追放アラサー元FPSプロゲーマーの俺に、Vtuber達からやたらコラボの誘いが来るようになるまでの話   作:山かけうどん

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17話:応戦者と挑戦者

「そろそろ第一リング縮小の時間だ、物資は揃ったか?」

「はい、私は戦えます!」

「……一応、回復は多めにとっておいた」

 

───『超絶ストリーマーカップ夏の陣』スクリム1日目、第一試合開始から2分経過───生存部隊数19/20

 

「移動中、どのタイミングで『大三元』と当たるか分からない、常に気を引き締めていこう」

「……うん、私もルフのアビリティも使って、警戒する」

「ああ……さっきも言った通り、不意打ちを仕掛けられたら正面から撃ちあわず、星猫姉のネメシスのウルトとアビリティを使って時間稼ぎしているうちに、俺のロキのウルトも使って一旦リセットしよう」

「できればその時、相手のチーム編成も把握するんだったよね」

 

 その通り。

 流石、若者は飲み込みが早いというものだ。

 相手のチーム編成の把握はレジェスクにおいて大きなアドバンテージになる。

 相手のとってくるであろう戦略や手段を知ることができるからだ。

 レジェスクはただのバトロワFPSゲーではない。

 FPSの中でも、俗に言うヒーローシューターと言われるジャンルのゲームである。

 ヒーローシューターの特徴は従来のタクティカルFPSとは違い、格ゲーのように複数のプレイヤーキャラクターが存在するという点だ。

 プレイヤーキャラクター達はそれぞれ固有の特殊能力を持っていて、それを活かすことにより、ゲームを有利に進めることができるという設計になっている。

 また、役割(ロール)がキャラクターによって分けられているため、キャラによって強みと弱み、出来る事と出来ない事がはっきり分かれるという点も、特徴の一つだ、レジェスクはそこまで極端ではないが。

 従来のバトロワFPSに特殊能力を掛け合わせ、奥深さを増した戦略性と駆け引きが味わえる───それこそが、レジェスクがただのFPSバトロワゲーではないと、言える理由だ。

 

 近未来のスペースSF的世界観が魅力のレジェスク。

 

 そんなレジェスクには現在プレイヤーキャラクターであるヒーローが全10体いる。

 

 どれも個性的な能力……アビリティを持っていて、戦略に幅を出すことができる。

 中には同じチームで組ませると、アビリティが相乗効果を発揮するヒーローもいる。

 それらを組み込むチームを作ることは、試合を有利に運ぶために必要不可欠だ。

 

 例えば現在、星猫姉が使用している「ネメシス」というヒーローと、星猫妹が使用している「ルフ」というヒーローがいる。

 ネメシスのアビリティは「死煙[デス・スモーク]」というもので、ダメージを与える煙を一定時間展開するアビリティである。

 「ルフ」のアビリティは「鷹の目[ホーク・アイ]」というもので、鷹型のドローンを投擲し、着弾地点から一定の範囲内の敵の位置と体力状況を一瞬知らせてくれるというものである。

 

 この2つのアビリティを同時に敵に対して使うことができれば、「ネメシスの「死煙」により視界を塞がれスリップダメージを受ける上、ルフの「鷹の目」により位置がバレバレでこちらから打ち放題な敵」を作り出すことができる。

 

 このように強力な相乗効果を発揮するヒーローを活かしていくことで、試合を有利に進めることができる。

 

 しかし忘れてはならないのが、相手も同じ事を考えているという事だ。

 

 相手も相応の戦略を練っている、そしてこちらの戦略とそれが互いに合間見えた時、勝利するのは、より戦場を支配した方だ。

 

 場を支配する手段は間接的要因、直接的要因などら細かいことを数えればキリがないが……情報というのは、その一つに当たるだろう。

 

 相手を知る事で思惑を看破し、それに対する適切な対応をし、相手の戦略を崩す事ができれば勝利はグッと近づく。

 

 つまり、相手のパーティ編成を把握し、相手の手段を把握するということは、勝利に近づくための第一歩だというわけだ。

 

 まあ、そんな感じで相手の情報が分かっていれば、基本はどのチーム構成にも対策はあるのだが、対策(メタ)られても一定の効果が見込めて、結果を出すチーム編成があったりもする。

 

 所謂、環境編成(tier1)と呼ばれたりするものだ。

 

