追放アラサー元FPSプロゲーマーの俺に、Vtuber達からやたらコラボの誘いが来るようになるまでの話   作:山かけうどん

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4話:星猫らいとは言葉が足らない

 次の日、星猫さんから、ゲーム内のチャットで配信の段取りに関しての連絡がきた、なぜか当然の如くコラボする流れになっていて、断ろうにも断りきれない空気が星猫さんにも星猫さんの視聴者の間にも形成されていた。そして配信で使う通話アプリとかをパソコンに入れさせられ、連絡先を交換した。

 

 何?ディ○コードって、チー○スピークでいいだろ、チー○スピークで。

 

 現在準備を終え、待つだけの状態となっていた俺と星猫さんは、配信予定時間のだいぶ前からボイスチャットのグループに参加し時を待っていた。

 

 あー、まじでやるんだなぁ。

 

 落ち着かない様子でいると、星猫さんが話しかけてきた。

 

「ケイ郎さん、緊張してます?」

「はい」

「……ケイ郎さんも、緊張とかするんですね」

「そりゃしますよ、昨日とか、あんなに俺の配信に人が来たのは初めてでしたし」

「……大勢の人に注目されるのは初めてじゃないでしょう?」

「……プロゲーマーの時は、最終的に対戦相手のことだけ見てればよかったんです、配信者として視聴者の前に立つのは、それこそ本質からして違いますよ」

 

 正直、さっきから少し震えている。心の準備ができていないというのが本音だ。昨日は不意をつかれた形だったのでなんとかなったが、こうやって開始時間を静かに待っていると、否が応でも意識させられる、大勢の前に立つことの怖さを。

 

「……そういうものなんですね、すいません、軽い気持ちで誘ってしまって」

 

 ほんとだよ!! ……などと心の中で思ったが、それを口に出すほど子供ではなかった。まあ……客観的に見ると、このコラボは俺にとってメリットでしかないしな。

 

 何しろこちとら知名度ゼロで、コラボ相手は超大手。今まで大した注目を浴びてこなかった俺が、注目を浴びる機会を得ることになった訳なのだ。注目を浴びるということは、俺の視聴者を獲得する機会が増えるということであり、視聴者を獲得するということは、配信で食っていくという目標に繋がる。俺としては願ったり叶ったりだ。

 

「いえ、誘ってもらえて嬉しかったです」

 

 だから俺は感謝の言葉を述べた……だが、少し気になるのは、星猫さんのメリットが皆無であるということだ。俺が彼女に与えられる数字的な恩恵は0なのだ、まじで、何で俺を誘ってくれたんだろうか。聞いてみる。

 

「それにしても、何で俺なんかとコラボを?」

「……昨日から言ってますけど、ファンだから、です」

 

 ……ええ、そんな理由で? いや、一応納得できる理由ではあるけど。超人気Vtuberである彼女、星猫らいとが俺のファンであるというこの事実を、俺は未だ実感できていない。

 

 ……てか、何度もこうやって俺のファンってことを直球で言われると、悪い気はしないが、正直照れるし居心地が悪い。

 

「ん、お、おう、そうですか、ありがとう」

 

 なんか、ぎこちない返しになってしまった。

 

「やっぱり、相当緊張してますよね?」

 

 俺のぎこちない返しが災いし、あらぬ心配をかけてしまったようだ。

 星猫さんは、次に続く言葉を意を決したように言った。

 

「あの、提案があるんです」

「何ですか?」

 

「……これから、私のことだけ見ていてください」

 

「はあ!?」

 

 何だってんだ一体!?続く言葉で、俺は彼女の言葉の意味を理解した。

 

「プロゲーマーの時は、相手だけを見ていたから緊張しなかったんですよね?」

 

 あ、ああ、そういうことね。 つまり彼女が言いたいのは、緊張したら、配信や視聴者のことを一旦忘れ、自分との会話に集中しろ、プロゲーマーであった時、対戦相手のことだけを見ていた時のように……ってことか。

 

 ああ、びっくりした、いや、誰でもいきなりこんなこと言われたらびっくりするだろ普通。言葉足らずがすぎるだろうが。

 星猫らいと、恐るべしである。

 

「確かに、いい提案ですね、そうします」

「……褒められた」

 

 まあ、提案自体は、なかなかいいものだったので、乗ることにしよう。何だか緊張も解れてきたし、いける気がしてきたぞ。

 

「……言い忘れてたんですけど、私には敬語使わなくていいですから」

「え? いや、そういう訳には……」

「……ケイ郎さん、お互いタメ語じゃだめ、かな?」

 

 急展開で俺はむせる、前言撤回、やっぱ無理な気がしてきた。

 

 いや距離感!!

