目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
はい、大尉殿。自分をお呼びとのことで。
はっ! 確かに自分はオルド・フィンゴ中尉とは士官学校で同期でありました。本人は私の顔など覚えてないようでしたが。まあ、自分は影が薄いとよく言われるんで。
はい、はい。
あー……彼の人となり、でありますか?
そう、ですね。その……率直に申しまして、サイコパスだな、と。
これは当時の同期生全員の共通認識でして。
「人としての情緒的何かを生まれる前にどこかに落としてきたのだろう」なんてよく言われてましたね。
ああはい、学生の頃からですよ、あの調子は。
中尉は見た目がその、少々特異でいらっしゃいますから、当時はよく担当教官のからかいの種になってました。
一人、とてもひどい教官がいまして。
格闘技訓練などで、学生に絞め技をかけて、気絶させるのを楽しむようなやつだったんです。
しかもわざと頸動脈をずらして、技をかけられている学生が苦悶の表情を浮かべるのを見て笑ってるんです。
皆嫌ってました。中にはその日の訓練担当がその教官だと、ひどい下痢を起こして参加できなくなり、辞めていった者もいます。
はい。そんな中、フィンゴ中尉だけは淡々と訓練をこなしてました。教官に技をかけられても、抵抗しないで無表情なんですよ。
面白くなかったんでしょうね、しょっちゅう標的にされてました。
でも不思議と彼、怪我だけはしなかったんですよ。
フィンゴ家はムンゾ開拓時より参政していた、いわば「お貴族」様ですから。教官もあまり目立つイビリはできないと思って手加減していたのかもしれません。彼自身は、没落したから大したことはない、なんて言ってましたが。
彼が本性をむき出しにしたのは、士官学校卒業式の日です。
彼に「おもしろいものを見せてやる」と言われて屋内訓練場に呼ばれまして、20人ぐらいいたかな?
彼、割と交友関係が広いんですよね。知らない顔もいました。
で、そこには件の教官とフィンゴ中尉がいまして。
フィンゴ中尉曰く「教官にはお世話になったので、これまでの成長を見届けてほしい」と。
つまり決闘を申し込んだってわけです。
教官はにやにや笑ってましたね。体格的に、絶対負けるはずないと思ってたのでしょう。
我々は見届人でした。全員、一度ならず教官の
結果ですか?
フィンゴ中尉の圧勝でしたね。
試合開始の合図と同時に、フィンゴ中尉は隠し持っていたテイザーガンを構えて撃ったんです。早業でした。
その一撃で気絶した教官に、「試合に勝ちましたので、その思い出として教官の髪をいただきますね。返答がない場合、承諾したものとみなします」と言い放ちましてね。
答えられるはずはないんですよね。でも、これ教官がよくやってたことでして。過去には絞め落とされたあげく、勝手に坊主にされた者もいました。それの仕返しということですね。
まあそれで、教官の頭頂部だけに脱毛クリームを塗って禿げ……失礼。まあ、そこだけをツルピカにして、残った髪を白く脱色させましてね。
あーテイザーガンと脱毛クリームと、脱色剤は自分で作ったと言ってました。それを試したかったと。
で、ツルツルにした部分を、強力なボディペイント剤で真っ赤に塗りたくりまして。
なんでも、地球の東洋にある島の古い国旗なんだそうです。旧世紀時代の。
そうなんです。結構そういった知識がやたら豊富で、よく話してくれたりしたんです。まるで以前そこに住んでいたかのように話すんですよね。
班メンバー全員に、その島国の郷土料理を振る舞ってくれたことも何度かありました。
一口サイズに切った鶏肉を串に差して、わざわざ炭火を使って焼いた食べ物とか、こらも鶏肉なんですが、衣をつけて揚げたやつとか。
それなりに美味かったですね。ただ、なんていったかな? 酢であえた米に、生魚の切り身が乗ってるのを出されたときは、やっぱりコイツは狂ってる! って誰も手を出しませんでしたねぇ。
コロニーで養殖されてる魚類って、何食べて育ってるか知ってますか? 知ってたら、とても生でなんて……。
技術開発部時代ですか?
あー私の先輩が彼と同じ部署でしたね。
向こうでも色々エキセントリックな行動には出てたみたいです。
配属されたばかりだというのに、当時開発中だったMSの仕様にあれこれと口を出してたみたいです。さすがに採用はされなかったみたいですが。
ただ……あのー、これオフレコにしといてもらえます? 上層部にバレたら、自分と先輩の首が飛んでしまうネタがありまして――