 俺達のチーム構成も、そんな環境編成の一つ、「安置先入り順位重視パーティ」と、世間一般から言われているものである。

 

 個々のキャラの評価が高く、やれる事が多いのは大前提として。

 索敵が得意なヒーロー、ルフで敵の居ない強ポジションをいち早く見つけ出し、移動が得意なロキで場所を取り、ネメシスでそこに居座る。

 

 ───というのが、この編成の強みであると同時に、俺達チームの基本戦略である。

 

コメント:えらく消極的だなあ

コメント:元世界一って肩書きなら、もっとガンガンファイトしに行く感じかと思った

コメント:まぁ、たしかに理にかなってはいるけど……見てて面白い感じではねぇな

 

「まぁ、視聴者の皆の気持ちも分かる、見てて面白く無いのはすまん、だけど大会のメンツがメンツだ、全てのチームが一筋縄でいく相手じゃない以上、勝ちに行くならこの編成がベストだ」

 

 ただでさえうちのチームは現役プロレベルのプレイヤーが全チームの中で唯一1人も居ないというハンデを背負っているんだ。

 今大会ではキルポイントよりも生存順位ポイントの方が大きい。

 正面から戦って勝てない以上、別の手で勝ちを拾いにいくのは合理的な判断であると、俺は思う。

 

───『超絶ストリーマーカップ夏の陣』スクリム1日目、第一試合開始から5分経過───生存部隊数18/20

 

 第一縮小のリングは南東を中心に展開された。

 俺達のランドマークは北東であり、移動を余儀なくされた。

 目立った街や敵がいそうな場所に注意しながら、最速で南下する俺達。

 今回のリング縮小、『大三元』の街の方が僅かにリングに近かったのだが、俺達の通る道に、彼らが通った痕跡は見当たらなかった。

 

「『大三元』が来るとしたら、俺達の後方からだな」

「それか、私達とは別ルートをとったかもです」

「ん……十分に警戒しよう」

 

 俺達は無事安置の中に入り、とんとん拍子で高台の建物を取る事に成功した。

 

「うーん、リングの第一縮小ももうすぐ終わりますし、やっぱり彼らのチーム、見えないですね。」

「ん……やっぱり、別ルートを辿ったのかも」

 

 2人の言う通り、その線が濃厚だな。

 さっきから俺も周囲を索敵しているが、彼らの気配はなかった。

 安置が完全に縮小した合図のサイレンが響く。

 まあ、何はともあれ一安心だ────と胸を撫で下ろした、その瞬間だった。

 サイレンの裏で、微かなジェット音が聞こえたのだ。

 その瞬間、俺は気がつく。

 

「安置外だッ!安置外から1チーム降下してくるぞッ!!」

 

 ヤバイ、猛烈にヤバイ。

 この音を出すヒーローは、アイツしかいない。

 

───【天空からの強襲「アヌ」】役割:サポート

 大きなジェットパックを背中に背負い、バードヘッドマスク、色彩豊かな民族衣装チックの戦闘衣装に身を包むキャラクター。

 

 レジェスク公式ホームページ、キャラクター紹介のキャッチコピーに違わないそのヒーローの特徴は、なんと言ってもウルト。

 ウルトとは、アルティメットの略で、アビリティの他にもう一つある能力である。

 わかりやすく言うと必殺技、アビリティのように乱発できる訳ではなく、一回使うと溜まり直すのに時間がかかる、しかし、その能力は非常に強力で、使いようによっては一発で戦況を覆すことができる。

 

───アヌのウルト【大空の主[ハイ・トルネードジェット]】

 

 チーム全員をジェット噴射により上昇させ、一瞬で高台に移動させることができる能力を持っている。

 ……あのチームは、一瞬で、この高台まで降下してくるつもりだ。

 

「2人とも、まずはッ……」

 

 言いかけた言葉を途中でやめた。

 

 ───クソ!!説明している時間がない!!

