追放アラサー元FPSプロゲーマーの俺に、Vtuber達からやたらコラボの誘いが来るようになるまでの話   作:山かけうどん

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3話:私、あなたのファンです

 配信予定時間になった俺は、ゆるりとゲームを起動し、配信ソフトの設定をする。ディスプレイ音量は……これくらいでいいかな。準備ができ、配信開始ボタンを押した。

 

「うす、じゃあ、今日もゆったりやってく」

 

 いつもと同じテンションで、いつもと同じ挨拶をした。

 

 しかし、ディスプレイに映し出されたゲームのタイトル画面はいつもと同じそれではなかった。

 

 流行りのゲームをプレイしろと視聴者にリクエストされた。

 

 ならば、このゲームが第一候補となるのは自然な流れだった。

 

 ゲームの名は「Legend Squad(レジェンド スクワッド)」……通称レジェスクである。

 

 レジェスクは、大きな一つの島を舞台にしたオンラインバトロワFPSだ。プレイヤーは他のプレイヤーと3人の部隊を組み、様々な特殊能力を持った兵士である「ヒーロー」を選択し、操り、勝利を目指す。

 

 勝利条件は最後の1部隊まで生き残り、チャンピオンとなること、ただそれだけだ。

 

 レジェスクは現在日本で最も人気なFPSで、他タイトルと比べアクティブユーザーが桁違いに多いタイトルであり、配信している人も多いし、配信を視聴している人も多い。

 

 やらない理由もないし無難にこれにした。それに俺、レジェスクはチームを追放された後の無気力期間にそれなりにやり込んでて、ランクは一番上の一個下だしちょっとくらいは上手いプレイができるだろう。

 

 よし、これならばあの常連さんにも満足してもらえるだろうし、新しい視聴者もきっと来るはずだ。

 

 ひょっとしたらこれをキッカケに、俺に気がついてくれる人も増えるかもしれないし、その人達の口コミで話題が話題を呼び、登録者もうなぎ上り……百人増え、千人増え無事収益化、さらに1万人の大台に乗り人気ストリーマーの1人に。

 

「なんて上手い話は流石に、ないだろうな」

 

 ああ、分かっている、俺は現実を見ているさ。

 

 ……まあ念のため、その時のイメージトレーニングと、1万人突破企画は何にするかだけは決めておくか。

 

ーーー

 

「……」

 

 20分経過……コメント一つ来なかった。

 

 いつも来てくれるあの常連さんは今日は来ないのだろうか。まあ、仕方ない、多分リアルが忙しいのだろう。俺は誰も視聴者が来ない間も、ひたすらゲームをプレイする。ああ、何だろうな、誰も来ない配信で、1人で黙々とプレイするのは結構精神的にくるものがある。

 

 できもしない1万人突破企画を考えていた自分が恥ずかしい、ヘッショしたい、自分で自分を。

 

 ……流行りのゲームに移行しても、以前とあまり変わらず、誰の気にも止められないのだろうか、いや、初日は誰にも認知されていないしこんなものか。心の中でそう言い訳をするが、孤独感は増すばかりだった。ああ、俺、配信向いてないかもしれん。

 

 今日はこのまま何もなければ、いつもより早い時間に配信終わろうかな───そんな思考をした時だった。

 

コメント:やっと見つけた〜!初見です

コメント:初見です、星猫から来ました

コメント:まじかwほんとに配信してんじゃんw

 

「……?」

 

 何だ?この人達。

 

 俺は視聴者数の表示を見る。普段ならば1〜3人の間を行き来していたその数字は、現在30を超えていた。その後も急激に増え続ける視聴者、俺は驚愕した。

 

「は?何でこんないきなり……」

 

 俺が疑問の声を出したと同時に、ゲーム内、同じチームにいる一人のプレイヤーのボイスチャット表示がオンになった。

 

「……ごめんなさい、私の視聴者が、そっちに流れ込んでないですか?」

 

 若い少女を思わせる声が聞こえた。

 

 ……どういうことだ? 私の視聴者? 彼女も配信者なのだろうか? それにその質問をしてくるということは、俺が配信していることを知っている?それにしても、普段日常生活ではまずお目にかかれないような、透き通った声をしていた。職業は声優か何かだろうか?

