追放アラサー元FPSプロゲーマーの俺に、Vtuber達からやたらコラボの誘いが来るようになるまでの話   作:山かけうどん

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3章
10話:企画会議


「ぱんぱかぱ〜ん!!これより、星猫姉妹withケイ郎による、緊急オンライン会議を開きます!!じゃあらいちゃん、今日の議題をよろしく」

「……この会議では、ケイ郎さんのチャンネル登録者数5万人達成を二日で目指すアイデアを出し合い、それを基にした登録者増加戦略、それに伴う企画立案を行います」

 

 ……なんか、始まったんだけど。

 

「あー、口を挟んで申し訳ないんだが、まずは前提として一ついいか?」

「はい!!」

「俺、2日で登録者5万人目指すことになったの?」

「……嫌ですか?」

「いやそういうわけじゃない、チャンネルを大きくする為に2人が協力してくれるのは、俺としては願ったり叶ったりなんだが」

 

 2人のおかげで俺のチャンネル登録者は千人という大台をとっくに超え収益化可能となり、配信者として生活していく為の兆しが見えた。ならば、できるのであれば配信者としての立場を早く安定させたいというのが、少し意地汚いかもしれないが俺の本音だった。

 

 登録者は安定して配信活動をしていく上で必要不可欠だ、もちろんたくさん増えて欲しいし、2人がその為に協力すると願い出てくれるなら、こちらとしては断る理由などない、だが……。

 

「……可能なのか? そんなことが」

「ふっふっふ、誰に物を聞いてるんですか?」

 

 星猫姉が得意げに声を出した。

 

「世はVtuber戦国時代、Vtuber数は企業個人含め1万人を超え、事務所は乱立し、個人勢はおろか大手の箱に運良く所属しデビューしても、勢いがなくなればすぐに忘れさられる、人気を確立しても定期的に話題にならなければ周囲に取り残される、そんな時代です」

「……残酷な時代」

「そんな中で、ありがたいことに私達はVtuberの中で上から十本の指に入る人気を持ってます、これもすべてリスナーさんたちのおかげ……と言いたいところですが私だって人気を維持する為に努力してる、全て自分の力と驕る訳じゃないけれど、それでも何割かは自分で掴んだものだって胸を張れます、つまり何を言いたいかと言うとですね」

「……ひかりちゃんは自己プロデュース能力の塊、バズりのプロ」

「つまり、私は神ってことです!!私にかかれば5万人到達くらいちょちょいのちょいです!!」

 

 数秒前に驕らないって言ってたのに……ええ……めーちゃくちゃ驕ってるじゃねえか、神て。

 

 神を自称する奴にロクな奴はいないって誰か言ってたような気がする。

 

 しかし、星猫姉の言っていることも間違ってるわけではなく、名実ともに2人は大人気Vtuberであることには違いない、配信を始めまだ1ヶ月と少し、登録者も彼女らと比較して百分の一以下、ペーペーの俺からすれば誇張なく神のような存在だ。俺は平伏した。

 

「ははーっ、か、神よ……私にできることがあれば、なんなりと」

「……ケイ郎さん、ひかりちゃんのノリに無理して付き合わなくてもいいよ」

 

 そんなこんなで本格的に会議が始まった。

 

「まぁまず、何かアイデアをみんなで出していきましょうか、何か思いつくことありますか?」

「……とりあえず、配信してる時間は長いほうがいいと思う、みんなの目に触れる機会が増えるしふらっと見にきやすいんじゃないかな」

「なるほど、もっともな意見だね……人気配信者は月の配信時間がえげつないことになってる人が結構いるし、長時間配信はサイトのおすすめ欄にも載りやすい」

「へー、そうなのか」

「ちなみに今回は期限まで2日間ですけど、明日と明後日、英作さんは何時間まで配信に時間使えます?」

 

 俺は少し思案する。

 

