目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第76話 Side『灼熱の抗戦』

 

 砂の中。

 

 じっと息を潜めてその時を待つ。

 

 砂丘地帯に展開した第07独立機械化混成部隊だったが、思わぬ苦戦を強いられていた。

 

 それは暑さだ。

 

 熱源探知を避けるために、機体の駆動は最小限でしかない。結果、空調が効かず、コックピット内は自身の体が発する熱が籠もり、蒸し暑かった。

 

 こめかみを流れた汗が顎に伝って流れ落ちる。

 

 そろそろ限界が近い。戦闘時起動を行わなければ空調が効かないなど、ジオンは本気で地球を攻略する気があるのか、と疑いたくなる。

 

 無事に戻ったら、レポートにはこの欠点を書き込んでおこう。

 

 ハルトは強く誓った。

 

 砂に隠れていても、戦場の音は響いてくる。

 

 隠れたまま流れ弾が当たるのではないか、と密閉された空間の中で迫りくる恐怖や不安とも戦わねばならなかった。

 

 必要なその時まで、仲間とも連絡が取れない。

 

 戦況はわからなかった。

 

 開戦時、エルサレムから発進した航空隊がジオンのMS隊に向けて爆撃を行う予定であった。

 

 しかし、当初こそ配備されていないと思われていた航空機ゾッドが迎撃に当たり、連邦空軍で唯一MSに痛打を与えることのできる爆撃機デプロッグが、すべて撃墜されてしまった。

 

 だが数は力である。

 

 一緒に発進していたトリアーエズの編隊の猛然とした戦いにより、ジオンの航空部隊は早々に撤退した。

 

 防空網を死守することに成功したが、爆撃を無視して、MSドムが防衛陣地をことごとく突破。

 

 そして後続の部隊が食い荒らされた戦場を一掃する。

 

 上層部が想定した通りの動きであった。

 

 ジオンはMSの攻撃力によほど自信があるのだろう。支援、補給線が伸びるのを意に介さずに進んでいく。

 

 ジオン兵は士気が高く精強だと謳っているが、実際は一度も大規模実戦を経験したことのない部隊の集まりでしかない。

 

 ジオンに兵なし。

 

 その言葉通り、彼らに連携という概念はなく、MSの性能と個人の技量頼みの戦法だった。

 

 そこに付け入る隙がある。

 

 ハルトはこの戦争で連邦が勝つと信じていた。

 

 彼らは軍人ではなく、武装したテロリスト集団でしかない。

 

 地球という人類共通の資源でもある大地に隕石を落とし、大量虐殺を行った相手に、我々はけっして負けてはならないのだ。

 

 我々が負けるということは、人類全体が暴力に屈したということだ。

 

 いかに暴走する力を抑え、その生存圏を拡大していくか。旧世紀以前から人が延々と思い悩み、築き上げてきた歴史を、真っ向から否定することだ。

 

 そんなことを考えながら、ハルトは同時に矛盾している、と自嘲もした。

 

 大義があるかのように自分は考えているが、実際はそんなことはない。ただ、家族と友を奪った連中に直接仕返しをしてやりたいだけなのだ。

 

 そのために、より強力な暴力を求めているではないか。

 

 じりじりとした時間は、気持ちを消耗させる。

 

 ひたすらに外部からの作戦開始合図を待つのみ。

 

 これ以上の思考は毒にしかならない、とハルトは目を閉じ、気を休めることにした。人の脳は、視覚情報によりエネルギーを使うという。

 

 作戦開始までに、少しでも体力を温存するべきだった。

 

 いくばくかの時を待ち、電子音がコックピット内に響き渡る。

 

 作戦開始を告げる音だ。

 

「出るぞ」

 

 誰に告げるでもなく呟き、機体を立ち上げる。

 

 灼熱の戦場へ向けて。

 

 

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