 

 立て続けに頭に疑問が浮かび、とても混乱してきたが、いったん冷静になれ……とりあえず、話しかけてきた声を無視するのはあまり良くないだろう、人間として。それに言葉の感じ、悪意もないみたいだし。俺はボイチャをオンにし、コンタクトを取る。

 

「えっと、どうも、質問の件に答えるんですけど、多分流れ込んできてますね、びっくりしました」

「……すいません、私のせいです」

「と言うと?」

「……はじめまして、私はVRiseという事務所に所属している、Vtuberの星猫(ほしねこ)らいと、という者です」

 

 なるほど、Vtuber。

 

 Vtuberとは、簡単に言ってしまえば、俺のような配信者にキャラクターの設定と動くアバターを付け足した存在である。キャラクターの事をガワとか、中の配信者の事を魂と言ったりするようだが、そこのところを俺は詳しくは理解していないので、これ以上話すことはやめておこう。

 

 して、星猫らいとさんか……Vtuberは今や星の数ほど存在し、その総数は軽く1万人を超えるという。今やそのレッドオーシャン具合は半端ではない。有名な人は俺でも数人知っているが……彼女のことはどうだったか。

 

 星猫らいと……VRise所属、ねえ。

 

 ん?……星猫らいと……VRise……所属?なんか……どっかで。

 

 瞬間、俺の脳裏によぎる、いつか見たネットニュースのVtuber特集。Vtuber登録者ランキングを何気なく眺めていた俺は、とある人物の紹介文に目を留めた。

 

 ───へえ、今時はFPSをガチでやってる女の子もいるんだ、時代だなあ。

 

 第8位、VRise所属、ゲーマーで、特にFPSが得意な、気まぐれ系白髪猫耳Vtuber、確か名前は。

 

「ほ、星猫……らいと?」

「……あの、私の名前をいきなり呼び捨てにして、どうしたんですか?」

「え、あ、その、すいません、はじめまして」

 

 鈍器で後頭部を殴られたかのようなショックだった。

 

 レジェスクはソロでやる場合、ランダムな2人のプレイヤーとチームを組まされることになる。

 

 ああ、大人気Vtuberと、たまたまレジェスクでマッチング、なんて、こんな事あるのか。相手が有名人と知った途端、緊張で手に汗が滲んできた。おい、落ち着け俺。

 

 とりあえず、まずは失礼の無いようにしなければ。彼女のファンを不快にさせないよう、発言する言葉一つ一つに気をつけよう。そんな感じで状況を飲み込みつつあった俺を彼女は、次に続く一言でさらなる混沌へと突き落としてきた。

 

「……それで事の経緯なんですが、わたし、ケイ郎さんのファンなんです」

「はいはいなるほど、そういうことですか……ってはぁ!?」

 

 あまりにも淡々と、まるでそれが当然であるが如く飛び出した言葉に、反応するタイミングが一瞬遅れノリツッコミみたいになってしまった。

 

「それで、あなたとマッチングした時に少し過剰に反応してしまって……気がついた時にはこんなことに、すいません」

 

 申し訳なさそうな声で謝る星猫さん。一方、俺は混乱した頭がさらに混乱し、いまにも爆発寸前である。

 

 状況はわかった。星猫さんは、俺と同じチームにマッチングし、おそらく俺のことを自分の配信で話題に出したのだ、そして興味を持った一部の視聴者がこちらの枠に流れ込んできた。ネット配信というコンテンツを少し知っていれば理解できるであろう、さして珍しくも無い、自然な現象の当事者に俺はなったのだ

 

 だけど、前提条件がおかしい、今、この人なんて言ったんだ?俺のファン?今をときめく大人気Vtuberの星猫らいとが?

 

 いや、あり得ないだろ、だって俺だぞ?力不足でチームを追放されて無職、気がつけばアラサーの独身で、10年前に発売されたオワコンゲーにいまだに縋り付いていて、誰得な配信を垂れ流す過疎配信者だぞ?