 

 俺は言葉を飲み込み、即座に建物の屋根の上へ登る。

 判断に迷う星猫姉。

 星猫妹は数瞬遅れて俺の意図を察したようで、屋根の上へ登ってこようとしていた。

 

 俺の狙い……それはアヌのウルトの弱点。

 

 「着地硬直」……レジェスクは仕様上、高台から落ちてもダメージはない、しかしデメリットはある。

 それこそが1秒間の着地硬直───射撃のブレ、リコイルの反動増大、さらに極め付けは移動速度の低下。

 通常は一定の距離の落下で発生するこの着地硬直だが、アヌのウルトで飛んだ後は、必ずこれがある。

 この隙をついて、最低1人ダウンさせることができれば、あとは数的有利で押し込むことができる。

 ダウンさせることができた相手がプロなら尚のこと良しだ、勝機は大きくこちら側に傾く。

 俺はそんな思考を一瞬のうちに組み立て、降下してくるチームを迎撃しようとしたところで───それを諦めた。

 まさか……そのチーム編成は。

 だとしたら。

 

「───ダメだッ、中に戻るぞ!」

「……ッ!?」

 

 室内に入っていく俺のロキと星猫妹の操るルフがすれ違う。

 反応が遅れ、屋上に登ってしまった星猫妹。

 

 このまま何もしなければ、訪れる運命。

 敵の降下した足音の後、リアルな射撃音が短く響いた後には。

 ───星猫妹のダウンという事実だけが、その場に残るだろう。

 ……こんな所で、使わされるなんてな。

 

「ウルト使うぞッ!」

 

 俺はロキのウルトを惜しみなく使用する。

 

───【影からの致命「ロキ」】役割:オフェンス

 華奢な青年、フードで隠れた顔に、黒を基調とした戦闘服。

 

 【アヌ】と同様、このキャラの特徴もウルト。

 そして、そのウルトの評価は、全キャラクター中堂々の1位。

 サービス開始前、ベータテスト時点から、ただの一度も陥落しないその評価は、幾度となく下方修正された今も健在である。

 

───ウルト【悪戯者達の影隠れ[ヴァニティ・ハイド]】

 

 能力は、チームメンバー全員の光学迷彩による透明化(フルステルス)足音の消失(サイレンス)

 

 効果時間は15秒間、相手からダメージを受けるか、自らの発砲、アビリティの使用をした瞬間、解除される。

 使用時と解除される瞬間、黒く光るエフェクトが発生する。

 

「退避だッ……2人とも!!」

 

 俺は必死で呼びかけ、一目散に逃げる。

 後から続いて建物から逃げる星猫妹姉だが、影のエフェクトや行動が読まれていたのか、2人ともダメージを与えられ、透明化を解かれる。

 それでもめげずにウルトをとりあえず吐いたようだが、ダウンさせられてしまった。

 

「うわ、ごめん無理だ!」

「……アヌ、青50ダメ、ベスト割かけ」

 

 ───ウルト使わない方が良かったか!?

 

 だけど、あのままウルトを使わずにいたら、どっちにしろ数的有利で制圧されていた。

 ネメシスの「死煙」やウルトで時間を稼いでも、ジリ貧だっただろう。

 あるいは、相手の練度が低ければワンチャンスがあったかもしれない。

 しかし────

 

『逃さねぇよ』

 

 瞬間、そんな、相手プレイヤーの意思が、プレイから伝わってきた気がした。

 

 一瞬で俺の目の前に、碧色のエフェクトを纏いテレポートしてくるプレイヤーが1人。

 

───【疾風サイボーグ忍者「ハヤブサ」】役割:オフェンス

 グリーンブラッドが全身に光る、サイボーグの男。

 顔はシノビ・アーマーで覆われており、刀を携えている。

 

───ウルト【次元裁断[ザン]】

 

 空間を切り裂くメカニックブレード【逆説刀】により、瞬間移動できる一方通行の次元ポータルを生み出すという能力を持つ、追撃の鬼。

 

 おいおい嘘だろ。

 いくらなんでも、あんたらオフェンシブすぎるだろうが、その構成。

 

 俺はその日、『大三元』の執念を知った。

 

 

───『超絶ストリーマーカップ夏の陣』スクリム1日目、第一試合開始から6分経過───生存部隊数17/20

 

 

 チーム『ケイ光らいと』順位……18位

 

 

ーーーー

 

 チーム『大三元』、歓喜の声を上げるtoppoとシレン。

 

「とりあえず、『ケイ光らいと』には一勝ですね」

「シャーッ!」

 

 しかし、俺は諸手をあげて喜ぶことができなかった。

 