「えっと、2日だよな? ならがんばればぶっ通しで48時間いける」

「ええっと、寝る時間は……?」

「……なくても平気だ」

「……ケイ郎さんがやろうと思えば1週間くらい寝ないで生活できる話は、有名、主に私の中で」

「いやそれ、多分相当体ボロボロになってますよね、早死にしますよ……まあでも配信者としてはめちゃくちゃ素質ある……耐久配信とかできそう……?」

 

 会議は続く。

 

「やっぱり登録者急増のために、コラボは外せないんじゃないですか?」

「コラボならお前たち2人とやってるだろ?」

「私たち以外の人ともってことです、英作さんに私たちがコラボで渡せる恩恵はもう即効性がない、昨日と今日の登録者の伸び率を比較してみてくださいよ」

 

 俺はチャンネルの管理画面を開き、アナリティクスに表示されているチャンネル登録者数を確認した。

 

「……確かに、昨日と比べて今日は緩やかだな」

「そういうことです、コラボで伸びる登録者は初動が一番多いんです、見慣れていくうちに段々と先細りしていきます」

「……同じ人とコラボしていてもダメってことか」

「……つまり逆を言えば、初めて関わる人とコラボする事は登録者増加に対し即効性が高い」

「なるほどな、バンバンいろんな人とコラボすれば登録者も早く増えるってわけか」

「……できれば少人数で話すような形がいいかも、周りが全員有名人で、大人数でやるゲームだと、埋もれちゃう可能性がある」

「少人数か、じゃあ、配信中に色んな人とコラボする為に、ころころコラボ相手が変わるような企画が理想だな」

「……相手のリスナーさんにケイ郎さんが興味をもってもらう事も必要、だから、ケイ郎さんの強みを生かすのも大切」

「まあ、いろんな人と関わることになるので大変だし、反発もその分多いでしょうけど……英作さんがそれを許容できるなら、その」

「手段を選んでられるほど時間もないだろ、大丈夫だ、でも肝心のコラボ相手はどうやって確保するんだよ?」

「その点はぬかりないです、うちの箱内の人だけで申し訳ないんですけど、協力してくれそうな人達にもうメッセージをとばしてます!!」

 

 いや事後報告かよ……俺が断ったらどうするつもりだったんだ。しかしやけに準備が早い。

 

「……長時間配信で配信中にころころコラボ相手が変わるような企画で、ケイ郎さんの強みを活かす配信」

「ケイ郎さんも何か意見ありませんか?」

「ああ、いや俺は……どうやったら登録者が伸びるかなんて詳しくないし」

「なんでも、恥ずかしがらずに言ってください!!」

「……そんなこと言われてもな」

 

 こちとら1ヶ月程配信活動をしたものの、それほど数字が出なかった男だ、みんなの興味を引く事など到底思いつくはずもなく。会議に参加している今も2人の発言1つ1つに説明を求めその度に理解し、その思慮深さに感服しているという状況だ。

 

 俺が無言になっていると、星猫妹が呟いた。

 

「……ケイ郎さんにできる事、思い出してください」

「……俺にできること?」

 

 俺にできる事……と言われてすぐに思いつくのはゲームに関する事だ、プロゲーマーだったしな。だが、プロゲーマーらしく上手いプレイを見せると言っても……前も言ったように現役のプロとかには遠く及ばない、この前までプロだったと言っても、エクスタプロ時代の末期にはほぼ補欠としてしか大会に参加していなかったしな。

 

 それにFPSを配信でやるとしたら、レジェスク一択だろう、昨日今日で実感した、簡単に人気を得るには人が沢山いるコンテンツをやるべきだと。

 

 しかしレジェスクは今をときめく覇権ゲーで、プロでなくとも俺より上手い配信者だってごろごろいるのだ、だから俺が少しうまいプレイをしたところで特に興味をそそる事はできないだろう。

 

 他に思い当たるのは現役プロであるREXとHekto、2人のコーチをしていた事くらいか……ん?

 

 コーチ?

