銀河英雄伝説~流血と硝煙と運命の日々~   作:雪の師走

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バレンタインと名将との出会い

宇宙歴785年 ゴールデンブリッジ 自宅

 

今日は2月14日だ。そう、バレンタインデーである。ジェシカが私の家に来ている。チョコを一緒に作ろうと云うのである。それは云いとして、何故かヤンとラップも付いてきたことが問題だ。空気の読めない教え子だ。正直、超迷惑だ。空気を読まずにヤンが話しかけてきた。

「教官がここに住んでいたなんて知りませんでした。」

チラリと視線をやり、答えた。

「先月引っ越したんだ。色々とトラブルがあってね。それに4月に少将になることが内定している。ついでだから引っ越せと命令がきたんだ。」

コーヒーを3つ入れて持っていった。ヤンが嫌そうな顔をしながら紅茶がよかったとブツブツ文句を言っている。

「空気を読まずに来るからだ。反省しろ。」

私の答えにラップとヤンが顔を見合わせて笑った。ヤンがコーヒーにミルクと砂糖を大量に入れてから一口飲み顔を顰めた。そんなヤンを見ながらラップが質問してくる。

「色々なトラブルがとさっき言ってましたが。」

「ああ、佐官用の官舎に炸裂弾をぶちこまれてな。部屋がボロボロになったから引っ越したんだ。」

冷たい視線をラップに向けながら答えた。ラップとヤンは顔を引きつらせている。

「何でそんな事態になったんです?」

「私が汚職、サイオキシン麻薬、スパイで3回昇進したのは知っているな?」

此れは軍内部どころか同盟市民の多くが知っていることだ。ニュースで大々的に報道され、ドラマにもなったから有名だ。

「その関係者の襲撃だろうと思っている。どれかまでは分からないがな。」

「逮捕されてるのですか?」

「ああ、大体はな。全員かと言われると分からないが。」

「偉くなるのも考えものですね。」

「安心しろ、ヤン。お前に立身出世する要素が見当たらん。」

私の突っ込みにラップは吹き出して爆笑し、ヤンは憮然としている。その様子に私も笑ってしまった。

「今の世の中は簡単に人が死ぬ。長寿を全うするのも大変だ。生き残るための努力は怠るなよ。」

ヤンはやれやれと首を横に振っている。

そこにジェシカがやってきた。お皿にチョコがのっている。どうやら出来上がりのようだ。

 

 

宇宙歴785年 ハイネセン 統合作戦本部

 

3月5日、私は統合作戦本部に召集命令を受け、集合場所の部屋に向かっている。内容は大体は想像がつく。3月1日に行われたロボス大将率いる自由惑星同盟軍4万3000隻とミュッケンベルガー元帥率いる3万9000隻がイゼルローン回廊同盟側出口付近で3個艦隊同士の艦隊決戦になった。

結果としては多数の同盟が攻め、帝国が守るといった形になった。帝国が巧みに守り同盟側が敗走迄はいかないまでも敗退と言っていい結果に終わった。

下士官に待ち合わせの部屋に案内してもらった。

入りたまえというシトレ中将の声が聞こえたので部屋に入る。

「失礼します。ユーリ・クーロ准将です。召集命令を受け参りました。」

敬礼をして挨拶をする。中にはシトレ中将、ビュコック少将、ウランフ少将、ボロディン少将、グリーンヒル少将が椅子に座っていた。

「そこに座ってくれ。ああ、遅刻ではないよ。我々は艦隊司令官同士の打ち合わせをしていたのだよ。」

そう声をかけられながら椅子に座る。

「それで何の用でしょうか?」

意地の悪そうな笑顔を見せている。

「何の用か、見当はついているだろう?」

「先の艦隊決戦の考察をするためでしょう?態々私を呼ぶ必要があったので?」

フゥーと息を吐いて答えた。

「やはり君は聡いな。君が有能だから呼んだんだよ。他の副司令官、参謀長は呼んでいない。君をここにいる皆が高く評価しているということだ。」

「左様で。」

「誰か顔見知りはいるかね?」

「ビュコック少将です。ビュコック少将、御無沙汰しておりました。お元気で何よりです。あの時は大変お世話になりました。」

ビュコック少将に頭を下げて挨拶をする。顔を上げてビュコック少将の顔を見ると皺が多い顔を更に皺を深くしている。

「あの時の小僧か。嫌な目によくも遭わしてくれたな。」

ウランフ少将が間に入ってくれる。

「2人の間に何があったのだね?」

「小官が中尉の時に任地のパトロール艦隊を率いていたのがビュコック少将だったのです。当時は中佐でしたね。」

嫌そうな顔をしながら私の話を引き継いだ。

「こやつが来て1月で惑星単位の不正、汚職を調べ尽くしよっての、検挙したいから部隊の乗組員を貸せと言って来たのよ。突入はローゼンリッターがするから確保したのを取り調べ等を担当しろとな。」

ボロディン少将が昔の事件を上を見ながら思い出そうとしている。

「ありましたな~。あれにビュコック少将が関わっていたとは。」

ビュコック少将がボロディン少将を睨んでいる。

「脅してきおったのよ。同盟全土に広がるニュースになるでしょう。その際に協力にしていただけないなら小官にインタビューが来た時に非協力的だった、何なら関わっていたのではないかと言いたくなるような事がないようにとな。お陰で大佐に昇進させて貰ったがな。」

吐き捨てるように言うビュコック少将の様子に皆が顔を見合わせて苦笑している。シトレ中将が笑いながら私に言ってきた。。

「初任官から上官を上官と思わなかったのだな。」

その言葉に4人が失笑している。コンコンとノックがされ、入ってきた下士官が皆のコーヒーを入れ替えて私の前にコーヒーを置いて出ていった。

「さてそろそろ映像を見ながら検討を始めよう。君のコーヒーも来たようだしね。」

シトレ中将の言葉に皆が顔を引き締めて頷いた。

此から本題が始まるようだ。

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