 

 先程まで孤独感に苛まれていた俺は、負の感情を次々と脳裏に浮かべてしまう。駄目だな、せめて表に出さないようにしなければ。

 

「あはは、えっと……別に怒ってないんで気にしないでください、むしろ配信に人が来てくれて嬉しいですよ、あまりにも誰も来ないんで、1人も来ないならもう枠閉じようと思ってたし……ずっと無言でしたし……まあ、当たり前ですよね、俺みたいなくたびれたおじさんを見にきてくれる人なんて、普通に考えたら1人もいないってことくらいすぐ分かれよって話です」

「……えっと」

「俺も星猫さんみたいに華があればいいのにな……なんて……はは」

 

 ……いやキモすぎだろ俺、唐突な自分語り、自虐、歳を自分の限界の理由にする。

 

 若い頃の自分が今の俺を見たら、間違いなく嫌悪するだろう。そう思うと、ため息が溢れた。

 

 見てるか? 老害には絶対にならないと誓っていた10年前の俺、俺も立派な老害スリーコンボを若者に叩き込める様になったぞ、一ミリも嬉しくないがな。

 

 ……てか、いろいろ混乱して忘れていたが今は配信中だったな。まあ、十中八九炎上だろう。

 

 視聴者視点からしてこのやりとり、見ていて面白いものでも無い、というか不快に思う人の方が圧倒的に多いだろう。

 

 彼女にも不快感を与えてしまっただろうし、これを機にこれから俺の悪名は世に広まり、人気ストリーマーになるどころか、普通の配信さえままならなくなってしまうのだろうか。せっかく、楽しいと思える様になってきたところだったんだがな。

 

 ……しかし次の瞬間、彼女は俺のネガティブな予想とは裏腹に少し嬉しそうな声で話し出した。

 

「……華がある……その言葉、ほめ言葉ってことでいいんですよね」

「え……ま、まあ一応?」

「……質問があります」

「……え、なんですか」

「……私のこと、好きですか?」

「え?ええ!?」

 

 動揺し体が動く。座っていた椅子が、床とこすれ、ガタッと音を鳴らした。

 

「……すいません、質問があまりよくなかったです、私の事どう思ってるか知りたくて」

「……どう思っているか?」

「……具体的に言うと、私の事を推せるのか推せないのか、それとも推しているのか」

「……え、は!?」

「……他に推している人がいるのなら、それを正直に答えていただいて構わないです、私には気を遣わずに」

 

 彼女の質問の意図がわからない。なんでそんなことを俺に?

 

 ……てか何だその質問、クッソ答え辛えんだが。

 

 俯瞰して考えよう。

 

 俺が推せるor推してるって言ったとすればどうだろか。まあまず、彼女は喜ぶと仮定しておこう。しかし、視聴者視点から見た時はどうだろうか、推しが知らん男から好意を伝えられ喜んでいるのは少し不味いのではないだろうか、そうでなくとも俺と彼女は過疎配信者と人気配信者という立場だ、この構図で彼女に媚びる様な発言をするのは、数字の為のすり寄りと捉えられてもおかしくない、不快感を示す視聴者は多いだろう。ならば先に待ち受けるのは炎上である、却下。

 

 反対に推せませんと答えたらどうなるのだろうか、彼女は当然残念がるだろう。さらに視聴者視点、自分の推しが残念そうにしているという様子が眼前に映し出されているわけで、その残念そうにしている原因を作ったのは俺なので、当然俺が責められるわけだ。さらに俺が推せないと彼女を否定すると言うことは視聴者たちの趣味趣向を間接的に否定するということなので「なんでこんなの推してんのお前ら?」という具合に曲解される可能性も無きにしも非ず、そうなった場合、最悪人格否定と捉えられてもおかしくない。ならば先に待ち受けるのは炎上である、却下。

 

 他に推しがいますと答えたらどうなるだろうか、彼女は正直どんな反応をしてくるか分からないがとりあえず残念そうにはするのではないだろうか、そして名前を聞いてくるのだろう、誰を推しているんですかと、なんで推しているんですかと。名前であれば有名な人を数名知っているのでそれを述べればいいがそれだけだ、なんで推しているんですかと理由を聞かれた時に必ずボロが出るだろう。結果、彼女は俺に対して不信感を持つのだ、視聴者も同様の反応になると考える。ならば先に待ち受けるのは炎上である、よって却下。

 

 なんということだ、相手から提示された全ての選択肢が詰んでいる。絶望だ。

 

 ゲーマーとしては直前のセーブデータからやり直したい気分だが、そうもいかないのだ、これは現実なのだから。

 

