目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第86話 Side『ニューヤーク燃ゆ』

 

 キリー・ギャレット少佐と、ゼクス少佐、ノイン大尉は士官学校の同期なのだそうだ。

 

 イケメン真ん中に美人が左右に立つとか、すっごい華やかな絵面だね。

 

「ゼクス少佐!? じゃあこの方がニューヤークのエース『白光(ホワイトライトニング)』!」

 

 アルマと呼ばれた少女が大声を上げた。

 

「オーガスタ基地を単騎で攻略したというあの!?」

 

「いや、仲間と共にだ。キリー、彼女たちは?」

 

 慌てて少女たちが敬礼を取る。

 

「失礼しました! ノイジー・フェアリー隊所属、アルマ・シュティルナー少尉であります!」

 

「同じく、ミア・ブリンクマン技術少尉です!」

 

「ヘレナ・ヘーゲル曹長であります!」

 

「それと、そこにいるのがホシオカから出向している技術少尉、ケイ・ニムロッドよ」

 

 キリー少佐に紹介され、ケイはキャップを外して挨拶した。

 

 ホシオカってのは、ジオ・マッドの下請け工場で、ザクを造ったところだ。

 

 基本的な設計はジオ・マッドが行ったが、実際に組み上げて使えるレベルにしたのはホシオカだ。

 

「ノイジー・フェアリー……『女三人寄れば姦しいって』やつですかね?」

 

「あら、詳しいじゃない。そう、東洋の言葉ね」

 

「『女3人と、ガチョウがいれば市ができる』なんて西洋の言葉もあります」

 

 キリー少佐は面白そうに僕を見た。

 

「若いのに地球の故事に詳しいのね」

 

 うーん。ゼクス少佐と同年齢なら僕のほうが年上だけどね。

 

「ノイジー・フェアリー、確かキャルフォルニアベース防衛のための秘匿部隊と聞いていたが?」

 

「ええ。でもそれもおしまいよ」

 

 キリー少佐曰く。

 

 北米において、難所でもあったオーガスタとニューバーン基地を攻略した結果、北米大陸は完全にジオンの勢力下となった。

 

 さらに他サイドからの外人部隊の練兵も終わり、部隊として形となってきたことで人員に余裕ができたため、編成の見直しが行われることとなったのだが、ノイジー・フェアリー隊はMS小隊のパイロットのみならず、整備員も含めて年若い女性で構成されている。

 

 その存在が特異だったため、安易に解散することもできないため、かわりに地上における新兵器の実働試験部隊として運用することが決まったそうだ。

 

「で、グラナダで造られたS2(新型)を陸戦用に調整したのがこいつらってわけさ」

 

 そう言ってケイはアルマという赤毛の少女の肩を引き寄せる。

 

「こいつらこんなナリですっげぇんだぜ? 実戦経験も豊富だしな。運用データはばっちりとってある」

 

 へー。見かけによらないものだ。

 

「そして機体の護送と、今回ニューヤークで部隊編成について会議があるから、私も同道したの。噂のガルマモデルを確認したかったしね」

 

『ガルマモデル』とは、ニューヤークを中心としてガルマ大佐が行っている統治方法だ。

 

 連邦本部とは目と鼻の先にある北米において、目立ったゲリラ活動もなく、穏やかに統治がされていることからそう呼ばれるようになった。

 

 今ではニューヤークは、ジオン領一、平和な都市として名を馳せている。

 

「オルド、今から新型のデータ送るから端末起動してくれ」

 

 端末を開き、ケイから送られた新型の情報を開く。その構造を見て驚いた。

 

「インフレーム?」

 

「そう! だいぶ前にアンタ、MSの中に骨格としてのフレームを導入するってアイディア出してたろ? それを実現したのさ」

 

 あ、ムーバブルフレームね。

 

 制作はだいぶ難航したようだけど、連邦のMSを鹵獲したことで一気に開発が進んだようだ。連邦のMSはセミモノコックだからね。

 