「……クソ」

「牌ドラさん……そう落ち込むことないですよ、ブランクがあったんですし……たしかに、ケイ郎さんのプレイは凄かったですけど」

「【アヌ】ウルト使用後の着地時に0.1秒間だけ発生する硬直デバフ無効時間、そこに【タイタス】ウルトを合わせれば着地硬直をキャンセルできるなんて、隠れ仕様の知識を持ってるとはねェ」

 

───【生命力の権化「タイタス」】役割:ディフェンス

 老練の衛生兵であり科学者。ナノテクノロジー技術を応用した植物的なアーマーで身体を拡張している。

 

───ウルト【母なる大地[ライフ・イズ・ワイルド」】

 

 ナノテクノロジー装置によりチーム全体の肉体の再生力がアップし、ヘルスを一定時間1.2倍にするバフをかけられる能力。

 

 単純明快なわかりやすい効果で、初心者向けに作られたのが頷ける性能だが、その真価を知っている一握りのトッププロは、皆口を揃えて「あれを初心者用に作ったアルテミス・ゲームズはイカれてるよ」と言う。

 

「本当ですよ……知識を持ってるプロですら、初見は警戒してこないのに」

「存在自体今日知ったワ」

 

 談笑する2人だが、俺はその輪に入る気にはなれず、先程のことを思い出す。

 ああ、確かに、あいつはまだ本物だ。

 ラストのワンプレー。

 ケイ郎以外の2人もダウンさせた。

 数で押せば勝ち確定だと思ったから、距離を詰めた。

 俺1人でダウンまで持っていける。

 最悪、俺がダウンしても、3人で押せば勝ち。

 ……俺の操る【ハヤブサ】は、確かに的確な場所にポータルを張った。

 俺は奴の先手を取り、射撃したはずだった。

 エイムは悪くなかった。

 しかし、ケイ郎のベストを半分まで削った所で先に倒れたのは、俺の方だった。

 あそこまで、ヘッドに当ててくるか普通!?

 今年30歳になるとは思えない反応速度。

 正確無比なエイム。

 危うく、相手にワンチャンス作らせる所だった。

 後数秒、シレンのSRによる狙撃が遅れていればまだ分からなかった。

 ケイ郎は俺のベストを奪い、戦いを続けていたかもしれない。

 そうなればまだ分からなかった。

 全盛期からは劣るかもしれないが、衰えを感じさせないパフォーマンス。

 ……あいつは、それを維持するために、なんて努力をしてるんだ。

 

「だが……これで力関係ははっきりしたな」

「ええ……挑戦者はあちらです、私達は強気にいこうじゃないですか」

「あぁ……崩せるもんなら崩してみろってんだ」

 

 

───『超絶ストリーマーカップ夏の陣』スクリム1日目、第一試合結果

 

 

 チーム『大三元』順位……5位

 

 

ーーー

 

 

「あぁ……PERU、そっちはどうだ……おう……そうか、順調か、まあ、無理はすんなよ、お前には本業があるからな、主な仕事は俺が……ああ、任せとけ」

 

 落ちかけている夕日が見える。

 用事が終わった俺は、電話をしながら帰路に着いていた。

 着慣れないスーツは心地が悪く、一刻も早く家に帰りたい気分だ。

 

「ああ……それにしてもケイ郎様々だな……こんなに順調に話が進むのも、あいつのこれまでの継続した活動あってこそのものだ……あぁ……また連絡する」

 

 電話を切り、ポケットに仕舞う。

 ふと視線のようなものを感じ、辺りを見回す。

 1人の少年と視線がぶつかり、その顔を見て俺は首を傾げた。

 

「お前……どっかで……?」

 

 その黒髪クルクル天パ頭の少年は、俺の目の前に無言で来て、言った。

 

「貴方がMr.ヘラヘラクレス? ……ちょっと、お話があるんですけど」

「あんたは……」

 

 名前を尋ねると、少年は名乗る

 

「俺はREXという名前で、プロゲーマーやってる者です」

 




 【ロキ】の《悪戯者達の影隠れ[ヴァニティ・ハイド]》はレジェスクのベータ版では効果時間が1分とクッソ長く、【ルフ】のドローンにも引っかからないというイカれ仕様でした。
 正式版リリースにより効果時間が30秒にナーフされたものの、相変わらず猛威を奮ったためアプデの度に効果時間が減らされ、今の状態になりました。
 ちなみに次のアプデで再度ナーフが入り、足音が丸聞こえになるそうです。
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