銀河英雄伝説~流血と硝煙と運命の日々~   作:雪の師走

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夏季休暇

宇宙歴784年 テルヌーゼン

 

夏季休暇まであと1週間のこの日はヤンとラップを引き連れてジェシカのピアノを聞きに来ていた。

ラップは窓辺にもたれ掛かりながら、ヤンは木の下に座りもたれ掛かっている。私も木陰に寝そべりながらといった思い思いの格好で聞いている。

ジェシカの演奏が終わったのでヤンに気になっていたことを聞いた。

「ヤン、お前夏季休暇に外出も外泊も予定がないらしいな?お前1人だけ申請がないそうだが。」

私の質問に驚いたのかラップがヤンに事実か尋ねている。

「本当か?2ヶ月もあるのに1人で寮にいる気か?」

ヤンは困った時にする癖の頭を掻く癖をみせながら答えた。

「はい、その予定です。身寄りがいませんので何処かに帰るも出来ないので。アハハ。」

苦笑しながら言うヤンに士官学校の予定を伝える。

「真ん中の1週間は売店も食堂も閉まるから食べ物は調達してこないとダメだぞ。それに外出許可を出す先生方も出勤してこないから食えずに過ごすことになるぞ。」

呆れながら云うと驚いた顔をしたヤンが聞いてきた。

「クーロ教官も来ないのですか?いざとなれば全部教官に頼ろうと思ったのですが。」

おずおずと言っているのに図々しい内容に思わずこめかみを押さえた。

「おい、幾らなんでも図太い要求だろ。」

ラップも思ったのかウンウンと頷いている。ヤンに自分の予定を伝えてから提案をした。

「私は将官用の避暑地が当たったから其処に行く予定だ。何ならヤンも来るか?」

私の提案に心底嫌そうな顔をしてヤンは答えた。

「男2人で避暑地ですか?ゾッとしますね。ゴメンです。」

その物言いにラップと顔を見合わせて笑った。

「あら、いいじゃない。将官用の避暑地なんて早々行けるものではないわよ。予定を空けるわ。」

後片付けを終えたジェシカが窓辺に来ながら伝えた。

「クーロ准将も今年度一杯で教官も終わりでしょ。父が言っていたわ。なら記念に行きましょうよ。花も恥じらう女の子が付き合うわよ。」

そんなジェシカの提案に私は軽口で返した。

「ほう、そんな知り合いがジェシカにいるとは驚きだ。是非とも紹介してほしいね。出来るならグラマラスな方がいいね。」

そんな返しをヤンとラップは顔を見合わせて肩を竦めた。当のジェシカは頬を膨らませている。 そして皆で笑いだした。

「悪かったよ、ジェシカ。予定はこれになるが大丈夫かな?」

皆に確認を取ると了承したので決定のようだ。休暇の予定が引率になるようだ。小さく溜め息を吐いた。

 

宇宙歴784年 湖畔

 

予定通り将官用の避暑地にヤン、ラップ、ジェシカを連れてきた。男3人に女1人で問題があるかと思ったら士官学校の事務長を勤めるジェシカの父親は思いの外簡単に許可を出した。どうやら度々私の事が家庭内の話題に出ているようで娘が信頼しているならと云うことのようだ。但し私の端末に連絡が来て、くれぐれもよろしく頼むと釘を刺す事も忘れてなかった。キャゼルヌがいるからそれとなく挨拶付き合いがあるのも関係したのかもしれない。

「おい、ヤン。見ろよ。絶景だぞ。」

「ああ、ラップ。そうだね。」

ヤンはこういう事に慣れてないのかぎこちないが追々楽しんでくれればいいかと思った。

「気持ちいい風ね。夏とは思えないわ。日もキツくないし風が適度に吹いていて。」

白いワンピースを着たジェシカが風でたなびく髪を押さえながら言う。

「ああ、思ったより良いところだな。おい、落ち着いたら荷物を部屋に運べ。夕食はBBQを用意してくれている。1時間後に準備をして食事にしよう。」

3人から「はーい。」と言う声を聞いてからコテージの中に入った。

 

部屋を決めて、荷物を置き、着替えてから食事の準備をする。といっても炭に火を付けて焼くだけだから30分もあれば終わる。

各々思い思いに食べている。私も送っていたバーボンを飲みながら食事をする。

「それにしてもお前達は教官引率の旅行で良かったのか?息苦しいだろう?」

そんな質問に3人から笑いながら返してきた。

「いや、教官は講義ではピリピリしてますがそれ以外では話し掛けやすいですよ。真剣に聞いてくれますし、答えてくれますから。兄貴みたいです。」

「はい、自分も上手く付き合うとか考えなくていいのは楽です。それにビールを飲んでも煩く言ってこないですから。」

「紳士だし、一線はしっかりしてるから付き合いやすいわね。」

ラップ、ヤン、ジェシカの言葉に苦笑を浮かべた。

「褒められているのか嘗められているのか分からんが、褒められたと取ろう。人間前向きが良いらしいからね。」

肩を竦めた私を皆で笑った。そんな感じで旅行の初日は終わった。

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