目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

85 / 260
第78話 Side『灼熱の抗戦』

 

 マゼラアタックだ。

 

 ――油断だな。

 

 これでは素人を笑えないと、己を戒める。

 

 幸い命中したのは主砲ではなく、歩兵支援用の機関砲のようだ。それではザクの装甲板は抜けない。

 

 それでも立ち止まっていれば次は主砲が来るだろう。

 

 ハルトは素早く標的を切り替える。

 

 こちらに向かってくるマゼラアタックにランダム機動で近づく。マゼラアタックはトップ部が飛行するために、主砲が旋回できない。射線を切るのは容易だ。

 

 砲手席のキャノピー越しに相手の顔が見えた。

 

 ヒートホークを叩きつける。

 

 プラズマ熱により砲弾に引火したのか、トップ部が爆発した。

 

 砲手は即死だろう。

 

 振り返ると、先程のMSが起き上がっていた。

 

 その姿に、怒りのような影が見える気がした。

 

 先程のマゼラに戦友でも乗っていたのか。

 

 ――奇遇だな、俺も戦友をお前たちに殺されたよ。

 

 自分たちの番だけ飛ばそうなどと、虫が良すぎる。

 

 とどめを刺してやろうとマシンガンを構えた。

 

「隊長! 味方の輸送機(ミデア)です!」

 

 伍長の通信に上空を見上げる。確かにミデアの編隊が飛行していた。

 

 ミデアはコンテナを開き、そこからパラシュートを背負った兵器が降下する。

 

 陸軍のガンタンクだ。

 

「ブルー1より、ブルーチーム全機に告ぐ。作戦目標を達成、これより撤退する」

 

「え? 撤退ですか?」

 

「そうだ。復唱しろ。撤退だ」

 

 感情を込めずに告げると、無線の向こうで全員が息を呑む雰囲気が伝わってくる。

 

 戦況はこちらが押している。ここで撤退する理由もないのだ。

 

「オーケー隊長はお前さんだ。ブルー2撤退了解」

 

 フィリップが真っ先にそう告げた。

 

「ブ、ブルー3了解!」

 

「ブルーオアシス了解しました」

 

「ハルト、後で説明はしろよ」

 

 納得はしていない。言外にそういった意図を滲ませてフィリップが言う。

 

「わかった」

 

 ハルトは上官に、『陸軍の新兵器が降下するまで、撹乱せよ』と命令を受けていた。また、機密を守るために作戦終了まで他言も禁止された。

 

 ――今回は陸軍に譲れ、ということだな。

 

 連邦軍も一枚岩ではない。人が運営する組織なのだから当たり前だ。庭先まで攻め込まれておきながら派閥争いなどくだらないとハルトは思うが、理想論だけで組織の風通しは良くはならない。

 

 結局、そうした物事の緩衝のために政治は必要なのだ。

 

 件のMSに牽制射撃を行いながら後退する。

 

 できれば撃墜してやりたかったが、残弾数も半分を切っているし、なによりこれから陸軍の砲撃が矢衾(やぶすま)に始まるのだ。間違っても巻き込まれるわけにはいかない。

 

 ましてやこちらは鹵獲したザクを使っている。識別のために連邦章を大きく各所に貼り付けてあるが、ミノフスキー粒子下での乱戦では視認が難しい。背後から撃たれる可能性は高かった。

 

 敵MSはこちらの追撃を断念したようだ。

 

 戦況の変化を敏感に感じ取ったのだろう。まだ荒削りだが、パイロットとして次はもっと手強くなるのかもしれない。

 

 もしもここを生き残ることができたのなら、だが。

 

 妙な因縁ができた、とハルトは感じた。

 





 明日はポケモンSV!

 しばらく更新止まります。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告