宇宙歴784年 テルヌーゼン
1週間の避暑地への旅行を終え、帰ってきた。ジェシカと付き合うことになったことを一緒に旅行に行ったヤンとラップに伝えると祝いの言葉とからかいの言葉も貰った。教官でもからかう、良い性格した教え子だ。
家の端末に連絡が来ていた。とある人物からの連絡だ。
会いたいので連絡をくれと入っていたので連絡をして予定を調整した。3日後に夕食を共に取る約束になった。
当日の午前中にジェシカに付き合ってもらいお土産に持っていく菓子折りを買いに行き、昼食を共に取ってから別れた。
夕方に一軒の住宅を訪れていた。チャイムを鳴らすと1人の女性が出てきた。
「いらっしゃいませ。ユーリ・クーロ准将ですね。どうぞお入りください。」
そう言って勧めて来たので入った。
案内されてリビングに入ると壮年の男性が1人立っていた。敬礼をして挨拶をする。
「ユーリ・クーロ准将です。本日はお招き頂き、ありがとうございます。」
男性は軽く答礼して、直ぐに手を下ろした。
「座ってくれ、クーロ准将。」
勧められたソファーの場所に座ると男性も紹介した。
「ドワイト・グリーンヒル少将だ。初めましてだな。」
「はい、御名前は存じ上げておりましたがお会いするのは初めてになります。」
「今回の大規模組織再編で君は私の艦隊の副司令官に任命されることになっている。」
「ハッ、そのように聞いております。」
固い返事にグリーンヒル少将は苦笑しながら伝えてきた。
「今はお互いにプライベートだ。普通に喋ってくれ。家庭にいるのにそれでは息が詰まる。」
「そう仰られるのでしたら。」
「よろしく頼むよ。話を戻そう。副司令官として4500隻の指揮を頼むことにしている。」
「私は6000隻、分艦隊司令官3人に1500隻ずつの予定だ。此れは15000隻の場合だがね。」
「承知しました。閣下がそれで良いなら此方に問題はありません。」
奥方がコーヒーを持ってきてくれた。そこで私が持ってきたお土産を渡した。
「あら、モン・サン・ミッシェルのクリームチーズケーキじゃないですか。朝から並んで買いに行ってくれたの?娘も喜ぶわ。」
「何だ、知っているのか?」
奥方の反応にグリーンヒル少将が訊ねた。
「ええ、有名なケーキ屋の一番人気のケーキですよ。朝の10個で終わりだから中々手に入らないのよ。食後にコーヒーとお出ししますね。」
「いえ、御家族でお召し上がりください。」
「こんなに良いもの、私達だけで頂くなんて出来ないわ。ねぇ、貴方?」
「そうだな。折角持ってきてくれたのだから皆で食べようじゃないか。」
2人の勧めに了承した。
「分かりました。では食後に。」
「もう少し待ってくださいね。30分程で食事が出来ますからね。」
「ありがとうございます。」
頭を軽く下げた。
30分程で食事がテーブルに並んだ。ご息女も降りてきて。4人でテーブルを囲んで食事になった。ご息女が隣に座っている。
「ユーリ・クーロ准将です。よろしくお願いします。」
「フレデリカ・グリーンヒルです。よろしくお願いします。」
ぎこちない挨拶を交わす私達に奥方が間に入ってくれた。
「フレデリカ。ユーリさんがモン・サン・ミッシェルのクリームチーズケーキを持ってきてくれたのよ。食後に頂きましょうね。」
此方をバッと見て御礼を言ってきた。
「本当ですか!ありがとうございます!」
「あぁ、喜んでもらえたなら良かった。」
ぎこちないながらも食事会は進んでいった。
食事が終わり、食後のケーキを食べて、楽しい時間が終わり、グリーンヒル少将が自室に私を誘ってきた。恐らくこれが本題だろう。
「シトレ中将から聞いたが中将が考えた作戦案を危険だから止めるように進言したそうだね?」
少し厳しい視線を向ける。内容が内容だ。何故知っているのかという疑問に答えてもらうための視線だ。
「閣下から直接教えてもらったのだ。その作戦には私も参加する予定だからね。此れを知っているのはビュコック少将、私、そして君の3人だ。」
「危ないと言っていたと聞いたがどれくらい危険だと考えているのかね?」
「限りなく危険だと思っています。先ず要塞を保持している帝国側が圧倒的に有利なんです。それがイゼルローン要塞ならば尚更です。」
「トールハンマーもあるのです。普通にすれば守れて当然なんです。それを落とされるかもしれないところまで追い詰める。それで常道の防衛を要塞司令官が続けると思いますか?」
深く考え込んでいるグリーンヒル少将に構わず続ける。
「万が一でもイゼルローン要塞を落とされたら司令官2人は皇帝に殺されますよ。下手をすれば家族、親族悉くかもしれない。そんな状況を我々が作って味方ごと撃つのを躊躇うと思いますか?だから止めた方が良いと進言したのです。」
「いや、非常に考えさせられた。少しシトレ中将、ビュコック少将と話してみよう。」
「それがよろしいかと。」
お互いに頷き、この話はここまでにしようとなった。
「クーロ准将は今の政府、軍の在り方をどう思うかね?」
質問の意図が分からず訊ねた。
「どういう意味でしょうか?在り方というのは?」
私の答えに苦笑を浮かべて話し出した。
「いや、先走ったな。ロボス中将は軍内部で派閥を作ろうとしているようなのだ。パエッタ、ルフェーブル、ムーア、ホーウッド、アル・サレム辺りが集まっているようだ。国防委員会で力を付けてきているヨブ・トリューニヒトと組んでいるようだね。」
「それは軍閥化ということですか?」
「ああ、そうみたいだ。互いに協力しあって勢力を大きくしようということらしい。」
「なるほど、では来年の出兵は?」
「ああ、手柄を先に上げてロボス中将と子飼いの部下で上層部を固めようといった腹のようだ。」
「私はどうやらシトレ中将派閥に見られているらしい。ビュコック提督、ウランフ提督、ボロディン提督もね。私に関してはそんなことはないのだがね。どちらが上に立とうが変わらずに協力し合うだけなのだが。アップルトン提督は私と同じどっち付かずのようだね。」
上の混沌とした派閥争いに辟易としたのだがそれを吹き飛ばす威力を持った爆弾を投下してきた。
「君もシトレ中将閥と見られているよ。それも懐刀とね。」
「私はシトレ中将と特別親しくないのですが?」
「士官学校の教官を君は勤めていて、校長がシトレ中将なのにかね?」
「はい、小官に疚しいところなどありませんよ。」
グリーンヒル少将がフフフッと笑っている。
「君がどう思ったか、思っているかは関係ない。周りからどう見られているか、見ているかだよ。どう見ても側近と見られるよ。同じタイミングで士官学校に着任して退任するのだからね。」
あんまりな内容をグリーンヒル少将に告げられて天を仰いでしまった。