追放アラサー元FPSプロゲーマーの俺に、Vtuber達からやたらコラボの誘いが来るようになるまでの話 作:山かけうどん
「クソッ……井赤の野郎……ケイ郎先生を追放するなんて……」
「ああ……こんな事になってるなんてな」
俺1人であれば、まだ百歩譲って良かったかもしれない。だけど、話によるとチームのメンバーは俺が脱退してから半年間、右肩下がりに減り続けているらしい……井赤への不満も募っている、こうなると話は別だ。希望を持って仲間になってくれた彼らの意思が歪められ利用されているなんて、こんな事あってはならない。
「Hekto、この事は俺たちだけの秘密だ」
「……そんなの、必要ないですよ、今すぐ俺、皆んなに話して全員で脱退を」
「だめだ、契約の中途解約は客観的に見て信用を無くす行為だ、二度とプロに戻れなくなるかもしれない」
「でも、理由が理由ですよ」
「確かにな……でも、今分かっている中で、あいつが実際にやった事で明確に非を責められる事柄は限られる、俺を辞めさせた件も形式上は正当な理由で、契約の終了に関してもなんの問題もない、他にこれといった事は、俺たちに虚偽の情報を流した程度だ、そしてそれを告発しようにも俺たちの正当性を示す証拠も不十分。問題を起こしたところで軽い謝罪で終わり、特にダメージもなく終わるのがオチだろう。」
そういえば、1年間のプロ契約はつい半年前に切り替わったばかりだし、もしかしたら仲間にもしこの事実がバレたとしても、契約期間内は無理やり良いように使おうという腹なのかもしれない、ならばきっと、裁判沙汰になった時のことも色々と考えているのだろう、だとしたらこの事実を知っている人間は最小限な方がいい、あいつのバックには業界へのパイプやコネがある、下手に動けば感づかれ、何か手を打たれるかもしれない。
「じゃあどうしたら……」
Hektoの俯いた声に、意を決して俺は言った。
「俺が何とかする、お前は心配しなくて良い」
「……ケイ郎先生、やっぱり俺、あなたの事、神って呼んだ方が」
「神はやめろ、せめて先生だ、とりあえず、もし何か動きがあったら俺に伝えてくれ」
話もまとまったことだし、電話を切ろうとする。
そんな俺のことを察したのだろう、彼は口を挟んできた。
「……話はまだ終わってませんよ、配信での態度、あれはどういうことなんですか」
チッ……覚えていやがったのか、なんとか丸く収まる展開だっただろ今。
心の中で舌打ちする。
「確かに、あなたがどん底に追い込まれていたというのは承知しています、だけど……俺は憧れのあなたが一回り歳の離れているであろう女性二人にタジタジになる姿や、コメント欄の小学生が考えたような弄りにキレる姿なんて見たくなかった……この半年間で、変わってしまったんですか!!」
「Hekto……」
「すいません……こんなのわがままですよね、俺の」
でも、あれが本当の俺なんだよな……言おうと思っても、コーチになったきっかけであるあの時と同じく言い出せなかった。彼の尊敬の眼差しは、俺の判断を歪める。
「Hekto……俺が本気で心の底から、あの二人にああいう態度をとっていると思っているのか?」
「……どういうことですか?」
「……まだわからないか、俺の教えを思い出すんだ」
沈黙するHekto、どうやら何か考えているらしい、ちなみに俺は何も考えてなかった。
「ッ……そういうことですか」
「ようやく"理解"したようだな」
「“迷う量を増やし、可能性を模索する、そのために、常に遊びを忘れるな”……あなたは試合中でも練習中でも、80%の力しか出さない、余力を意図的に作り、20%の意識を遊び……即ち実験に費やす、いつか来る、全力を費やさなければならない瞬間に備えて」
「そういうことだ、つまり俺はあの時……」
「”遊んでいた”ということですか」
「正解だ……俺はプロゲーマーからストリーマーへと活動するフィールドを変えた、ならば新しい攻略法が必要だろ?そのために色々と試行錯誤していたんだ」
「……じゃあ、あなたは」
「俺はあの時のままだ、変わってなどいない、今の俺が本当の俺だ」
「そうか……あの配信の時の先生は……“100%遊びの姿”だったのか!!」
いや“100%遊びの姿”ってなんだよ……俺の素の姿がそんな風に見えたのかHekto、なんかちょっとショック。
「遊びの意識をその領域にまで押し上げることができるなんて、やっぱりすごいな先生は、俺はどうしても雑念が入り込んでしまうので、絶対に到達できないですよ」
「物事に絶対などない……お前も励むんだ、Hekto」
「そうですね、先生……俺、頑張ってみます」
「納得したようだし切るぞ、じゃあな」
……今度こそ電話を切った。肩にずっしりと重りをつけられたような感覚に陥り、思わずため息をつく。
……ああ、またやっちまった、あいつを前にするといつもこうだ。いつ本当のことが言えるんだろうか。
それに、井赤の件も気がかりだ。
……教え子の手前、何とかする、とは言ったが、具体的な方法はまだ浮かんでいない………まいったな、こりゃ。
とりあえず今日は疲れたから寝よう、なんか色々あったな今日は……星猫姉妹とのコラボに、Hektoの突然の電話、井赤の策略……考えるだけで倒れそうだ。
俺はベッドにスマホをぽい、と軽く投げると、洗面台に向かうのだった。
ーーー
【VRise】配信者を語るスレpartXXX
1:名無しさん ID:2ghGbPky1
なんだあいつ!?あのおじさんは何なんだ!?
