単機突貫なんて作戦は正気を失うものだが、あくまでもシミュレーターなので勘弁してほしい。ゲームだとよくあるシチュエーションだ。

 

 ガルマ大佐が恐る恐る、といった感じでドムを前に進める。

 

「これは……振動も再現しているのか?」

 

「はい。加速時のGはさすがにありませんが、砲撃、被弾、移動時に発生するであろう振動はコンピューターで計算し、再現しております。なので念の為に大佐にはヘルメットを装着して頂きました」

 

「なかなか凝った作りなのだな」

 

 そう言って大佐はCGで作られた世界に視線を巡らせる。

 

「なんだ? MSの視界が勝手に動いたぞ?」

 

「大佐の乗っている1番機には、試験的に『視線追従モジュール』が導入されております。操縦者の目線と連動して、モノアイと頭部が動きますので」

 

 なお、この機能はオフにもできる。操縦桿に付随しているスイッチを強く握り込んでいる間は機能がオンだ。つまり大佐は緊張してるってことですね。

 

「しかし動きがスムーズだな。シミュレーターだからか?」

 

「はい。いいえ大佐。MSは実働を重ねたためにOSと補助AIが更新されておりまして、地上用のものは今はこんな感じですよ」

 

「そうなのか。これなら……」

 

 喜色を浮かべるガルマ大佐。おそらく最初に受けた適性試験では、立たせることもできなかったんじゃないかな? 今はその点はオートでやるようになってるからね。ベテラン勢からは軟弱だ、なんてクレーム出てるけど。

 

 シミュレーターに導入してある動作AIは、実はノイン大尉の機体からコピーさせてもらったものだ。

 

 最初は我が軍のエースであるゼクス少佐のものにしようかと思ったのだが、あの人基本的にはキリシマ女史(イノシシ)と変わんないんだよね。

 

 天賦の才に溢れてるから上手くいってるだけで、動きがピーキーすぎるんだ。

 

 一方、ノイン大尉は教導隊に所属していたというだけあって、動作がMSの規定値にぴたりと当てはまる。

 

 ゼクス少佐曰く、「MSの操縦なら、彼女は私よりも上手だ」とのこと。

 

 原作OVAでも、旧型(トーラス)新型(サーペント)の群れを無力化してたもんね。実力はトップクラスなんだ。

 

 実際、実機の演習では僕とキリシマ曹長のタッグでもノイン大尉に土をつけることは叶わなかった。

 

 大佐の前方に目標である連邦陣地が見えてくる。

 

「中尉、この赤いマークはなんだ!?」

 

「ああそれは――」

 

 説明を続ける。

 

 赤いターゲットマークは、脅威度の高い目標で、黄色は今はそこまでではないが潜在的に脅威度の高い目標。青は低いものとなる。ちなみに紫色が作戦目標だ。

 

 シミュレーターではAIが勝手に表示しているが、実戦では情報解析を担当した人員が手動でマーキングを行うことになる。

 

 前世でのAWACS、つまり早期警戒管制機(airborne warning and control system)と同じシステムだ。

 

 実はこれ、キリシマ曹長の案なんだよね。

 

 近接攻撃大好き猪突猛進お嬢さんは、目についたものを反射的に片っ端から攻撃してしまうため、攻撃効率がすこぶる悪い。被弾も増えるとなかなかに戦果が上がらない。

 

 で、彼女自身、どれを真っ先に叩けばいいかわかりやすいのがいいと意見が出たので、こういう形になった。

 

 戦場では後方に位置する僕がマーカーをつけて、キリシマ曹長がそれを叩くという寸法だ。

 

 うちの部隊だけの試験運用なんだけど、シミュレーター1番機にはこれを導入している。

 

 現在このシステムを導入した管制用機を制作中だ。これもバレたら怒られるやつかなー。

 

「これは! リアルだな!」

 

 モニターにはCGで描かれた連邦陣地と、護衛の61式戦車が現れている。

 

 リアル、と大佐は表現したが、前世でこの手のゲームに触れた自分としてはそれほど精緻(リアル)に長けたものではない。

 

 それでも驚きを持って迎えられたのは、この世界にはこうした3Dシューターのようなエンターテインメントメディアが発展していないからです。

 

 科学技術は本来なら旧世紀よりもはるかに進んでいるはずなのだが、コンピューターゲームというものは全くと言っていいほど普及しなかった。

 

 というよりも、人口において下層民が圧倒的すぎて、こうした大金を投入して開発するエンタメが廃れてしまったというべきだ。

 

 前世ではゲーム業界というのは最新技術(エッジテック)の宝庫であったのだが、この世界では選ばれた上流階級にのみ許された特権であり、一般人は灰と泥と油に塗れてあくせく働くので精一杯。娯楽風俗的には旧世紀の近世並みまで退化している。

 

 なので、こんなレベルのCGでも製作するのにめっちゃくちゃ金を食いやがったんだよな。大半はAIにやらせたんだけど。

 

「さて大佐、ここから本番です。うまくMSを操って作戦目標であるトーチカを破壊してくださいね」

 

 さあ、堪能してもらおうじゃないの。戦場の絆(バトルオペレーション)ってやつをね!

 

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