目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜 作:妄想零炎
S2型のデータをインストールして、いざ始めようとしたとき、放送でゼクス少佐が呼ばれてしまった。
そのため、急遽僕とキリシマ嬢とノイン女史の第1機動小隊と、ノイジーフェアリー特務小隊のチーム対抗戦となったわけだ。
ノイジーフェアリーの面々は、リーダーであるアルマ・シュティルナー少尉が、件の新型であるザクS2。
バックスにミア・ブリンクマン技術少尉。彼女は技術者だが、パイロットの腕も一流だそうだ。搭乗MSは自ら設計図を引いたというドム・ノーミーデス。
ドムの背面に大型のホバー推進機構を搭載した重MSで、移植した旧ヒルドルブの30cm砲の運用を目的とした機体のようだ。他にも大型のガトリングガンも装備と、容姿に似合わず大艦巨砲主義の模様。
機体データのインストール時に、やたらと重たかったのはおそらくこいつのせいだ。
最後のヘレナ・ヘーゲル曹長は、ドムD型を狙撃仕様に改造した機体だ。僕の扱っているものと同型の狙撃銃を装備、頭部に精密射撃用のスナイパーゴーグルが増設されている。
彼女たち自身、ただの機体試験部隊ではなく、かなりの修羅場をくぐってきたのか、若い女子特有の軽いノリながらも機体の動きそのものは悪くなかった。
なのだが……結論から言うと僕らの圧勝だった。
「まさか、ここまでとはね……」
対戦を希望したキリー少佐は、引きつった表情で戦闘結果を見ている。
8勝2敗。
10戦して勝ったのは僕ら第1機動小隊だ。
初戦はドダイに乗って上空から狙撃したら、「ずっこい!」とアルマ嬢に言われたので鼻で笑っておいた。勝つための努力をしなかった奴の言い訳に過ぎんと言ったら、絶句してた。
ドダイ使って高高度から狙撃してたら、ノイン大尉に練習にならんと怒られたので、仕方なくドダイを封印。それでも勝ち続けてしまったので、4戦目にノイン大尉がノイジーフェアリー隊のオペレーターとして抜けることになった。
5戦目以降は、3対2のハンデマッチ。そこそこいい勝負はしたけど、それでも僕らの勝ちであった。
筐体から出てきた少女たちの表情は一様に暗い。
自信あったんだろうなぁ。
「ここまで差があるとは思ってなかったわ。ノイン、彼女たちに足りないものってなにかしら?」
頭痛を抑えるようにこめかみを揉みつつ、キリー少佐が聞いてくる。
「そうだな。基本的な動きは悪くなかった。だが、この程度の小隊ならニューヤークの面々ならざらにいる」
そうなんだよね。
バトルシミュレーターの小隊ごとの週間ランキングで上位を取ると、
最初は個人戦でのポイントにしようとしたら、ジオンの個人技量頼みの戦術に危機感を抱いたノイン大尉が進言して、小隊制のみになったんだ。
んで、基地内の人間であれば誰でもこのランキング戦に参加していいことになったから、整備士だろうが主計科の事務員だろうがチームを作ってこぞって参加した。
結果、実機に乗ったことはないが、シュミレーターの搭乗時間が100時間超えは当たり前の整備員、通信士、なんてのがこのニューヤークにはわんさかといる。
これまでエンターテイメントを担う、高性能なデジタルゲームなんてものは開発されてこなかったからね。皆ハマってしまったわけだ。
第1機動小隊の整備員で構成される、『地獄の壁』なんてチームは、実働小隊のいくつかを抑えてランキング5位前後の常連だ。
それらシミュレーターの戦闘データは全て最適化して実機のMSAIにインストールしてあるから、実際の腕前も高い。北米圏では、もっともエースパイロットが集まった場所なんじゃないかな、ニューヤークは。
ノイン大尉は続ける。
「まず連携ができていない。リーダーであるアルマ少尉の動きは良いが、個人の技量が突出しているせいで先行しやすく、フォローを担うチームメンバーとも距離が離れがちだ」
そして後衛組は狙砲撃を行える機体に乗っているが、前衛で縦横無尽に動くアルマ少尉の動きに追いつけていない。正直、露払い程度の行動しか取れておらず、EWACシステムで連携を強化した僕らの隊ほどの動きはできていなかった。
「アルマ少尉も挙動が素直すぎるな。センスがあるのは良いが、それが経験とならないのならば意味がない。総じて、全員戦術判断が甘すぎる」
大尉の手厳しいお言葉に、少女たち全員がうなだれてしまった。