目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

90 / 260

 二話投稿します。


第83話 Side『灼熱の抗戦』

 

 飛んできた拳を、ハルトは敢えて避けなかった。

 

 キンバライドへ向かう途中での待ち伏せを受け、後方陣地に撤退し、そこからマプトへと帰還したハルトは、デブリーフィングにてマオに右頬を殴られたのだった。

 

「貴様! 作戦を失敗しておきながらよく戻ってこれたな!」

 

「お言葉ですが、今回の失敗は報告にある通り、ジオンの待ち伏せにあったことと、機体トラブルがあったことが要因であります」

 

「言い訳をするな! 貴様らの任務はキンバライドの攻略だった! 現地に行きもせずに撤退など敵前逃亡と同じだ! 我ら機械化混成部隊の目的は、MSを使って戦うことだろう。その任務を全うせずして何がパイロットか! しかも貴重なビームライフルを戦場に放棄してくるなど!」

 

 この男は何を言っているのだ。

 

 独立機械化混成部隊は、MSの運用データを実戦で集めることが主目的だ。そのため、なにより生き残り、収集したデータを残すことが大事だ。

 

 未だ貴重なMSを、既存の兵器のように単純に消耗させていいわけがない。

 

 ビームライフルはフィリップが落としたものだ。過負荷により機体右腕部のパワーユニットを損傷させてしまったため、戦場に放棄された。

 

 同時に、ジオンの追撃を避けるためでもあった。

 

 連中としては、ゾッドとMTを一撃で破壊した新兵器の情報は是が非でも欲しいところだろう。

 

 ビームライフルを確保すれば、追手が緩まるのではないか、とあのときは打算もあった。

 

「キサマらが撤退した結果、孤立したレッドチームは全滅したのだ!」

 

「レッドチームも待ち伏せを受け、交戦の結果壊滅したと聞いております」

 

 後に救助された生き残りのパイロットの証言により、投下ポイントに移送中のミデアが狙われ、レッドチームは急遽現地に降下、ミデアは墜落したことが判明している。

 

 ドム3体と新型のMT2輌によって敗北を喫した。

 

「口答えをするな!」

 

 さらに激昂したマオが拳を振り上げる。だがその拳が振るわれることはなかった。

 

 素早く動いたフィリップ少尉が、中尉を押し飛ばしたのだ。

 

「な、き、キサマ! 上官にむかって何を――」

 

「いやぁ、いくら上司でも許容できることとできねぇことがあるからな。やるってならとことんやってやるぜ?」

 

 尻もちをつき、明らかに怯えた様子を見せるマオにフィリップは獰猛な視線を向ける。

 

「ちょ、ちょ、懲罰ものだぞキサマ!」

 

「はん! 懲罰怖くてパイロットがやってられるかってんだ! こっちは毎回命はってんだぞ!」

 

「止せフィリップ」

 

「あー? この現場も知らねぇバカに兵士の流儀ってのを教えてやる」

 

 未だに腰が抜けているのか、座り込んだままのマオの襟首をフィリップは掴んで無理やり立たせる。

 

「ひ、ひぃぃ」

 

 マオの顔色は先程と打って変わって真っ青だ。

 

「だめですよ少尉! これ以上は本当によくありません!」

 

 サマナが殴ろうとするフィリップの腕につかまって抑えようとする。

 

「フィリップ! 止せと言っている!」

 

「止めんな! こういう奴は一発殴らねぇとしゃーねぇんだよ!」

 

「なんの騒ぎかね?」

 

 騒然とするブリーフィングルームに、低く落ち着いた声が響いた。

 

 声の主の姿に、ハルトは敬礼する。

 

 部隊の隊長であるホフマン大尉であった。

 

 彼の後には、2名の兵士が付き従っている。兵士の肩には憲兵を示す腕章があった。

 

「大尉! 助かりました! 彼らが暴れて私を脅して――」

 

「そうか。ふむ」

 

 ホフマン大尉が憲兵たちに頷くと、彼らは即座に動いた。

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告