銀河英雄伝説~流血と硝煙と運命の日々~   作:雪の師走

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再びの出会い

宇宙歴783年 テルヌーゼン 士官学校

 

始業式が始まる2時間前に着いて、近くの喫茶店で朝食を取っている。トーストにサラダ、ハムエッグにコーヒーといたって普通のメニューだ。

 

食べ終わったので友人からわざわざ家に送られてきた雑誌を読み始めた。

月刊自由惑星同盟軍報という軍の人事や派閥、昇進や降格、未来の展望が描かれているゴシップ紙の類いの本でそこに自分が載っているから送ってくれたらしい。

ペラペラと捲るとシドニー・シトレ中将とラザール・ロボス中将の出世争いが熾烈であると書いてある。どちらも将としての実績良く甲乙付けがたいと書いてある。

 

次に現在の統合作戦本部長と宇宙艦隊司令長官の紹介、正規艦隊司令官の面々の紹介、指揮下の副司令官や分艦隊司令官、参謀長の紹介が載っている。

 

その次がネクスト正規艦隊司令官の紹介のようだ。ウランフ、ボロディン、グリーンヒル、アップルトン等の名前が並んでいる。軍内では有名で妥当な線の人選だと思った。

 

次は佐官からの将来有望な未来の正規艦隊司令官候補の紹介みたいだ。

表紙を見て凍りついてしまった。いの一番に自分の顔が載っけられている。紹介文が不正に厳しく、艦隊戦も勇猛果敢な一面も有りながら思慮深い心理戦も行える若き驍将と書かれている。

余りの美辞麗句に右手で顔を覆い溜め息を吐いた。顔が赤面している自信がある。昨日入っていたメールの多くはからかいの内容だろうと予想がついた。嫌な予想だ。

 

通信端末がピピッと音が鳴った。1時間前のアラームだ。そろそろ向かうことにするかと立ち上がり精算をする。戸を開けるとカランと音が鳴ると同時にキャッっと女性の驚きの悲鳴が聞こえた。外に出て声を掛けた。

「申し訳ない。驚かせてしまいました。お怪我はないですか?」

「いえ、こちらこそごめんなさい。ビックリして声をあげてしまいました。」

目の前に先日知り合ったばかりのジェシカ・エドワーズがいた。

「君か、先月以来だな。元気そうで何よりだ。」

当たり障りのない会話を始めようとしたが何かが気に触ったようで自分の事を睨んでいる。

「何かしたのかな?君の気分を害したのなら謝るが?」

心当たりは全く無いので聞いてみると意外な答えで困惑した。

「この1月の大半を教室でピアノを弾きながら待っていたのだけれど1回も顔を見せなかった同盟軍きっての佐官様ではないですか。」

嫌みがたっぷりと籠った笑顔を向けてくるジェシカ・エドワーズが正直に云うと怖かった。

しどろもどろになりながら言い訳を口にした。

「申し訳ない。将官の試験や前の部隊の引き継ぎで統合作戦本部に行きっぱなしでね。此方に来たのは1回だけなんだ。シトレ校長に諸々の書類を出しに夜中にね。」

ジェシカ・エドワーズはフゥーと息を吐いてから此方に視線を向けた。

「昼食をご馳走してからピアノを聴かせるって約束は冗談なのかと思ったわよ。集合場所も時間も決めずに別れたから。」

言われてからハッと気づいた。

「そうだったね。何も決めていなかった。もしかしてお店も決めてないのかな?」

おそるおそる聞くとジェシカ・エドワーズは満面の笑みを浮かべた。

「近くの日本懐石のお店を予約したわ。1度行ってみたかったのだけど高いから諦めていたの。駄目なんて言わないわよね。」

その笑顔に思わず苦笑しながら返事をした。

「分かった。約束だからな。そこでいいよ。それよりも学校に向かいながら話そう。時間も差し迫っているからな。」

「ええ、分かったわ。」

他愛ない話に話題を切り替えた。

「随分と早くに学校に行くんだね。音楽学校も9時に始業だから1時間はあるだろう?」

「私はいつもこの時間に来るの。本を借りて読んでいるの。あなたこそ、この間と制服の襟章が少し違うけど昇進したの?」

首を傾げながら聞いてきた。

「ああ、本日付で准将になった。歴代最年少将官らしいね。興味がないけど。」

「あら、おめでたいことじゃない。高く評価されるのは素敵なことよ。」

自分を持ち上げてくるジェシカ・エドワーズに少し居心地の悪さを感じて、顔をしかめながら答えた。

「あまり嬉しくないな。味方に実力以上の結果を期待されるのは正直迷惑だ。」

私の答えが面白かったのか笑っている。音楽学校が見えてきた。

 

校門の前で向かい合った。

「お別れね。1230時にここに集合ね。よろしいかしら若き驍将さん。」

彼女の言葉に返事を返してから凍りついてしまった。

「ああ、その時間なら問題ない迎えに来るよ。!!………」

私が言葉を失ったのが可笑しかったのか声を上げて笑っている。

「アッハッハッハッハッハッハ。ご、ごめんなさい。まさか固まるなんて思わなかったから。」

目から涙が出たのか目元を押さえながら謝ってきた。

「んん~、構わない。まさか君もあの雑誌を読んでいたとは思わなかった。では失礼させてもらうよ。私も始業式に行かなければならないから。」

逃げようと思ったが先に彼女が話しかけてきた。

「ジェシカ、私の事はこれからはジェシカって呼んで。私も貴方の事をユーリさんって呼ぶわね。」

「えっ、あっ、わ、分かった、ジェシカ。自分の事も呼び捨てで構わないが。」

「駄目よ。貴方の方が年上なんだから一応は敬わなくっちゃっ。」

彼女の物言いに苦笑してしまった。

「では失礼させてもらうよ。ジェシカ。お昼にここに来るからよろしく頼むよ。」

「ええ、待っているわ。ユーリ准将。」

つたない敬礼をしてきた。そんな彼女に頷き、士官学校に向かっていった。

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