目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第74話 Side『灼熱の抗戦』

 

「ようハルト、そっちも終わったか」

 

 機体を降りたところで振り向くと、顔にいつものニヤついた笑みを貼り付けた男――フィリップ・ヒューズ少尉が寄ってきた。

 

「相変わらず、眉間にしわ寄せてんじゃないの。そんなんじゃ、女の子にはモテないぜ」

 

 陽気にして饒舌。それがこの男の持ち味だった。

 

 これでも第07独立機械化混成部隊に選ばれるほどの腕前を持つパイロットだ。

 

「ランガー少尉お疲れ様です」

 

 後に続いて挨拶してきたのは、同じくチームメイトのサマナ・フュリス准尉だ。

 

 この3人と通信士を加えて、1番MS小隊「ブルーチーム」が組まれる。ハルトはチームの隊長に抜擢されていた。

 

「ああ。異常はなかったかサマナ?」

 

「はい、いつも通りですね。とはいえ、毎回単なる起動試験だけだと飽きがきてしまいます。こんなこと言ったら不謹慎ですが、早く出撃して実戦のデータを取りたいですよ」

 

「おんやー? そんなこといってサマナちゃん。昨日は『初の実戦で震えてくる』って言ってたじゃないの」

 

 フィリップが底意地の悪い笑みを浮かべてからかうと、サマナは顔を真っ赤にした。

 

「あれは武者震いがするって意味で言ったんですよ! 東洋ではそう表現するんです!」

 

「聞いたことねぇなぁ。隣に立ってて、俺ぁ地震でもきたのかと思ったがね」

 

「そんなに震えてません!」

 

 毎度の掛け合いをする同僚たちに、ハルトは思わず苦笑を漏らした。これでも彼らの仲は良好だ。フィリップにしても、からかいこそするが、相手のプライドを貶すようなことはしない。なにより後輩への面倒見がよく、サマナもそれはよくわかっている。

 

 だが、北米からこの中東に渡ってきて1週間が過ぎる。

 

 ジオンの大規模作戦に即応するために、以前行っていたような実弾試験などを行うことはできず、毎日のように午前中は起動試験、午後は待機となっていた。

 

 これでは気持ちがダレるのも仕方がない。

 

「気楽なものだなぁ、モルモットの連中は」

 

 聞こえよがしに響く声。

 

 見れば、数名の男たちがニヤニヤとこちらを見ていた。

 

「なんだとぉ?」

 

「よせ、フィリップ」

 

 先頭の男の階級章が大尉であることを確認し、詰め寄ろうとしたフィリップを止めた。

 

 ハルトは男に向かって敬礼する。大尉は返礼もせず、こちらを馬鹿にするように鼻を鳴らした。

 

「レビル将軍はもっと責任ってものを感じて貰わねぇとな。お前ら宇宙軍がヘマしやがったせいで地球には隕石が落ちるし、エイリアンどもに地上を占拠されてるんだからよ」

 

 そう言って大尉は、ハンガーに並ぶザクを見上げた。

 

「何が新兵器だ。ただ敵の玩具を拾ってきただけのくせに。人形遊びがしたけりゃ、穴蔵に篭ってな」

 

 徴発するように大尉はハルトの前までやってきたが、それでも敬礼を崩さずにいると「チッ」と舌打ちをして取り巻きたちとともに去っていった。

 

「陸軍、ですね」

 

「おー嫌だね。ガラが悪いったらない」

 

「言い分はわからんでもない。ジオンの降下作戦を宇宙軍(我々)は止めることすらできなかったんだからな」

 

 加えて、先の戦闘で損耗した艦艇を補填するためのビンソン計画により、地球方面軍は少なくない予算を奪われている。そうしたやっかみもあるのだろう。

 

 陸軍高官はMS不要論を唱えており、反レビル派の急先鋒がトップを勤めている。

 

 地上から大半の反連邦勢力を駆逐した結果、地上軍を宇宙軍に併合しようという論を過去にレビル将軍が発表していたため、その頃からの軋轢があった。

 

「あいつら、いち早く新型が完成してるからな。気も大きくなってるんだろ」

 

 RX-75ガンタンク。

 

 陸軍の『次世代主力戦車(MBT)開発計画』により進められていたRTX-44をG4計画に統廃合し、対MS用として再設計したものだ。

 

 武装も豊富であり、背部の220mmキャノン、両腕部のボッブ・ミサイルランチャー、対艦用ミサイルなど強力なものが揃えられ、ザクだけでなく、装甲の厚いドムすら葬れる。

 

 装甲はルナチタニウム合金を採用し、正面装甲はドムのバズーカどころか、陸上船艇の艦砲射撃にすら耐えると謳っていた。

 

 だがハルトは、この機体ではMSに勝てないと思っていた。

 

 重武装な分、機動性と運動性能に大きく劣る。防御に秀でていても、脆い側面や背面を容易に取られてしまっては話にならないだろう。

 

 連邦軍共通の、大艦巨砲主義がよく表された機体である。

 

「でも、もうすぐ僕らもこの借り物(・・・)ともおさらばですよ」

 

「そりゃどういうことだ?」

 

 フィリップの質問にサマナは答える。

 

「宇宙軍が開発したMSが、先行して実戦配備されるって話です。第01独立機械化混成部隊から順に、だそうですよ」

 

「おい、そりゃあまさかザニーじゃ……」

 

「いや、完全に新規です」

 

「遂にできたのか」

 

 戦うための、大切なものを守るための力。それがようやく手に入る。そう思うと、気が昂ぶってくるのがわかった。

 

「ハルト・ランガー少尉こちらでしたか」

 

 そう言って駆け寄ってくるのは、同隊のモーリン・キタムラ伍長であった。

 

 彼女はチーム専属の通信士であり、同隊の紅一点でもある。

 

「ブルー小隊リーダーは、1300時よりブリーフィングルームに集合願います」

 

「ジオンに動きがあったのか?」

 

「はい。進軍を開始したそうです」

 

 ついに始まった。

 

「了解した」

 

 ハルトは頷くと、もう一度MSを見上げた。

 

 この借り物で、一体どこまでできるのか。

 





 ポケモン新作の最終PVがとてもエモーショナルで楽しいです。
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