 

 ……ああ、なるほど、これなら。

 

「なあ、その箱内の人達って、全員FPSやってる人じゃないんだろ?」

「そうですね、歌メインとか、雑談メインとかの人、ゲーム配信はするけどFPSには触ってない人も結構居ます」

「なるほど、なら……その中にはプレイしてないけど興味がある人、居るんじゃないか? 特にレジェスクについては」

「……いるかもしれない」

「なら……『元プロゲーマーによるレジェスク初心者Vtuberコーチング企画』なんてどうだ、1時間とか2時間おきに相手を変えて」

「なんで初心者限定なんですか?」

「……ああ、別に誰が来てもらってもいいんだが……コラボしてもらうなら、相手にも恩恵があったほうがいいだろ」

 

 現在、配信者には2種類の人がいると風の噂で聞いたことがある───レジェスクをやっている人と、やっていない人。現在大流行中のレジェスクというゲームはとある要因で、全配信者にとって見て見ぬ振りのできないものとなっている。

 

 それこそが───配信者間でのコミュニケーションツールとしての側面。

 

 レジェスクを配信する人はレジェスクを配信する人としかコラボしない問題である。

 

 配信者としての目線に立った時、レジェスクは基本プレイ無料かつ、流行ってるしとりあえずやってみよー……といった具合に、気軽に始めることができる。

 

 そしてレジェスクは複数人でプレイするのが前提のゲームである為、それを口実に他の配信者とのコラボがやりやすいのだ、初期の頃はそういった理由でレジェスクをやる配信者が増えていき、レジェスクの流行に伴いやがてそれは勢いを増し、後に各界隈の壁を壊すまでに至った。様々な界隈との交流を経て、レジェスクをやっていた配信者たちは数字を伸ばし、大きい影響力を得るようになった。

 

 だが、その結果コミュニティは円熟し、レジェスクをやっている人同士でしかコラボしないという現象が起こっていた。

 

 レジェスクをやっていなければ輪に入れない、これこそが現在、全配信者にとっての悩みの種の1つなのだと、星猫姉妹も先ほどの配信中にちょっと触れていた。

 

 ……だが、レジェスクを今更始めるというのも勇気がいるものだ。

 

 俺のようにある程度実力があればコミュニティに溶け込むことができるだろうが、初心者、それもFPSを初めてやる人間などは肩身の狭い思いをしそうである。一方の視聴者からはレジェスクに魂を売ったとか言われ、またある視聴者には下手くそだからコラボにくるなと言われるだろう。

 

 なればこそレジェスクを始めたくても始められない層がいるのではないか、と俺は睨む。

 

 そういう人達に『企画にお呼ばれされ不可抗力で始めないといけなくなった』という大義名分を与えるとともに、企画に参加してくれた人が将来的に一定以上のゲームの実力を持ち、レジェスクコミュ二ティの中で煙たがられることの無いようにコーチングする。

 

 たった1〜2時間で初心者を上級者にさせることなんて俺にはできないが、そのきっかけくらいは作れるだろう、と思っている。以上が俺の考える企画のコラボ相手への利点だ。

 

 そしてこれなら俺の強みも活かすことができる、星猫姉妹から提示された条件にも合致しているはずだ。

 

「……なるほど、いい考えかも」

「そうと決まれば星猫姉、悪いがレジェスク初心者の人に声を……」

「……そう言うと思って、最初からその人達に絞って連絡してます!!」

 

 まじかよこいつ、いくらなんでも準備が良すぎて怖いんだが。

 ふと、違和感を感じ聞いてみる。

 

「……なあ、さては、俺の事誘導してないか?」

「何の事ですかー?」

 

 めちゃくちゃ白々しい返事が返ってきた。あ、これあれだ、たぶん形だけの会議ってやつだ。なるほどね、そういうことか。

 

