目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
「ところがだ、ギレンが『サイド共栄経済圏』などという思想を公表してからどうだね? コロニーは急速にその経済圏を確立しはじめ、自立の道を歩み始めている」
「お言葉ですが、まだコロニーはアーコロジーとして完成はしていません。地球を、切り離すことなどできますまい」
空気と水は、人類にとって必要不可欠なものだ。それを持っているのが地球である以上、人はこの星を見捨てることなどできない。
「それも時間の問題だろう。ジオンに至っては、火星圏への航路を確立し、水と空気の供給路を独自に確保している。木星公社とも独自に取引を始めているようだしね」
「木星公社は、実質我らの国営です。ヘリウム3は我らが独占してるといって良いでしょう」
「いや、公社はとっくに連邦を見限っているよ。我らが彼らを、どう扱ってきたか知っているなら、当然の帰結だろう」
木星公社は、木星の資源を採掘するために過酷な環境での生活を強制されている。
連邦の高速艇を使っても地球近海から木星までの距離は遠く、往復するだけで6年はかかるのだ。
「我らの手の中にあって、我らの目の届かない場所、それが木星だよ。私のルートで仕入れた情報だと、すでにジオンと手を組んでいる」
「そんな……」
「政治屋どもが、自らの生活のみを追求し、地球以外を蔑ろにしてきたツケが回ってきたな。そうでなければ、もっと穏便な手段で地球圏の主権はコロニー民の手に渡っただろう」
「閣下! その発言はあまりに危険な思想です!」
連邦軍高官の言としてはあまりにも無遠慮な内容だ。
思わず立ち上がりかけたエルランをなだめ、ゴップは続けた。
「あくまで個人の妄想、与太話に過ぎんよエルラン君。君が君の立場に忠実なのは評価されるべきところだがね、そうしゃちほこばってばかりいたら、気楽に雑談もできんだろう」
「しかし」
「エルラン君。君はこの戦争の帰趨をどう見ている?」
突然の問いにエルランは固まった。
これがただの雑談でないことは明らかだ。考えられるのは、レビル派の突き崩しだろうか。だとするならわざわざこうして呼びたてるのは悪手に思える。
「連邦軍は、この半年あまりで地上の重要拠点をいくつも失った。ルナ2駐留軍は立て籠もり、ジャブローからの物資で食いつないでいる有り様。一方ジオンはどうだ? 宇宙圏をほぼ掌握した現在、他のコロニーと手を結んで着々と地球切り離しの手段を整えている」
「ですが、レビル将軍は反撃の手段を立案されております」
「V作戦だろう。だが知ってるかね? 先日、オーガスタにてRXシリーズが撃破されたよ」
「聞き及んでおります。ですがあの基地はすでに放棄を決めており、それに反対した強硬派が武装試験に使っていたレプリカ機体を奪って独自に使用したものです」
V作戦の成果であるRGM系はすでにジャブローにて先行型が量産され始めているし、RX機についても、2番機と3番機が唯一連邦領――表立っては中立を表しているが――ともいえるサイド7にて最終調整に入った。
V作戦に連なる計画の一つであるG4計画は順調であり、オーガスタで製造されていた4号機はルナ2への移送が完了している。
なにも悲観になる要素ない。
「そうだな。たしかにMS開発は進んでいる。だがそれを運用できるだけの地力が我らにあるかね?」
「我らの国力は、ジオンの30倍はありますが」
「戦前はな。だが今はそうでもない。あってせいぜい10倍。しかもこの差は加速度的に縮まってきている」
「そこまでなのですか? 私にはとても――」
「事実だよ。先日はサイド2が食料の輸出を制限すると宣言してきた。わかるかね? ジオンの隕石落としで各地の穀倉地帯は打撃を被った。免れた土地も続く天候不順で収穫高は激減している。そこにきてのハッテの離反だ」
世論を抑えるために、今回のサイド2の輸出規制は地球ではまだ公表してはいない、とゴップは言った。
ただでさえ各地の配給物資量に民衆の不満が募っている。そこにきて、ジオンの新造コロニーへの疎開推奨宣言だ。
地球よりも、この環境を招いたジオンの方がマシだと宇宙に渡る人間が増えている。
当初は資源の少ないジオンの国庫を圧迫させることができるとして、連邦も対策を取りはしなかった。
だが、宇宙に上がった家族や親戚が地上よりも安定した生活環境で過ごしていることを知ると、自身も恩恵にあやかろうとする者が後を立たなくなり、連邦領から脱出し、密かに亡命する人間が増えた。
連邦の地力は急速に衰えてきている。
連邦支配地では、配給量の不満に民衆がデモを起こす騒ぎも多発していた。
「エルラン君。このまま戦争が長引けば、連邦は瓦解するよ」