 諦めることはできない、突破口を見つけろ、思考を止めてはいけない。

 

 そんな時、ふと気がつく。なるほど、と。

 

 たしかに、これが1人プレイ専用RPGの様な、プログラムによって提示された選択肢しか選べないものであれば、どうしようもなかっただろう。

 

 しかし相手は人間だ、プログラムではない。

 

 ならば、こちらからの選択の押し付けも可能なのだ。

 

 そう、例えるならば1対1の対人ゲーである、FPS的に言えば1on1の対面。

 

 俺はここに突破口を見出した。

 

 人数差の有利不利が非常に大きいFPSというゲームジャンルにおいて、1on1になった時は勝って当然で、打ち負ければ戦犯扱いされる。失敗の許されない非常に重要な局面。

 

 実を言うとこれは俺の十八番なのだ、これまで何回、俺が1on1で相手を屠ってきたと思っている。

 

 そんな局面で必ず勝てるからこそ、俺はプロゲーマーなのだ、元だけど。

 

 よし、落ち着け、今までと同じ、射線は1つだ、そこに集中しろ。

 

 ……一見すると、押しつけられた選択肢がすべて詰んでいる様に見えるこの質問。その1つ1つを見直し、改善案がないか脳内議論する。これまでの常識を常に疑い、もっといい方法はないか思考を回し続ける。

 

 常人から価値がないと揶揄される様な何千何万の無駄な足掻き、そこから生まれる細い成果の糸を手繰り寄せ、そしていつか、誰も気がつかなかった勝利へのルートに辿り着く。

 

 無駄を積み上げ限界と思われていた事を凌駕する、限界を打ち破る、結論を塗り替える。

 

 それこそが、俺のプロゲーマーとしての在り方だったはずだ。

 

 抱いた決意のもと、俺は脳を回し続ける。

 

 そして到達した。

 

 たった1つのシンプルな返答。

 

 それこそがこれだ。

 

「いやあの、推す推さない以前に、知ってるだけでそもそもあまりVtuberについては詳しくないです……」

「……そうですか」

 

 選択肢の回答拒否、逃げの一択である、これが俺の結論だ。

 

 選択肢を与えられた時、必ず選択をしなければならないという道理は存在しない。沈黙しても、逃げてもいい。

 

 つまり、俺は今、選択せず逃げという行為をとった。

 

 相手に行動を押し付けた、という解釈もできる。

 

 そしてその結果、この窮地を打破したのだ!!

 

 ……すまん、つらつらといかにも凄いことをしているかのように語ってきたが、要するにキョドって解答を拒否しただけである。

 

 もっとうまい返しとかできたんだろうが、自分の度胸の無さにおじさん泣いちゃった。

 

 言い訳じゃないけど、だってさあ、今のご時世、セクハラだとか何だとかで厳しいしさ、おじさんが若い女の子と会話する時は発言に気をつけなければ、いつ訴えられるか分からないじゃん?

 

 ましてやそれを大人気Vtuberの配信という、何千人見ているのかわからない大衆の面前で行うのだから、言葉の一言一句を慎重に選ばなければ、待ち受けるのは死じゃんか。

 

 こんな形で死にとうないんだ俺。

 

 ……ま、まあ、気を取り直して、どうやら穏便に場を収める事ができたようだ。うん、下手なこと言わなくてよかった、やっぱり普通の解答が一番だな。

 

 世界大会の決勝より緊張したわまじで。

 

 そんなことを考えていると、ゲームの方に進展があった。

 

「……ケイ郎さん、敵ですよ」

「敵ですね……どうします?」

「……戦いましょう、私、戦うの好きなんです」

 

ーーー

 

「よっしゃ、ナイス! ありがとうございました!」

 

 歓喜の声を上げる。いやあ、今回の試合はマジで白熱したな。個人的にもうまくプレイできた気がするし、チーム全員上手かった。

 

 コメントもどうやら盛り上がっている。

 

コメント:チーターあんな倒し方するってってやばくないか

コメント:ケイ郎さんこれでプロ引退してるってまじ?

