目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第84話 Epilogue『灼熱の抗戦』

 

 憲兵たちはマオを掴んでいるフィリップを強引に引き剥がす。フィリップもさすがに憲兵には逆らわない。

 

 一方、マオは立場が逆転したことに勝ち誇った顔だった。

 

 しかし、それもすぐに変わる。

 

 次いで憲兵たちはマオの両腕を左右からつかんで拘束した。

 

「な!? どういうこと――ぐあっ!! た、大尉!?」

 

 振り払おうともがいたところで、憲兵によって腕を後ろにひねり上げられ、デスクの上に上半身を押さえつけられる。

 

「大尉! どういうことですか!?」

 

「マオ中尉。君には今回のキンバライド攻略作戦の情報を敵軍に漏らしたスパイの容疑がかかっている」

 

「な、何を馬鹿な! 私はスパイなどしておりません!」

 

「君の個人端末から、不可解な通信履歴が発見されている。主に我が軍の動きと、今回の作戦での我が部隊の輸送チェックポイントについてだ」

 

「私ではない!」

 

 必死の形相を浮かべマオは憲兵を払おうとするが、さらに強くのしかかられ、カエルが潰れたような声を吐く。

 

「どちらにせよ君の嫌疑は査問委員会で明らかになるだろう。連れて行きたまえ」

 

 憲兵たちは、口角から泡を飛ばしながら叫ぶマオを引き摺るように連れ出していった。

 

「さてブルーチームの諸君。今回はご苦労だった。君たちの的確な戦術判断によって、貴重なMSを失わずに済んだ」

 

 ハルトは敬礼のみを返した。

 

 到来するのは喜びや安堵ではなく、重たい圧力だ。

 

 ホフマンの目は笑っていない。

 

「今後も一層の活躍を期待する。励んでくれ」

 

 それだけを告げ、彼は部屋を出ていった。

 

「何が『一層の活躍を期待する』だ。他人事みたいに言ってくれるじゃないの」

 

 敬礼を解き、フィリップが唾棄するように言う。

 

「スパイだってよ。本当に、あの陰険トカゲ野郎がそうだと思うか?」

 

 ホフマン・ボーウッド。

 

 階級は大尉だが、レビル派高官の親類であり、役職以上の権力を持つ人物だ。

 

 部隊内において、彼が黒と言えば白も黒となると、暗黙のルールが蔓延していた。

 

 そんな彼に媚びるようについていたマオ中尉が、何を思って裏切ったのか。

 

「レッドチームのMS、敵に残骸含めてすべて回収されたそうですよ」

 

 サマナも疑問を持っている。

 

 レッドチームは新型のMT2輌と遭遇したという。

 

 かのMTは作業用の大型アームが装備されている。それを使えば撃破したMSを運び、後方の陸船艇なりトラクターなりまで運ぶことは可能だ。

 

 ジオンにとっては、連邦が初めて開発した本格的なMSの情報は是が非でも欲しいことだろう。

 

 啓開や偵察もされていない場所への進軍命令。

 

 降下ポイントでされた待ち伏せ。

 

 この部隊の中でそうした手筈を整えられるのは――。 

 

「憶測ですが、その、情報を流したというのは――」

 

「議論は必要ないだろう准尉」

 

 サマナの言葉をハルトは断ち切る。

 

 この場でするにはあまりに危険な内容だった。

 

ホフマン大尉も(・・・・・・・)言っていたろう。俺たちはパイロットだ。モルモット隊の言葉通りに、戦果を上げることだけを考えてればいい」

 

「しかし」

 

「この話は終わりだ。スパイについては査問会が明らかにする。俺たちの領分ではない」

 

「そうだな。しょせん、俺たちゃ実験動物(モルモット)だ」

 

 フィリップが皮肉をぶつけてくる。この場にいる全員が、なにか飲み込めないものを胸につかえさせたようであった。

 

「仕方ない。おうハルト、医務室よって顔、治療しとけよ。顔見たら、モーリンちゃんが泣いちゃうぜ」

 

 それで解散となった。

 

 自室へとついたハルトは考える。

 

 ホフマン大尉は、レビル派に所属している人間だ。レビル派は徹底抗戦を唱える一大派閥である。

 

 その派閥に連なる高官と繋がっているとされる人間が、なぜ裏切るのか。

 

 ――まさか、その高官が?

 

 レビル派といえど、一枚岩ではないだろう。現段階において連邦は劣勢を強いられており、ギリギリの戦いを繰り返している。

 

 そんな中、敵に寝返ろうとする者が生まれるのは当然かもしれない。

 

「政治か……」

 

 後味の悪い考えを吐き捨てるように呟き、ベッドに横たわった。

 

 兵士は戦うことが本分だ。

 

 それ以外のことは考えるべきではない。

 

 自分に言い聞かせるようにして、ハルトは目を閉じた。

 

 まぶたを閉じるとやってくる暗闇。

 

 廃コロニーで友を失ったあの時が蘇る。

 

 そして、無力感を噛み締めながら見つめるしかなかった、故郷への隕石落下。

 

 あの日から続く悪夢。

 

 それを払拭するため、自分は力を求める。

 

 この地上から、宇宙人(ジオン)を消し去るその日まで。

 

 





 目にゴミがずっと浮いてるので眼科いったら、『緑内障』と診断されました。

 生涯通院確定。

(´・ω・`)

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