トリニティソウルは深いぞ   作:紅乃 晴@小説アカ

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2.諒と蓮

 

 

 

 

二階堂 蓮。

 

それがこの世界に紛れ込んだ俺の名前だ。

 

揺れる遊覧船の小部屋にあったベルベットルームから放り出された俺は、目が覚めたら二階堂家の長男として、このペルソナ・トリニティソウルへと転生を果たしていた。

 

何を言ってるのかわからねぇと思うが、当時は俺が一番困惑していた。死んでもなくて、ただペルソナのアニメを見てそのまま寝たはずなのに、なぜ転生なんてしているのかって。訳がわからなすぎて頭がどうにかなりそうだった。

 

だが、困惑はあったものの、その生活に不自由はなかった。兄と慕ってくれる主要人物の一人である映子は、俺がどこに行こうとついてくる可愛い妹分で、数ヶ月かも過ごせばすっかり二階堂家の生活に馴染んでいる自分がいた。まぁ当時はどんどん過去の自分がこの世界の在り方にすげ替えられてゆくような恐怖心ももちろんあって、自分の過去を忘れないように日記をつけたりしてはいたが……。

 

そんな日々の中、転機が訪れる。

 

富山県の湾岸都市と言っても、かなりの田舎。しかも二階堂家の周りは祖父母から受け継いだ農耕地が広がる中にポツンと立つ一軒家だ。そんな中で、二つ隣の敷地で新居の工事が始まったのだ。刺激のない田舎町で新しい住人が増えることに映子は興味津々で学校の帰り、ほぼ毎日どんどんと立てられてゆく家を眺めながら過ごしていた。

 

その家の形を見つめながら、俺はそこに住む住人が誰なのか察してしまった。特徴的な二階建ての木造住宅。裏にある大きな森林庭。そして家の横にある小さなアトリエ。間違いなく、その家はトリニティソウルの主人公たちである神郷家が住まう住居であった。

 

そして数ヶ月後。

 

 

「お兄ちゃん!引越しのトラックが来てたって!!」

 

 

休みの日だというのにはしゃいで自室から降りてきた映子が、俺を連れて完成した神郷家へと向かうことになった。二階堂家から神郷家まで歩いて15分程度。ルンルン気分で「同じ年の子がいたらいいね」なんて話してたくせに、いざ神郷家の前に着くと緊張したのか俺の後ろに隠れっぱなしになる映子。

 

俺は妹に押されるまま神郷家の敷地を眺めていると、ひとりの少年が俺たちの存在に気づいた。

 

 

「あの……ウチに何かご用でしょうか」

 

 

小学生中学年くらい。メガネをかけていて、物腰が大人びた少年の言葉に、後ろに隠れていた映子はほだされたように少年を見つめていた。

 

 

「あー……、隣……といっていいか。近くに住んでる二階堂です。妹がどうしても気になるっていうんで」

 

「ちょ、ちょっと……!お兄ちゃん!!」

 

「後ろに隠れてるのが二階堂 映子で、俺は蓮だ。君の名前は?」

 

 

恥ずかしがってる映子を無視して話を続けると、メガネをかけた少年は自己紹介をした俺たちをじっと見つめながら頭を下げて挨拶を返した。

 

 

「神郷 諒です。よろしくお願いします……?」

 

 

それが、俺と諒の出会いだった。

 

 

 

 

 

 

「懐かしいわねぇ、映子ちゃんも蓮くんも、こんなに小さかったのに」

 

「やだ、おばさん。こんな小さな頃の写真やめてくださいよ〜」

 

 

諒や、弟である慎たちと合流して、そのまま神郷家でご飯をご馳走になった俺は、後から合流した映子たちと一緒に大人組で晩酌を始めていた。

 

神郷両親が引っ張り出してきた古いアルバムに映る3人の写真。これは諒と映子を連れて始めて3人で学校に登校した時の写真で、隣にあるのは俺が中学に上がった時のもの。一緒に登校できなくなると映子に泣きつかれて、それを諒が宥めている写真が収められていた。

 

 

「この時の映子ちゃん、お兄ちゃんと登校できないなら私も中学校にいくって泣きじゃくってたわねぇ」

 

「確かに諒と二人で落ち着かせるのに苦労したな」

 

「もう!兄さんも昔の話を掘り返さないで!諒も笑ってないで助け舟でも出してよ!」

 

 

そう不貞腐れる映子に謝る諒。そこには穏やかでありながら幸せに満ちた諒と映子の姿があった。

 