コメント:なんだこのおっさん、星猫のスナイプしてやっと同じマッチ入れたからハイドしてたのに、なんかよく分からんうちに殺されたんだが、ふざけんなよ

 

 なんか道中に出てきたチーターの事が話題になっているようだ……ええ、そんな話題にする?最近は上のランク帯のマッチだと毎回見かけるし、チーターを倒すプロの動画なんて数百とあるし、そんな珍しくもないだろう、あいつら厄介だけど、やってみたら意外と簡単だぞ狩るの、チーター特有の動きは読みやすいし、オートエイムにも抜け道はある、逆に弱点がはっきりしているから、そこを突くことだけ考えればいいので、むしろ普通の猛者プレイヤーよりも対処しやすいまであるぞ。

 

 てか、そもそもの話、なんでランクマッチに毎回チーターいるんだよ、どうなってんだよレジェスク運営。

 

 ……あと、スナイプはやめようなコメントのお前。通報しとくぞ。

 

「……やった、チャンピオンですね」

 

 彼女の声で我に帰り、ゲームで熱くなっていた我を取り戻した。

 

「……って、すいません、ちょっとプレイ中、テンションおかしかったですね、俺」

「……気にして無いですよ、それにしても、ケイ郎さん、レジェスクも上手いんですね」

「はは、違うゲームとはいえ、プロゲーマーやってましたから、これくらいは」

「……エクスタですよね? 去年の日韓合同大会も見てました、ケイ郎さんが試合に出たのは、最後のラウンドだけでしたけど」

「いやあ、お恥ずかしい……というか、ほんとに詳しいんですね」

「……さっきも言ったじゃ無いですか、私、あなたのファンです」

 

 ……本当なのだろうか。俺がトップ選手として活躍していたのは7〜8年も昔になる。もう、誰も覚えてくれていないと思っていた。

 でも、彼女が本当に俺のファンなのだとしたら、それはとても嬉しいことだ。

 

 部隊を解散すれば、俺たちはまた別々の、あるべき立場へと戻っていくだろう、もう、こうして話すことも二度とない。

 

 ならば、言っておくべきだ。

 

「ええと、ありがとうございます、星猫さん、俺のファンでいてくれて」

 

 俺は素直に、感謝の言葉を伝えた。彼女の声が、微かに震える音がした。

 

「……っ」

 

 ああ、終わってみれば奇跡のような時間だったな。俺にも応援してくれている人が居るんだと、発見できた。これで明日からも頑張れるだろう。

 

 ……何だかむず痒い雰囲気になってきたので、そろそろ退散するか。

 

「それじゃあ、これからも配信頑張ってくださいね、さよなら」

 

 俺がそう言うと、彼女も口を開く。

 

「……あの、ケイ郎さん、最後に1つ」

「……?」

「……ケイ郎さんはさっき、くたびれたおじさんなんて1人も見にこないって言ってましたよね」

「はい」

「……私はそんな事ないと思います、どんなに少なくても、1人はいると思いますよ、多分」

 

 その言葉で、たった1人の常連のことを思い出す。

 

「そうですね……いました、そういえば」

 

 そうだ、俺にはあの人がいるじゃないか、今日は来てくれなかったが、俺にレジェスク配信のきっかけを作ったあの人。

 俺がこの1ヶ月間、配信を続けてこれた理由が。

 まったく、今度謝らないとな、あの人に。

 

「なんか大切なこと、色々学べた気がします、ありがとうございました、それじゃあ改めて、もう多分一緒にやる機会とかないと思いますが、お互い配信頑張りましょうね、さようなら」

「それじゃあ、言いたいことは言えたので失礼します、それじゃあまた明日、私と一緒にやりましょう……では」

 

 俺の元にフレンド申請が届く。そして彼女は、満足そうに去っていった。

 

 よし、じゃあ気を取り直して俺も配信の続きをがんばるか……って、あれ?

 

 ……なんか、最後会話噛み合ってなくなかったか?

 

 ……???

 

 あの人、別れる流れで、また明日一緒にやりましょうとか言ってなかったか? しかも、なんかフレンド申請きたし、まじでやる気なのか!?

 

 てか、それってコラボをするってことになるのか!? どういうことなんだ!?

 

 ええ?んん?

 

 まあ……なるようになるか。

 

 俺の頭は思考を放棄したのだった。




おまけ〜作者の一言〜
 元プロゲーマーとVtuberの会話に挟まることになってしまった一般野良君の事を思うと夜も眠れません。
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