銀河英雄伝説~流血と硝煙と運命の日々~   作:雪の師走

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嘗ての上官

宇宙歴783年 テルヌーゼン

 

シェーンコップをリビングに案内する。

「適当に座っていてくれ。酒を持ってくる。」

「ありがとうございます。」

シェーンコップの声を背に受けながらキッチンに向かう。キャビンからバーボンを取り出しグラスに氷を入れて持っていった。

「それでどれくらいで準備は整うんだ?」

「2日頂ければ各所に配置は完了する手筈は整えています。前以て移動すればバレる可能性があるので直前に配置する形にしています。」

「分かった、それならいい。今から連絡しよう。」

立ち上がり携帯の通信端末を持ってくる。

「リンチ大佐は動いてくれますかな?」

「分からん。だが彼は基本善人でしっかりとした証拠と動く理由、命令があれば動くさ。多分ね。」

「期待しておきますよ、閣下。」

肩を竦めて笑うシェーンコップに一瞬視線をやってからリンチ大佐に連絡を入れた。1分程出るのに時間がかかったが出てくれた。自室のようだ。恐らく移動してくれたのだろう。

「クーロ准将、お久し振りです。また昇進なされたようでお祝い申し上げます。」

画面越しに頭を下げられた。嘗ての部下が直属ではないが上官になっている。面白くないはずなのに階級を守り、此方に対して敬語を使っている。本当に出来た人だと思った。

「ありがとうございます。運が味方してくれたようで。」

「運じゃない。君の実力は私もよく知っている。それで連絡をしてきた件は。」

リンチ大佐が口にしようとしたので手を画面に向けて言葉を止めた。

「はい、例の件です。私から紙を送るのでそちらで手配して下さい。責任者は私なので。」

リンチ大佐は一瞬怪訝な顔をしたが察してくれたようで1つ大きく頷いた。

「分かった。しかし文句は無しにしてくれよ。こういったことは初めてで不馴れなんだ。」

「分かりました。適当にしなければ何も言いませんよ。宜しくお願いします。」

「承知した。では、また会える日を。」

敬礼をして通信が切られた。

シェーンコップに視線を向けながら笑った。

「何とかなりそうです。君が着いたら作戦開始だ。」

「そのようですな。しかし一言もそれらしい事を話しませんでしたが、よく意思疎通を取れましたな。」

「彼は有能だよ。特別数は多くないが知り合いの中では能力が安定しているよ。」

「それにこの部屋に盗聴器はないが通信は監視されてる形跡があってね。常に用心しているのさ。面白くない事実だが。」

一瞬目をパチクリさせて笑い出した。

「ハハハハハハッ、要注意人物ということですか。大変ですな。」

「仕方ないと諦めてるよ。いつか情報部に行って、そういった技術を学び、何も心配のない生活を送る事が出来る事を願っている。」

そう言って溜め息を吐いた。

「そういえばシェーンコップ、ジェシカに話しかけていたが口説いていたのか?」

「閣下、私は意中の相手がいる人を口説くなんて無粋な真似はしませんよ。ちょっとしたアドバイスをね、してあげたんですよ。」

「あまり年下をからかうなよ。俺達ほど擦れてないんだからな。」

私の注意を肩を竦めて笑っている。

「今日は飲みましょう。朝まで付き合ってくださいよ。朝の便で帰りますので。」

深く溜め息吐いて頷いた。やっぱりコイツは苦手だなと思った。

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