目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
0078.12.27――。
サイド3近海にある、3番ダストコロニー。
老朽化が進み廃棄されたコロニーに、反連邦の武装勢力が潜伏しているという情報がもたらされ、その調査と、これがあれば殲滅するという任務が第178機動部隊に命令された。
だがその実は、連邦に対して独立機運の高いサイド3に対しての示威行為が目的であり、敵対象は海賊などではなく、ジオンの秘密部隊であった。
「こちらベータ1。コロニー外縁に異常なし。アルファチーム応答されたし。繰り返す……」
FF-S3セイバーフィッシュのコックピットで、ハルト・ランガーは苛立っていた。
母艦であるサラミスから発艦した4機の戦闘機は、2機編成の2部隊に分かれて、件のコロニーを偵察していた。
アルファチームはコロニー内を、自分たちベータチームはコロニー外縁部を回る。
だが、内部に突入したアルファチームからの応答がない。
アルファチームを受け持つ上官は優秀な腕を持つパイロットである。その二人と連絡がとれないということに、不穏な感情が湧き上がってきていた。
「サラミス。隊長――アルファとの連絡が取れない。指示を請う」
「こちらでも交信を試みているが繋がらない。少し待て……こちら指揮管制。ブラボーチームはコロニー内に突入し、アルファチームと合流、状況を確認せよ」
正気か? とハルトは思わず罵声を紡ぐところだった。
連絡がつかないということは、内部に強力なジャミングが施されているか、最悪撃墜された可能性がある。だというのにニ機編成で突入だと?
「ブラボー1、復唱はどうした」
「こちらブラボー1。了解」
連邦が建立してから半世紀以上が過ぎ、連邦宇宙軍はまともな戦闘をこなした経験がない。すべてが小規模海賊相手の非対象戦でしかなく、そのため驕りがあった。
「カジマ少尉、聞いたか? 突入だそうだ」
「了解」
相変わらず無口な友人から、簡潔な返事が返ってくる。
ハルトはこれ以上の愚痴は無駄であると理解して、機首をコロニーの艦艇接続搬入口へと向けた。
中に入ると、照明のない無重力の暗黒空間を、家屋や工場を構成していた建材や、コロニー外壁から剥がれ落ちた残骸が漂っていた。
当然ながら廃墟である。
「こちらブラボー1。アルファチーム、応答せよ」
返事はない。
いや、それどころかレーダーが不調だ。
まずいな。
偶発的なものではない、間違いなく人為的な妨害であった。
「カジマ! 一旦サラミスまで下がるぞ!」
セイバーフィッシュの推進剤はすでに半分の目盛りに到達している。
この状況で戦闘を行うのは無理があった。
「カジマ! 聞こえているか――この距離で通信不可能だと!?」
それどころか各機器が異常な動作を見せ始めていることに、ハルトは戦慄した。
「聞こえ……ちら、アルファ1……チーム、聞こえるか?」
通信機から聞こえてきた声は、隊長のものだった。
「隊長!? こちらはブラボー1! 聞こえますか!?」
「逃げろ……敵……うああああああ!」
キャノピー越しに見える前方で光が上がった。
「爆発!?」
やられたのだろう。
ハルトは舌打ちする。
「カジマ! 撤退だ!」
不意打ちを受けた状況でまともに作戦行動など取れない。
だが親友は通信に答えない。それどころか、光があった方へと加速していく。
「カジマ!? 撤退だと言っているだろう!」
「……時間を稼ぐ。お前は……先に……頼む」
ノイズ混じりに友の声が届く。
自らが囮になり、脱出の時間を稼ぐつもりのようだ。
「馬鹿野郎が」
だがそれが現状でとれるもっとも合理的な方法であると、ハルトは理解していた。
機体を翻すと、出口へと向かって飛ぶ。
「管制聞こえるか!? コロニー内で敵と遭遇! 敵と遭遇! くそ! これほどまで強力なジャミングか!」
「逃げろランガー……ひとつ目の巨人」
ノイズとともに届いた言葉が、親友の最後の言葉だった。
ハッピーバースデーがトラウマです。