銀河英雄伝説~流血と硝煙と運命の日々~   作:雪の師走

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心情の吐露と戦争への思い

宇宙歴783年 テルヌーゼン

 

士官学校に赴任してから9ヶ月が過ぎ、初めての長期休暇が始まった。

此れから2ヶ月の休暇である。いつも通り仕事を終えてから音楽学校でジェシカの演奏を聞く。今回は部屋の外の芝生で横になりながら聞いている。演奏が終わり、ジェシカが此方にやって来た。横に腰を降ろして座った。

「貴方はどうして軍人になったの?」

右目を開けてジェシカを見ると真剣な顔で此方を見ている。目を閉じて答えた。

「どうして軍人にか。どうしてだろうな。私の家は代々医者の家系なんだ。人を救うのが仕事の家から人殺しを仕事にする、中々に皮肉だな。」

「さっきの質問の答えだが、よく分からん。何となく士官学校に入り、何となく卒業し、何となく出世して今がある。そんな程度だ。」

「私は軍が嫌いよ。」

今度は左目でジェシカをみる。前を見ていたので此方が視線を向けているのに気付いてないだろう。

「奇遇だな。私も嫌いだよ。」

「なら他の仕事でもよかったじゃない。」

「周りで士官学校に行く奴が多かったから流されたという面もある。そして運か実力か適正があって同期では一番出世した。」

「好きだからといって上達するとも限らないし、ヤル気があればどうにかなるというわけでもなく、嫌いだからといって適正がないともいえない、その典型だな。」

「それで適正をみせている軍人で立身出世をしたいと?」

「立身出世は興味がないな。ただ、責任は感じている。次は艦隊司令官が内定している。少将だから3000隻位だろう。人員にして 30万人の命を預かることになる。私の命令1つで多くの者が失われる事になる。其れだけは堪らなく嫌なんだ。」

「貴方は優しすぎるわ。」

「そうかな。」

「そうよ。」

「ありがとう。」

その一言で会話が途切れ、日が沈むまで静寂が支配した。

 

宇宙歴784年 テルヌーゼン

 

年が変わり後期の日程も2ヶ月で終わる。初年生に戦術シミュレーションの使い方を教えている。来年度早々に新二年生による新人戦が行われるからだ。

ワイドボーンが新人では頭一つ抜けているといったところだ。

楽しそうにシミュレーションに興じる候補生を見て暗鬱な気持ちになった。あの一つ一つに多くの人が乗っているという事実を認識しながら戦っているのかと。しかし其れは自分の感傷に過ぎず、異端な考えだと思い、心の奥底に閉まった。

最初なので此方からは使い方を教えるくらいで試合の寸評をすることもなく、各自自由にやらせている。

思い思いに楽しんだのだろうか笑顔が多い。

そっとヤンが近寄って話しかけてきた。

「厳しい目で見ていますよ。」

言われてからハッとして目を指で解した。

「今は楽しんでいればいい。だが現場で働くと多くの生き死にを見ることになる。それでも楽しめるのか一抹の不安があるんだ。」

「私の最初の赴任地は地上勤務だった。そこで汚職の取締りをした。相手が抵抗してきてね。一緒に捜査に当たった同期の頭に1発の弾丸が当たったよ。血が噴き出してから倒れ込んだ。回らない舌で死にたくない、死にたくないって言って死んだ。そこから私の価値観が変容した。それが良いのか悪いのかは分からないが。」

大きく息を吐き出した。

「つまらなく暗い話だ。すまなかった。」

「いえ、そんなことは。」

気遣うような態度をみせたヤンの頭をぐしゃっと撫でてからその場を離れた。

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