目が覚めたら宇宙世紀…だよね?〜ジオンが独立に至るまで〜   作:妄想零炎

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第91話『挿話:ストレイフェアリーズ』

 

 戦場でアルマがときおり見せる、低く重い、だが確信を持った言葉にミアとヘレナは気圧される。

 

「アルマちゃんの言う通り。ほら、よくみて」

 

 エターナがリモコンを使って、対戦者の位置を鳥瞰図でみたマップを表示させる。

 

 ゼクス少佐はダミーを潰しながら、徐々にフィンゴ中尉の狙撃ポイントに近づいていた。

 

「居場所を特定してる?」

 

 不意に飛んでくる弾丸を足を止めないことでかわし、迷いなくザクの隠れている場所に向かって走っていく。

 

 さらには、撃たれる前に牽制を叩き込み、相手を近距離にとらえ始めた。

 

「すごい! なんでスナイパーの場所がわかるんですか? センサー範囲外ですよね?」

 

 MSの装備しているUGSはそこまで精度は高くない。

 

 音源の凡その方向と距離を示すだけであり、詳細に解析するには足を止めねばならないし、有効範囲はせいぜい3、4kmだ。熱源センサーはさらに索敵可能範囲は狭い。

 

 通信索敵に特化したマゼラ・フラッグならば、10km先の音でも拾えるが、それはノイズを区別できる耳の良い訓練されたオペレーターが搭乗したうえでの話だ。

 

「たぶんだけど、ダミーの配置から位置を割り出してる」

 

 アルマが言った。

 

「アルマ、わかるのか?」

 

「癖を読んでるのかもだけど、隠れて撃つなら、相手も自分の位置を把握しないと撃てない。だからその行動に適した場所を瞬時に判断して、予測してるんだ。だから反応が早い」

 

「大変だぞミア! アルマが頭良く見える」

 

「ヘレナそれどーいう意味!? 私だって毎回考えて戦ってるよ! 少佐ほどたくさんは処理できてないけど」

 

「実際できんのかよそんなこと? マップ見ると、まるで吸い寄せられるみたいに中尉のとこに迫ってるぜ」

 

「理論上は不可能ではないと思いますよ。でも、それにしても処理するべき情報、取捨選択する状況が多すぎます。いくらなんでも――」

 

 そう言ったミアとヘレナの頭には、『ニュータイプ』という言葉が浮かんだ。

 

 戦場でまことしやかに語られる噂。

 

 類まれな直感力を持ったパイロットたち。

 

 ゼクス少佐もそうなのだろうか、と考えた。

 

「少佐は違うわ」

 

 彼女たちの思考を読んだかのように、エターナは言った。

 

「少佐は私たちとは違うのは確かよ」

 

私たち(・・・)って」

 

 暗に自分とアルマをそうだと認める発言に、ヘレナとミアは鼻白む。

 

「それよりほら、始まるわよ」

 

 ドムの前に姿を現したザクが、スナイパーライフルを撃つ。

 

 胸部に直撃する瞬間、ドムは機体を回転させ、弾丸を弾いた。

 

「ウソッ!? 弾丸を逸らした? 狙ってできるものじゃないですよねあれ!」

 

「いや、できるんだろ。アタシもさっきキリシマ曹長にやられた」

 

 体勢を戻したドムは、マシンガンを乱射する。だがダミーと牽制に弾を消費していたため、数発がザクのショルダースパイクを砕いただけで弾切れとなった。

 

 予備弾倉に切り替えようにも、右腕はすでに喪失しており、弾倉交換するためには足を止めねばならなかった。そして、止まればそこをスナイパーライフルで狙われる。

 

 ドムは弾切れとなったマシンガンを投げ捨てた。

 

「これで残りの武装はヒートサーベル一本のみですね」

 

 だが少佐は諦めていないらしく、機体を高速で動かし続ける。

 

 中尉は距離を取って射界を取ろうとするが、少佐はランダム回避を行いつつも、機体の速度差を利用して距離をジリジリと詰めていく。

 

 痺れを切らしたのか、中尉がライフルを構えて撃った。

 

 正面からの射撃を機体を横に流しながら少佐は躱す――はずだった。

 

 放たれた弾丸はドムのすぐ背後にあった後方のビルを貫き、爆発した。

 

「えっ? なんで爆発したの?」

 

「たぶん、爆薬を置いてたんだ」

 

 試合の序盤、中尉のザクはフィールドのあちこちを飛び回り、ダミーを設置していた。その時だろうか。

 

「でも、なんでそこに少佐が来るってわかるんです?」

 

「カンなんかじゃない。中尉は最初からそこに来るように(・・・・・・・・)仕向けてたんだ」

 

 言いながら、ヘレナはゾッとした。

 

 対戦後に中尉に言われた、自分のしてることは中途半端だという指摘は、彼にとって正しく当然の指摘だったのだ。

 

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