「……これは俺を納得させる為の会議なんだろ? もう企画は最初からこれに決まってたんだろ?」

「うーん、そうですね、ケイ郎さんの考えた企画、すごく良かったんですが……もうちょっとでしたね、でも8割型正解です」

「……どういうことだ?」

「確かに『元プロゲーマーによるレジェスク初心者Vtuberコーチング企画』は一定数興味を示す視聴者はいると思いますよ? でも、それで5万人は狙えません!!何番煎じかって話ですよ! 」

「……確かに、俺以外にも似たような事を考える奴は居そうだが」

「……堅い!堅すぎですよこんな企画!真面目にコーチングしてる配信なんてとっつきやすくないですよ!!FPSにあんまり触ったことのない人達にもチャンネル登録してもらわなくちゃいけないのに」

「……そう言われてもな、これ以上どうすればいいんだよ」

「……私たちがついてるじゃ無いですか」

 

 ……えっと、つまりどう言う事なのだろうか。

 

「……私達が、ケイ郎さんに乗ればいいんですよ」

 

 ……え?

 

 ……俺に乗る? どういうことだ?

 

「まだ分かりませんか?」

 

 ……???

 

「いいですか、説明します、その企画の名前は───」

 

 ーーー

 

「はじめまして、私は天詩(あまうた) エルといいます、今日はいろいろ教えてもらいに来ました! よろしくお願いします」

 

 1人目のコラボ相手、天詩さんが丁寧に挨拶をしてくる。かくして俺のチャンネル登録者5万人到達を目指す48時間耐久配信が幕を開けた。48時間ということもあり、いろいろと緩急をつけながら、様々な事をしていこうという話で俺たちの意見はまとまった。そして、この配信にはとあるメイン企画があった。

 

 その企画の名は───

 

 ───かつて、ハリウッド映画に、日本のロボットアニメや特撮を大いにリスペクトした作品があった。その映画のロボットは、2人で操縦しないと動かないという設定を持っていた。

 

 ───かつて、日本のバラエティ番組に、前述のハリウッド映画を大いにリスペクトした人気コーナーがあった。そのコーナーの内容とは所謂ドッキリ企画、人気の女優や女性モデルをゲストに招き、偽のデート番組と称して芸人とのデートロケを撮影。しかし芸人の耳にはイヤホンが装着されており、芸人はデート風景をモニタリングしている別の芸人2人の指示によって行動する……という内容だった。

 

『……ケイ郎さん、ふぁいと』

『英作さん、これからエルちゃんとの会話の中でわたし達が何か指示したら、それに従ってくださいね』

 

 俺の脳内には、天詩さんの挨拶と同時に星猫姉妹の声が響いていた、星猫姉妹の声は天詩さんには聞こえていない。そう設定してある。

 

 ───今日、前述のバラエティ番組を大いにリスペクトした企画が始まろうとしていた。その内容とは所謂ドッキリ企画、レジェスク初心者のVtuberをゲストに招き、コーチング企画と称して元プロゲーマー・ケイ郎とのコラボ配信を行う。しかしケイ郎にはゲストに聞こえない、星猫姉妹との通話が繋がっており、2人の指示に従って行動する……という内容である。その企画の名は───

 

 俺はとりあえず天詩さんに挨拶しようと口を開く。

 

「はじめまして、ケイ郎です───」

『……よろしくな、エル!!って言ってみて』

「よろしくな、エル!!」

「あ……えっと……そういう感じの人なんですね、あはは」

 

 いやめっちゃ引かれてますやん。

 

「あ、いや、違うんです本当は、誤解なさらないでッ……」

「大丈夫です、私、今日は頑張りますねっ」

『あぁ〜、訳わかんないノリにも笑顔で対応してくれるとか、やっぱエルちゃんめっちゃいい子!!曇らせたい!!』

 

 耳元で歪んだ欲望を吐き出すな星猫姉!!想像したいと思ってないのに想像しちゃうだろうが!!

 

 ───その企画の名は『パシフィック・ケイ』

 

 星猫姉の生み出した、悪魔の企画である。これで5万人目指すってマジで言ってる?

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