目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第72話 Side『灼熱の抗戦』

 

 0078.12.27――。

 

 サイド3近海にある、3番ダストコロニー。

 

 老朽化が進み廃棄されたコロニーに、反連邦の武装勢力が潜伏しているという情報がもたらされ、その調査と、これがあれば殲滅するという任務が第178機動部隊に命令された。

 

 だがその実は、連邦に対して独立機運の高いサイド3に対しての示威行為が目的であり、敵対象は海賊などではなく、ジオンの秘密部隊であった。

 

「こちらベータ1。コロニー外縁に異常なし。アルファチーム応答されたし。繰り返す……」

 

 FF-S3セイバーフィッシュのコックピットで、ハルト・ランガーは苛立っていた。

 

 母艦であるサラミスから発艦した4機の戦闘機は、2機編成の2部隊に分かれて、件のコロニーを偵察していた。

 

 アルファチームはコロニー内を、自分たちベータチームはコロニー外縁部を回る。

 

 だが、内部に突入したアルファチームからの応答がない。

 

 アルファチームを受け持つ上官は優秀な腕を持つパイロットである。その二人と連絡がとれないということに、不穏な感情が湧き上がってきていた。

 

「サラミス。隊長――アルファとの連絡が取れない。指示を請う」

 

「こちらでも交信を試みているが繋がらない。少し待て……こちら指揮管制。ブラボーチームはコロニー内に突入し、アルファチームと合流、状況を確認せよ」

 

 正気か? とハルトは思わず罵声を紡ぐところだった。

 

 連絡がつかないということは、内部に強力なジャミングが施されているか、最悪撃墜された可能性がある。だというのにニ機編成で突入だと?

 

「ブラボー1、復唱はどうした」

 

「こちらブラボー1。了解」

 

 連邦が建立してから半世紀以上が過ぎ、連邦宇宙軍はまともな戦闘をこなした経験がない。すべてが小規模海賊相手の非対象戦でしかなく、そのため驕りがあった。

 

「カジマ少尉、聞いたか? 突入だそうだ」

 

「了解」

 

 相変わらず無口な友人から、簡潔な返事が返ってくる。

 

 ハルトはこれ以上の愚痴は無駄であると理解して、機首をコロニーの艦艇接続搬入口へと向けた。

 

 中に入ると、照明のない無重力の暗黒空間を、家屋や工場を構成していた建材や、コロニー外壁から剥がれ落ちた残骸が漂っていた。

 

 当然ながら廃墟である。

 

「こちらブラボー1。アルファチーム、応答せよ」

 

 返事はない。

 

 いや、それどころかレーダーが不調だ。

 

 まずいな。

 

 偶発的なものではない、間違いなく人為的な妨害であった。

 

「カジマ! 一旦サラミスまで下がるぞ!」

 

 セイバーフィッシュの推進剤はすでに半分の目盛りに到達している。

 

 この状況で戦闘を行うのは無理があった。

 

「カジマ! 聞こえているか――この距離で通信不可能だと!?」

 

 それどころか各機器が異常な動作を見せ始めていることに、ハルトは戦慄した。

 

「聞こえ……ちら、アルファ1……チーム、聞こえるか?」

 

 通信機から聞こえてきた声は、隊長のものだった。

 

「隊長!? こちらはブラボー1! 聞こえますか!?」

 

「逃げろ……敵……うああああああ!」

 

 キャノピー越しに見える前方で光が上がった。

 

「爆発!?」

 

 やられたのだろう。

 

 ハルトは舌打ちする。

 

「カジマ! 撤退だ!」

 

 不意打ちを受けた状況でまともに作戦行動など取れない。

 

 だが親友は通信に答えない。それどころか、光があった方へと加速していく。

 

 

「カジマ!? 撤退だと言っているだろう!」

 

「……時間を稼ぐ。お前は……先に……頼む」

 

 ノイズ混じりに友の声が届く。

 

 自らが囮になり、脱出の時間を稼ぐつもりのようだ。

 

「馬鹿野郎が」

 

 だがそれが現状でとれるもっとも合理的な方法であると、ハルトは理解していた。

 

 機体を翻すと、出口へと向かって飛ぶ。

 

「管制聞こえるか!? コロニー内で敵と遭遇! 敵と遭遇! くそ! これほどまで強力なジャミングか!」

 

「逃げろランガー……ひとつ目の巨人」

 

 ノイズとともに届いた言葉が、親友の最後の言葉だった。

 

 





 ハッピーバースデーがトラウマです。
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