 って、これ外装こそザクだけど、中身は完全に別物だ。

 

「S2はそのインフレームの実証実験機だったんだけど、思いの外完成度が高くてね。こいつのデータを元にして、エースパイロット用の白兵戦用MSが開発されることがきまったんだ」

 

 機体の詳細を見ていく。

 

 内部にフレームを導入したことで、装甲がフローティング化され、さらに厚くすることが可能となった。整備性も向上。

 

 各所の可動域が増えていることで、操作追随性も上がっている。

 

 MSの可動域の向上は重要だ。特に白兵戦を好むパイロットには。

 

 MSは入力された行動に対して、常に自動で最適化された動作を行う。

 

 可動域が広がるということは、それだけ機体側でパイロットをフォローできることが増えるわけだ。

 

 射撃からの格闘戦の移行や、クロスレンジでの細かい所作が変わるだけでもだいぶ違う。

 

 脚部はドムと同じホバークラフトを採用。増加スラスターによって、ドムの欠点であった瞬間加速力の低さを補っている。

 

 武装を見ると、なかなか面白い。

 

 背面バックパックに、二本のサブアームが取り付けられており、ドムと共有のバズーカと、格闘用ヒートクレイモアなるものが懸架されている。

 

 このヒートクレイモア、ケイによると連邦のビームサーベルに対抗するために実験的に開発急造したものだそうだ。

 

 より高出力を出そうと試みた結果、自機の身長並みに大型化してしまったとのこと。

 

 確かにドムとザクのヒート系武装では、連邦のビームサーベルと切り結ぶには不利だけど。だからってこんなデカブツ、慣性で機体が振り回されちゃうんじゃないかね。

 

 ん? というかこのエネルギーパイプとジェネレーターの出力見ると、ビーム兵器使えるんじゃね?

 

「使えるはずだが、肝心の武器の方ができてないんだよ」

 

 あれま。

  

「でもでも! このコ、すっごいんですよ!」

 

 ミアと呼ばれたメガネちゃんが会話に入ってくる。

 

 む。MSをこのコ、と称すタイプか。

 

 しかし幼く見える割に胸部装甲が発育してるなあ。全体的に丸いし、将来太るタイプかもしれん――。

 

 殺気を感じて上体を反らしたら、鼻先を拳が突き抜けていった。

 

「チッ! 避けてんじゃねぇよ」

 

 目を釣り上がらせたキリシマ嬢がこちらを睨んでくる。この人最近ますます暴力的なんだよなぁ。

 

「このコ外装ザクなのに、機動性はドム以上! 航続距離はさすがに及びませんが、三次元機動はこちらに軍配が上がります! 各部のトルクもドムを超えてるので、大型の武装も難なく使いこなせるはずです」

 

 こちらのやり取りは気にならないのか、メガネを光らせてミア技術少尉は早口で捲し立ててくる。

 

「ミアの言う通り、すっごいよく動くんです! 思った通りに動いてくれるから、本当にすごくて!」

 

 アルマという赤毛の子が太鼓判を押す。

 

「そうだ、アルマとゼクス、よかったらシュミレーターで対戦してみたらどうかしら?」

 

 突然にキリー少佐が言い出した。

 

「ゼクスも新型の使用感を見てみたいでしょう? データを持ってきているから、それをインストールして試してみて。そのついでに、うちの子たちを揉んでくれると嬉しいのだけど?」

 

「私は構わんよ。だが、私は手加減するというのが苦手でな。お手柔らかに、とはいかんが」

 

「いいわよ。むしろ全力でやってもらいたいわ。ねぇ、アルマ?」

 

 キリー少佐は自信があるのか、不敵な表情だ。

 

「はひ! 憧れのゼクス少佐に手合わせ願えるなんて、光栄です! ぜひお願いします!」

 

 アルマ少尉は、顔を真っ赤にしながら嬉々として敬礼する。

 

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