目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

98 / 260
第90話『挿話:ストレイフェアリーズ』

 

 地上に降りたジオン軍は、連邦から奪取した地上施設を使うだけでなく、隊員の生活施設を整えたカーゴを用意し、急速に陣地設営を行う。

 

 ギャロップさえあれば何処へでも移転可能であるし、施設の増設も容易であった。

 

 第2機動小隊専用カーゴ。シミュレーター区画。

 

 北米方面軍のカーゴには、すべての部隊の待機カーゴに新型のバトルシミュレーターが敷設されており、基地内ネットワークで繋いである。

 

「うっ、またシミュレーターか」

 

 ヘレナが顔をしかめた。

 

 嫌というほど敗北を味わったので、今日はもう操縦桿を握りたくなかったのだ。

 

「ああ、対戦はしないわ。ただ、観てもらいたい動画があるの」

 

 シミュレーター筐体の後ろには、テーブルと椅子が置かれており、雑談をしながら対戦の様子を観戦することができるようになっている。

 

 飲食物の自動販売機も置かれており、非番であれば飲酒も許可されていた。(飲酒してのシミュレーターの使用は禁止されている。若干名が守っていないが)

 

 バトルシミュレーターは、北米地上軍にとって数少ない娯楽であった。

 

 エターナは全員に、甘いカフェラテを奢ってやる。

 

 部隊内に女性が多いため、フィンゴ中尉にそれとなく要望を伝えたら――キリシマ嬢を巻き込んだら、彼女がだいぶ強引に迫った――いつの間にか仕入れられるようになったものだ。

 

「これから観るのは、我が北米きってのエース、『白雷』(ホワイト・ライトニング)こと、ゼクス少佐と、『悪童』(バッド・ボーイ)フィンゴ中尉の対戦よ」

 

 全員が席についたところで観戦用の大画面モニターに対戦動画が映る。

 

 場所はニューヤーク市街地跡を再現した場所だ。先の降下作戦の爆撃で廃墟と化した旧市街地をリアルに再現している。

 

「またドダイに乗ってる」

 

 ミアが呟いた。

 

 オルド・フィンゴ中尉は、ザクⅡだ。ドダイに乗り、低空飛行で市街地を翔けていく。

 

 ゼクス・マーキス少佐はドムDS型だ。

 

 音を頼りに相手を探しているようだが、フィンゴ中尉は巧みに動き回り位置を特定させない。

 

「なんで上空から撃たないんだ?」

 

 ヘレナが首をひねった。

 

 先の対戦では、初戦で上空からコックピットを撃ち抜かれた。今回も相手の頭上を取ることができるのだから、先制することが可能なはずだ。

 

「上空に登れば、自分の位置も相手にバレます。それにステージは背の高いビル群だらけですから、言うほど簡単には狙えないと思いますよ。隠れる場所は多いですから」

 

 ミアはそう分析した。

 

「そろそろ動くわ」

 

 市街地を円を描くように飛んでいたザクは、ドダイを降りた。

 

 物陰に陣取りじっと動かない。

 

 一方、ゼクス少佐は縦横に戦場を駆け抜けていた。

 

「少佐は強引に索敵するつもりね」

 

 少佐のドムが立ち止まり、何もない箇所へ向けてバズーカを撃ち放った。

 

「あれ? 何してるんだろう」

 

「たぶんダミーです。中尉は先程低空旋回しながら、それをステージ上にばら撒いてたんですよ」

 

 ミノフスキー粒子によりまともにレーダーの使えない状況では、(デコイ)はかなり有用だ。MSのUGS索敵にも限界がある。

 

「でも、なんであんなところで待ち伏せてんだ?」

 

 ヘレナが指摘したのは、ザクが待ち構える場所だ。

 

 半壊した雨天野球場ドームに身を隠している。

 

 確かにMSの巨体は隠せるが、狙撃ポイントとしては優秀ではない。

 

 相手の武装よりも射程で勝っているのだから、その点を最大限に活かすべく、もっと見晴らしのよい場所に立つほうがいいだろう、とヘレナは狙撃兵としての立場から考察した。

 

 ゼクス少佐はダミーを一つ一つ潰していく。やがて中尉が潜むドームへと近づいてきた。

 

 目星は付けたらしく、もはやダミーには目もくれない。

 

 ドームからザクが飛び出す。

 

 バズーカを撃とうとした時、背後の瓦礫からドダイが飛び上がり、突貫してきた。

 

 ドムは機体を素早く横に滑らせてザクからの射線を外すと、向き直ってドダイを撃とうとした。

 

 だが、その瞬間にスナイパーライフルから放たれた弾丸がバズーカのマガジンを貫く。

 

 手元で爆発したため、さすがにドムがよろける。

  

「嘘だろ!? まさか狙って撃ったのか?」

 

 あの機動で武装の、しかもマガジンを狙うなんてとんでもない技量だ。ヘレナは絶句するしかなかった。

 

 ゼクス少佐のドムは半壊した右腕をパージし、左手に装備していたMMP-80でドダイを撃ち落とす。

 

 その頃にはすでに中尉のザクはポイントを移動しており、姿がなかった。

 

「すごい作戦ですね」

 

 真剣に見つめていたミアがつぶやく。

 

「なになにどういうこと?」

 

「最初から中尉は、ドムのバズーカを狙ってたんですよ。マガジンを撃ち抜いたのはさすがにまぐれでしょうけど、これで少佐の武装はマシンガンとヒートサーベルだけになりました。嫌でも近距離に近づくしかない」

 

「一方、中尉は引き撃ち――後ろに下がって距離をとりながら一方的にライフルを撃つことができる。これ、さっきアタシらもやられた戦法だろ」

 

「そうだった! あれで私のバズーカやられて、近接戦しかできなくなったんだ」

 

「あのときはまぐれだと思ってたんだけど、こりゃ完全に狙ってやってたんだな。とんでもねぇ腕前じゃんか。そりゃあ、アタシのこと下に見るわけだ」

 

 同じ狙撃兵としての嫉妬でヘレナは苦い顔を作る。

 

「でもでも、ドムは足が速い。いっきに距離を詰めることだって――」

 

「なんの障害もない平地ならそうですが、この市街地は障害物だらけです。ドムの機動性は半減してますよ」

 

「これは勝負ついたか?」

 

 ゼクス少佐の不利は決定的だった。

 

「ううん。まだ少佐は諦めてない。いや、勝ちを確信してる。自分を信じてるんだ」

 





 ミンサガリマスターやってます。

 シルベン、ブラウを連れていけるクローディアが好き。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告