目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第56話 Side『ザビ家の兄妹弟』

 

 本国とグラナダ、そしてソロモン海域のア・バオア・クーとの秘匿レーザー通信網が完成した。

 

 そして今日、モニター越しにザビ家の兄、妹、弟の三人が顔を合わせることになる。

 

「兄貴! キシリア! 久しぶりだな! ようやくこうして話ができる」

 

 ドズルが笑った顔を画面に映す。体躯も大きく、以前サスロ暗殺事件に巻き込まれた際に負った傷跡が残っているため、他者からすると獣が吠えているようにも見える。

 

 もともとは気弱で、家族以外からは「ザビ家の愚図」などと陰口を叩かれる性格であったが、暗殺事件の後に性格が180度反転した。ギレンやキシリアは、まだ爆破のときの破片が頭に残っているのだ、と半ば本気で思っているほどだ。

 

「ドズル、ルナ2連中の押し込め、ご苦労だったな」

 

「おう。あいつら反撃を受けて、蜘蛛の子を散らすように逃げていったわ!」

 

 連邦軍はヘリオン作戦と称して、地球軌道上に駐留する公国軍の艦隊に、大規模な艦隊戦を挑んだ。

 

 結果は連邦軍の大敗であり、残存した艦艇はルナ2に立て籠もり、大人しくしていた。

 

「しかしあの『新型(ゲルググ)』はいいな! あれが量産されれば俺らの勝ちは確定だろう!」

 

 YMS-11 ゲルググは、次期主力MSとしてジオ・マッドが開発したものだ。生産を優先したため、開発の遅れていた携行型ビーム兵器の実用をオミットし、先行試作型として採用。ドズル麾下のエースパイロット達に運用させたが、高い結果を出した。

 

 気楽に笑うドズルに向けて、キシリアが首を横に振る。

 

「いや、そう簡単な話でもありますまい。依然として連邦との兵員数の差は圧倒的。MSの開発を急いでいますが――」

 

「それはわかっている。戦争は数だ。兄貴、地球のMS数は安定してきているのだろう? ならば少しこちらにも余剰を回してくれ。そうすれば、勢いでルナ2を落とすこともできる」

 

「キシリアの言うとおり簡単な話ではないな。地上は想定よりも兵たちの損耗が激しい。MTの投入で歩兵を戦車兵へと転換させることが可能となったが、MSパイロットはそうそう安く手に入らん」

 

「兄上、それなのですが――」

 

「話は聞いている。北米から上げられた例の筐体だな?」

 

「はい。地上用に特化されたシミュレーターですが、独自にOSに改良が加えられておりまして、操作性がだいぶ緩和されております」

 

 北米、ガルマ大佐が治めるニューヤークにて開発された筐体は、実機のコックピットを模したもので、訓練プログラムも、起動から歩行、機動戦、砲撃戦、格闘戦と凝っている。さらに砂漠地や湿地、地球特有の環境である嵐や雹といった環境データまで網羅されていた。

 

「キシリアが送ってきたサンプルをラルに試してもらったんだがな、なかなか好評価だったぞ。だが、宇宙であれは使えんだろう。宇宙用の挙動は一切入力されてなかったからな」

 

「ドズル兄上もお乗りになったので?」

 

「あ、いや……わかるだろ? 俺の体躯じゃコックピットは狭すぎてな」

 

「……」

 

 ギレンとキシリアが生温い目をドズルに向ける。

 

 ドズルは咳払いした。

 

「あれはガルマが作って寄こしたのだろう? あいつはこのところよく出来ているじゃないか! ついに頭角を現したのだな」

 

「まさか、あれは部下に挙げられた物をただ承認しているだけにすぎませんよ。特に一基地の指揮官風情が、大金をそうポンと使い込まれては困る、とマ・クベからも苦言が来てますから」

 

 マ・クベ中将はキシリアの命を受けて、ガルマに対して可能な限りの便宜を図っている。だが、各部署間のバランス取りは

重要だ、と眉をひそめていた。

 

「だが有用だろう。ニューヤーク市中も穏やかに掌握していると聞く。なんでも地球じゃ『北米モデル』なんて統治の見本になってるそうじゃないか」

 

「それがガルマ本人による才なら私も手放しで喜ぶのですがね」

 

「なんだキシリア、女だてらに弟の才覚に嫉妬しているのか」

 

 ドズルは軽くからかってやろう、という程度だったのかもしらない。だがキシリアは過敏に反応した。

 

「それはどういう意図での発言か? ドズルの兄上」

 

「なんだと?」

 

 剣呑な雰囲気を感じ取って、ドズルも身構える。

 

 キシリアは冷気を、そしてドズルは揺らめく炎を背に纏ったようであった。

 

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