目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第8話 Side『オルド・フィンゴ』

 

 やべー。

 

 何がやべえって、大尉ですよ。

 

 公式にはピースクラフト家の人間は全員死んでいる。で、原作と同じように彼がゼクス・マーキスを名乗っているのなら、彼は家族を殺した連中への復讐を企んでいるってわけだ。

 

 このジオン軍に復讐者として爪を研いでいる規格外の名パイロットが二人もいることになる。

 

 もうひとりはシャア・アズナブルね。彼はザビ家に復讐しようとしてるし。

 

 あれ? でもゼクスは誰に復讐したいんだろう。

 

 事件の首謀者と実行犯は捕まり粛清されている。すでに対象はいないんじゃないか? それとも公にされていないだけでまだ黒幕が生きてるのか。

 

 その点はわからないが、ともかく面倒なのに関わってしまったのは間違いない。

 

 なんで僕はわざわざ牽引を申し出てしまったのかねぇ。

 

 現場責任者が10数分といえど持ち場にいなかったとバレたら降格懲戒待ったなしだろう。

 

 シゲさんがそこんとこうまく誤魔化してくれてるけども、ザクの持ち出しに関しては大尉が強引にゴネたせいと報告させてもらおう。軍では階級が絶対だからね。うんうん。

 

 そう考えながら、オートパイロットモードで帰還しつつ何気なしにゾッドの戦闘ログを確認したら、こりゃすげぇや。

 

 航宙機を11機撃墜し、さらにサラミスを1艦撃墜してやがる。

 

 ゾッドは対艦用レーザー誘導ミサイルを装備できるが、MSと比べてそこまで大型の兵装を積み込むことができない。ゾッド用の対艦ミサイルも、ザクが使っているバズーカの砲弾を改良したもので、積載数から有用性に疑問があったのだが……というかそもそもドンパチ激しい中、戦艦に肉薄したのか? ホントおっそろしいな!

 

 突然、コンソールがロックオンアラートをがなり立てた。

 

 一体どこから!? と慌てふためくと、コックピットの脇を数条の閃光が掠めていく。

 

 弾丸だ。

 

 リアカメラに、白く、機影らしきものが映っていた。おそらく連邦のセイバーフィッシュ。

 

 ってまじかよ!?

 

 ここ前線から外れた後方だぞ。こんなとこまで連邦に攻め込まれたのか? それとも、向こうが迷子になったのか。

 

 こちらが混乱している間もロックオンアラートは鳴り続ける。どうにか引き離そうと加速したが、向こうは意地でも食らいついてくるつもりのようだ。

 

 くそ! 思ったほどエンジンの調子が出ない。カタログスペック的にはセイバーフィッシュよりも断然こちらの方が加速スピードがあるはずなんだが。

 

 母艦に逃げ込むことも考えたが、そうなると無断出撃が完全にバレることになるだろう。いや、もうバレてるかもだけど、僕はシゲさんの手腕を信じたい。

 

「逃げ切れないなら、やるしかないか?」

 

 確認するように独り言ち、操縦桿に力を入れる。

 

 ゾッドは、MS-05ザクⅠのフレーム用として開発した左右上下に伸縮稼働するモビリティバインダーによって、MSほどではないものの戦闘機としては驚異的な運動性を誇る。そしてその際AMBACにより宙空間での推進剤の消費を大きく抑えることにも成功していた。

 

 機首を上げて上昇。宙返りを披露してやる。

 

 全身に予想していなかったGがかかり、視界がレッドアウトしかけた。

 

「っぐ――っはぁ!」

 

 なんとか呼気を潰れかけた肺から吐き出すと、目の前にセイバーフィッシュが見えた。

 

 驚異的な運動性で頭上をとったこちらに驚くパイロットの姿が……まあ、この距離で見えるはずもないんだけど。

 

 容赦はできない。イチかバチかの苦し紛れだがトリガーを引く。

 

 機種の下部に装備された30mm機関砲2門がなけなしの弾丸を放ち、運良く数発が相手の主翼に命中した。当たりどころが悪かったのか、すれ違いざまにみたセイバーフィッシュは、錐揉みしながら虚空へと飛び去っていく。

 

 機体は無事でも、あれではパイロットは助からないよな。

 

 どっと全身にこみ上げてくる汗の不快感。思い切り背もたれに体を預け、長く息を吐いた。今更にやってくる恐怖感に、全身が発熱している。

 

「生き延びたかぁ。もうこないでくれよぉ」

 

 今ので推進剤を大量に使ってしまったし、残弾も全て0になった。これ以上の戦闘はごめんだ。

 

 急ぎ母艦への帰投コースをとる。レーダーが使えないので、目視による測量だ。

 

 2度とゾッドには乗らん。座席のリクライニングも悪いしな。

 

 そう固く決意して帰る。

 

 これで全ては元通り。いつもの整備兵に戻れる。そう考えていた僕の甘い考えは、この後に手ひどく裏切られてしまう。

 

 後から思えば、これこそが、ゼクス・マーキスという人と出会ってしまったことが、僕の軍生活を決める大きなターニングポイントだったのである。

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