北の大地にて   作:ケンタッキーはおいしい

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この小説では、リニューアル前の旧キャラ設定の踏襲及び現設定の改変、オリジナルキャラの登場を含みます。

また、公式からの言及のない部分につきましては私の想像による補完を含むため、解釈の相違についてはお許しください。

苦手な方はブラウザバックを推奨します。これを読んだことに基づくいかなる損害をも作者は負えませんのでよろしくお願いします。


1-3 手がかり②

さてと、アラームで目を覚ましたらいよいよ張り込み生活の始まりである。今回対象となるスーパーは9時開店、八百屋が8時半開店である。それまでに準備を整えたいと思う。とりあえず、ホテルのバイキングで朝食を摂ったらコンビニで昼ご飯を買う。いつ来るかわからない以上当然だ。

 

というわけで今回は隣のビルにあるセ○ンイ○○ンで買うことにする。眠気覚まし用のコーヒーも一緒にだ。食べやすいようにおにぎりが二つ(しゃけとおかか)、サンドイッチが一つ(たまご)、サラダチキンバー一本(バジル)を購入して部屋に戻った。タオル交換以外のルームサービスの類は一切お断りした。ホラ、下手にいろいろ機材に触れられて取材の邪魔をされても困るしね。

 

松原さんの調査と推測によると、来る時間としてはお客がほどほどに多い昼時のセールをやっていない時間帯が一番濃厚だということだった。まあ、理にかなった推測だ。周りでとやかく騒ぎ立てられれば一番迷惑だと分かり切っているのはマンハッタンカフェ本人である。おばさんの戦場と化すカオスな時間帯に先陣切って突入するわけがない。かといって閉店間際や客の少ないときに店に行けば店員の印象は強くなる。これに当てはまる時間帯は10時半から11時半と13時から15時半だとも教えてもらった。

 

この時間帯を中心に撮影を狙うが、今の時間はまだ8時にすらなっていない。メモリーカードの容量や電池残量をチェックしながら、「今日はどちらの店もセールがないらしいから、もしかしたら朝一で来ることもあり得るな」なんて思考を巡らせてコーヒーを飲み、気合を入れた。そして、二回のラウンジに降り、椅子に腰かけて態勢を整えた。

 

が、まだ30分は暇である。コーヒーばっか飲んでても仕方ないので3年前の引退騒動の時にうちの編集部がまとめた資料でも読む。引退当時の年齢は26、かつて住んでいたのは東京都台東区の上野のマンションの一室で、引退発表の二日前に大家に契約解除の連絡がありそのまま身辺のもの以外引き払ってしまっていたらしい。その後の足取りは(よう)として知れず、都内某所にある実家にもマスコミは押し掛けたがやはりそこにも顔を出してはいなかった。

 

いくら探し回っても本人の居場所がつかめないので、いったい何が引退の原因か?と各誌は頭をひねり、それを見つけに取材に向かった。

 

しかし、何らかの病気説を推して全国を回った某編集部は目撃情報がなくて撃沈、男がらみだと推測して調査した某記者はマネージャーやスタイリストなど彼女の関係者がみんな女性でスキャンダルから守られていたため糸口がつかめず撃沈、トレセン学園時代の友人であるアグネスタキオン某大准教授に取材に行った某女性雑誌は「親友の情報を金銭ごときで売ったりするわけないねえ」と取り付く島もなく追い返された挙句に出禁を食らって撃沈と散々な目に遭っていたらしく、みんな手を引いた。

 

ちなみに某記者とはうちの編集部の人だが、この失敗を機に落ち目となり事実上の左遷である配置換えを食らい今では総務部にいるとか。おお怖い怖い。

 

そして、次のページには今の編集長が残した考察が残っていた。そこには大きい文字で「トレーナー、トレセン学園退職済み 要調査」と書かれていた。トレーナーとは競技生活での指導者であり、特に専属トレーナーとは多くのウマ娘が卒業後一生を共にすることは多い。実際、さっき話題に出したマンハッタンカフェの同期のアグネスタキオン准教授もそうらしい。

 

が、彼女は違った。芸能界に入り、レースと無縁の生活を送り続けた。そして、彼女のトレーナーもまたトレセン学園専属のトレーナーとして勤務を続けており、彼女との関係は絶たれていた。

 

そんな状態はしばらく続いていたらしいが、彼女が芸能界を引退する2か月前に突如として退職届を出しその後国外に転出したらしい。彼の知り合い曰く退職する前年に「海外留学した時にお世話になった人が、『牧場をやるから君も手伝ってくれないか』っていうんだ。正直今の仕事もいいけど、心は揺れるね」と話していたというから、恐らくその筋が濃厚だろう。編集長は海外に行った彼の足取りをつかんで彼女の引退の原因を見つけようとしていたみたいだが、先ほど言ったように各編集部が撃沈していたことと、海外取材のコストがシンプルに高いことから断念していたようだ。

 

どうも、この線がクサイと思えてきた。後で松原さんにも話してみるとしよう。時間は8時28分、スーパー開店の2分前。さあやるぞと改めて缶コーヒーのブラックをぐっと飲み干し、気合を入れた。




さてと、三話ですね。飽き性の自分でもここまで書けるのかと少し感動しております。まだ彼女が出てくるのはしばらく先ですが気長にお待ちください。
基本的に朝六時の予約投稿にしていますが、筆がのりすぎた場合は今回みたいに夜投稿もあります。よろしくお願いします。

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