 

 てか……昨日から思ってたけど、言葉足らずな発言は抜きにしても、やたらこの子ぐいぐいくるな。視聴者からはコミュ障って言われてたけど……なるほどこういうタイプのコミュ障か。まあ、問題ないだろう、イレギュラーへの対処には一日の長がある。プロゲーマー時代、チーム内ではそういう役割を長年任されていたからな。

 

「いや、いいけど……距離縮めるの早すぎだろ」

「……そうかな、ふつうじゃん?」

「あのな……こっちの立場ってものも考えてくれよ……」

「……わかった、り」

「え……なんだよその『り』って」

「了解ってこと」

 

 ええ……いくらなんでも短縮しすぎじゃね?若者の言葉マジわからん。Z世代って奴なのか、これが。

 

 ……しばらく話してみたが、タメ語で話していると妙にしっくりくる感じがした。この感覚、どこかで感じた気がするが気のせいだろうか。思い出そうとするが、思い出せなかったので今は無視することにする。彼女の視聴者の反応が気になったが、まあ、年上が年下にタメ口で接するのは世間では普通だし、受け入れてくれるだろう。

 

「……そろそろ、かな」

 

 星猫が呟いた。どうしたのだろうか、配信予定時刻までにはまだ少々時間があるが。

 

「なんか待ってるのか?」

「……うん、もうすぐ予備校から帰ってくると思うんだけど」

「ん? 誰か、追加で人が来るのか? というか、予備校?」

「……私の親友で同級生のVtuberの娘が追加で来るって、あれ、言ってなかった?」

「いや、何もかも初耳だな」

 

 俺は詳しく話を聞いた。どうやら星猫と、今から来るVtuberの二人は現役女子高校生らしい、まじかよ。リアル高校生って……ちゃんとした未成年じゃねえか。まじかよ、星猫は普通に大学生くらいかと思ってたぞ。

 

 じゃあなんだ? 俺はこれから、JK2人とのゲームの風景を全世界に配信するってコト? それって……どうなんだ?

 

 冷静に分析しよう、おじさんとJK。しかも俺はただのおじさんではない、無職のおじさんである。つまりは無職のおじさんとJKという、この世で最も組み合わせてはいけない危ない要素が悪魔合体し、彼女たちの配信を楽しみにしている視聴者の前にお出しされるというわけだ。

 

 ……おい、まじで大丈夫なのか? 人によってはこれ、ミシュランの三つ星高級レストラン行ったらコース料理にゴキブリ入ってたレベルの騒ぎだぞ。

 

 その時、ピコン、という電子音が聞こえた。通話グループに誰かが入った時の通知音だ。

 

 ガタゴトという生活音をマイクがガンガン拾っている。

 大丈夫なのだろうかという不安を抱く俺。

 次の瞬間、大声が突如として鼓膜に響いた。

 

「らいちゃあぁぁぁぁぁぁぁ〜ん!!」

 

 うるせええええええ!?……と叫び出したい気分だったが、なんとか口をつぐんだ。彼女が、星猫の言っていた人物なのだろうか。

 

「予備校辛かったから、甘やかして欲しいなぁ……ばぶばぶぅ」

 

 うわぁ……だとしたら。相当危険な予感がする。

 

「……ひかりちゃん、初対面の人がいるんだから、やめなよ」

 

 だが、うだうだ言ってもいられない、当たって砕けろだ。

 とりあえず、挨拶しよう!大事だしな!

 

「よろしくお願いします、ケイ郎です」

「ばぶ……?」

 

 うまくやっていけるだろうか。

 いや、きっと大丈夫だ、これまでの人生、幾つもの修羅場をくぐり抜けてきたじゃないか。

 俺は神に祈った……なんとかなあれ!!

 

ーーー

 

 配信が始まり、1時間が経過した。

 

 結論、何とかならなかった。ああ、俺はもう人生おしまいなんだ。素直にそう思った。いっぱいいっぱいだった。

 

 何故かって?

 

 俺の胃を破壊するVtuberが、はえて来たからだ。

 

「らいちゃんはずっと前からケイ郎さんのファン=好きってことでいいんだよね? で、ケイ郎さんは、らいちゃんのことだけ見てる、つまり好きってことでしょ? いや〜!相思相愛じゃ〜ん!2人とも付き合っちゃえば〜?」

 

 ああ、星猫とコラボするだけならまだ、耐えられたかもしれないのに。いや、その言い方には語弊があるな、正しくは、星猫()とコラボするだけなら、だ。

 

「星猫()、まじでやめてくれ、ガチ恋勢に殺されるから」

 

 ああ、直前まで1対1のコラボだと思い込んでいた俺を呪いたい。こんなことなら、来るべきではなかったのだ!!

 

 この日、俺は思い知った。現実では親友でありながら、Vtuberとしては姉妹である、()()()()の恐ろしさを。

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