俺が神郷家にお邪魔していると聞いた映子は、手頃なつまみをスーパーで買い足してそのまま神郷家に〝帰宅〟。そう、映子は今、諒と一緒にこの家で同棲をしているのだ。

 

最も慎や洵、結祈や両親が住む一軒家とは別に、広大な敷地内に併設した離れで生活している訳だが。諒も映子も同じ医学大の教授をしているため、出勤も二人揃ってが多い。ただ帰宅時間はばらつくのだとか。

 

慎と洵、結祈は綾凪市の中心部にある公立高校と中学校に通っている。

 

 

そして、神郷家は両親が健在だ。

 

 

ペルソナ・トリニティソウルを知る人々は、初っ端から設定が大きく異なっていると思うだろう。こんな家族団欒な様子なんてアニメ本編には存在しない。本来であれば神郷家は10年前に発生した同時多発無気力事故によって両親と結祈が死亡、3人となった兄弟も慎と洵が東京に暮らすことになり、一家は離散するというのがアニメ開始前の状態だった。

 

では、なぜここまで変わったのかというと、俺と俺の持つ「ペルソナ」の力に起因している。

 

まず最初に起こった変化は、諒がペルソナに目覚めた時からだった。

 

当時飼っていたペットが亡くなり、両親も不在で一人悲しみに打ちひしがれている中、諒の心に反応してペルソナが体現化したのだ。

 

裏庭にある森林庭の中で暴走する自身のペルソナを止めることができずパニックを起こしていた諒を助けたのが俺だった。

 

 

『止まって……!止まってよぉおーー!!』

 

『諒ッ!』

 

 

悲痛な諒の声を聞いた俺は、自身のペルソナを体現させて感情のまま暴れ回る諒のペルソナを落ち着かせたのだ。幸い、映子に見られる前にことなき得たわけだが、それから俺と諒のもう一つの関係が始まった。

 

 

『蓮兄さん……あの幽霊は……なんなの?』

 

 

落ち着いた諒が、自分の目覚めた力に疑問を抱くのは当然だった。そして、諒と同じ力を持つ俺に対しても。

 

 

『諒。その力に目覚めた以上……それを扱うための訓練をしなければならない』

 

『でも……俺……そんなのやり方わかんないし……』

 

『俺がその力の使い方を教えてやるよ』

 

 

それからはペルソナを制御するため、映子やお互いの家族に見られない時は訓練する日々だった。俺はこの世界に転生してからペルソナを使えるようになっていたので、自分の望むタイミングや、ペルソナの制御については諒にある程度教える程度のスキルは身につけていた。

 

 

『蓮兄さん。結局、ペルソナってなんなんだろうな』

 

 

諒が自身のペルソナを制御できるようになったのは中学に上がったあたりだった。それまでは制御するのに必死だった諒だが、ある程度の余裕ができたからか、その力は一体なんなのかという疑問を持つようになった。

 

諒が中1の時、俺は中3。帰り道にそんな質問を投げかけられた俺は、とある文献を参考にした。

 

アニマと呼ばれる宗教観の一つに、ペルソナの例えで有用なものがあったからだ。

 

ペルソナとは心の奥に潜むもうひとりの自分の姿。適性ある者のみが、神や魔物の如き姿をもってそれを具現化させられる。そして自らの存在を脅かすもの、相容れぬものと戦うことができる力だ。

 

それはある意味、自身の魂の一部を具現化する力でもある。魂は古くから、和魂(親愛)、荒魂(勇気)、幸魂(愛情)、奇魂(叡智)の4つの分類にされる傾向が強く、諒が持つペルソナは奇魂〝くしたま〟の要素が強く反映されているといえる。

 

他ペルソナ作品で出てる複数のペルソナや、複数のアルカナ属性を使役することができる「ワイルド」の属性は、真魂(しんこん)という4つの分類すべての要素を兼ね備えたレア中のレアスキルなのだろう。

 

実際、俺のペルソナは荒魂〝あらたま〟の属性が強く、二刀流の近接戦闘型のペルソナだったりする。

 

そんなわけで、俺と諒はペルソナの根源や、どうしてこう言った能力を手にしたのかの研究をしつつ、お互いに決めた進路のための勉強もしていた。

 

 

 

そんな日々の中。

 

諒が京都の大学に進学を決めたとき。

 

 

 

 

同時多発の無気力症候による大事故が綾凪市で発生した。

 

 

 

 

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