2:名無しさん ID:v18Jr77R9
ゲーム詳しくないけど星猫姉妹推しだから見てたら、なんかはえてきて萎えた
3:名無しさん ID:p2/TrfxWx
お前らケイ郎しらんの?古くからFPS界隈を支えてきた重鎮だぞ
4:名無しさん ID:3nMnDWIHp
重鎮だろうがなんだろうが、ねぇ
5:名無しさん ID:9m26WFTa2
今は無職なんでしょ?チーム脱退したとかなんとかで
6:名無しさん ID:ehiCrGniz
そうなんだよなあ、しかも脱退理由とか公になってないのよね
7:名無しさん ID:mkYzfedor
プロゲーマーって割とそういうの多いよな
8:名無しさん ID:k9MTwxsDu
なんか、そこら辺きっちり整備されてないイメージ、チーム側も選手も
9:名無しさん ID:DU65+2cO7
選手といえばこの前も差別発言でクビになったプロゲーマーいたな
10:名無しさん ID:j6MZQTDB8
FPS界隈って、暴言のイメージしかない、あと民度が低い
11:名無しさん ID:xUrSpue8x
まあ、プロにもそのノリ持ち込んでるんだろうな、強さこそすべてって感じで
12:名無しさん ID:YHvMNe7w2
仮にもプロって名乗るんだったら、形だけでも良いから色んなところに敬意を払うべきだよな、企業もスポンサーについてるんだし
13:名無しさん ID:1yX6cvoW/
そのケイなんちゃらっておじさんもヤバいやつなんじゃないの?
14:名無しさん ID:EyIJ5qjl5
そういえば、一時期チーター疑惑かけられてたよな
15:名無しさん ID:Bm54M8FMf
そうだったな、エクスタ運営が自宅検証までしたらしいよ
16:名無しさん ID:MLobuc/oI
ほらな、問題起こしとる
17:名無しさん ID:MaTylP/jm
いや、結果シロで問題にはならなかったよ、当時彼は疑惑が晴れて安心した勢いで、自宅にきたエクスタ運営の社員にちょうど手元にあったたけのこの里を振る舞ったらしい、ちなみに社員はキノコ派
18:名無しさん ID:fZ5pWbaKZ
やっぱ、問題起こしてるじゃねえか!!
19:名無しさん ID:D9NS4s47q
大人が集まって何やってんだ
20:名無しさん ID:JqiwBAT5C
星猫姉妹との絡み俺は普通に面白かった、年齢離れてるし、親戚のおじさんがからかわれてる感があってよかった
21:名無しさん ID:wGhgVGNBZ
相性いいよな
22:名無しさん ID:3DKT/HUB8
いや、でも男だぞ、しかも、姉妹の間に挟まる男だぞ?
23:名無しさん ID:OcVqiCyES
姉妹は楽しそうにしてたけどな
24:名無しさん ID:YoOBBSF0I
推しの幸せ=俺の幸せ
25:名無しさん ID:GkyG1mR03
でっけぇおめぇ!!
26:名無しさん ID:KVbBEv5pC
お前みたいな奴ばっかじゃねえんだよ、男なんていらんだろ
27:名無しさん ID:QuqVbUiQs
お前どこ住んでんだよ、奈良の鹿か?
28:名無しさん ID:9mkKdZ5qp
まぁ、賛否両論ってことで
29: ID:eahPSR6vC
話戻るけどケイ郎は界隈の風潮については問題視してた感じあるよ、結構注意喚起してたし、実際一瞬だけどそのおかげでエクスタの民度めっちゃ良い時あったしね。
30: ID:OpV1LmPlZ
普通にすごくねそれ
31: ID:NRybb3vSH
まあ、日本人で初めてメジャーなFPSタイトルの世界大会優勝してるからまじのレジェンド。
32: ID:MawN4jkHu
メジャーなFPSって、どこからがメジャーなん?
33: ID:nwZiF+tfG
言語化が難しいねん、触れるなや、肌感覚でわかるやろ。
34: ID:dXXNmqhH8
今ググってみたんだけど、彼らがプレイしていたエクスタってゲームは3人でやるゲームなんだな、そう考えると、他のチームメイトの奴らもレジェンドだよな
35: ID:9ON2poRho
あいつらは伝説の3人組だよ、当時FPS触ってた奴で知らない奴いないと思う
36: ID:Ox2z0oaMp
今の日本のFPSのプロゲーマーはみんな影響受けてるだろ
37: ID:ssFCq4CJG
ヘラヘラクレスって奴と、PERUって奴だろ? 今どうしてるんだ?
38: ID:UjZq+lqli
ああ、それは───
ーーー
───その日、夢を見た。
いつかの栄光の再上映、俺の両脇には、常にあの2人の姿があった。
俺達は頂きへ至った。
これが本当に映画ならハッピーエンド、スタッフロールが流れ、あのタイミングで物語は幕を閉じていただろう。
登場人物たちは収まるべき場所に収まり、スタッフロールでその後もそれとなく成功している事が示唆されていただろう。
だけど、そうはならなかった、ならなかったんだ。
夢の後には現実が地続きに存在している。
そんな当たり前のことに、俺は気がつかなかった。