銀河英雄伝説~流血と硝煙と運命の日々~   作:雪の師走

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艦隊司令官としての初陣

宇宙歴785年 エル・ファシル宙域

 

シトレ大将が作戦会議を開くというので各艦隊から人が旗艦ヘクトルに集まった。司令官、副司令官、参謀長の3人が3艦隊分10人の会議のようだ。シトレ大将が入室したので立ち上がり敬礼をする。答礼をし、座ったのを確認してから座る。

「では始めよう。オスマン准将、説明を頼む。」

「ハッ、帝国との会敵予想宙域は回廊出口付近となります。フェザーンからの情報によると4万4000隻となっており、此方との艦数に大きな開きはないものと思われます。」

シトレ大将が大きく頷き話し出した。

「では布陣の話をしよう。中央が私の艦隊、左翼をグリーンヒル中将、右翼をビュコック中将に任せる。」

両名が頷くことで答える。

「互いに正面の敵を撃ち破り勝つことが目的であり、目標になる。細かい作戦、戦法はお任せする。各員健闘を祈る。」

敬礼をして出ていったので答礼をして見送った。帰るかと考えているとグリーンヒル中将が話しかけてきた。

「私達は左翼になった。君には最左翼についてもらう。君は眼前の敵を崩して欲しい。」

「分かりました。微力を尽くします。」

そう言って敬礼をして、その場から立ち去った。

 

 

宇宙歴785年 イゼルローン回廊同盟側出口付近

 

 

正面に帝国軍艦隊3個艦隊が見える。まだ互いにイエローゾーンにも入っていない。艦列を整えて準備している段階だ。チュン参謀長が傍に寄ってきた。

「閣下、如何戦いますか?何か御命令があれば仰ってください。」

「データ42で戦おうと思っています。どう思いますか?」

「此方から攻めるのですな。」

驚愕の顔をしながら問いかけてきたので頷くことで答える。

「承知しました。閣下の直卒艦隊に命令を送ります。」

敬礼をして命令の手配をしにオペレーターの所へ向かって行った。

賽は投げられた。どうなるかは天運次第。敵か味方かどちらに微笑むか天を仰ぎ祈った。

 

 

まもなく戦闘が始まる。イエローゾーンに入り先頭の部隊はレッドゾーンに入ろうとしている。

先頭の部隊は入った。もう少し、もう少しと我慢をする。右手を軽く上げて命令に備える。

「敵艦隊、射程圏内に入りました。」

オペレーターの声に反応し右手を下ろし命令を下した。

「放て!」

艦橋の窓から多くの煌めきが見える。敵味方関係なく命を奪う輝きだ。綺麗だと思う自分が少し嫌になった。それを振り払うようにモニターを見る。戦況の確認をする。よし、作戦通りだ。内心でガッツポーズをしているとチュン参謀長が声を掛けてきた。

「中央と右翼は正面の敵に専念せよ。攻撃の手を緩めるな。左翼は半包囲に移れ。」

私の命令をオペレーターが各艦に通信を送る。敵の中央と右翼に隙間が大きく空いている。敵が艦列を整える前が勝負だ!

「中央、右翼は微速前進。敵に対して圧迫を強めよ。」

命令を出して数分で前進を開始した。敵は此方への対応に必死で繋ぎ目に対処出来ていない。敵右翼が孤立している。トドメを刺すべき流れだ。

「中央艦隊はミサイルを敵右翼に発射。味方左翼に攻勢を強めるように伝達。」

チュン参謀長が命令を明確化していく。1時間後には敵の右翼全体が総崩れになっていた。此方が崩した敵の最右翼が中央にもたれ掛かるように後退したために順番にドミノ倒しのように崩れていった形だ。

敵中央のミュッケンベルガー元帥は捲き込まれては堪らんと思って後退したのだろう。それを見て敵左翼も後退した。1万隻は倒したはずだ。これで戦うとなればイゼルローンの駐留艦隊を呼ばないと不安のはずだが。そんなことを考えていると帝国の旗艦から撤退命令が出たのだろう。全艦後退していった。

終わったと思って物思いに耽っているとオペレーターが声をあげた。

「総旗艦ヘクトルより通信です。」

頷くことで答えるとチュン参謀長が命令を出した。

「通信をモニターに。」

中央モニターにシトレ大将が映ったので敬礼をする。答礼を御座なりに返し、私に質問してきた。

「クーロ少将、武勲おめでとう。さて敵は後退しているが追撃に移るべきかな?貴官はどう思う?」

「ゆるゆると後を追って回廊内に入り撤退したことを確認してから此方も撤退でよろしいかと。」

「更なる戦功をあげようとは思わないのかね?」

シトレ大将の不思議そうな顔に苦笑してしまった。

「そこまでやる気に満ちてませんよ。ここらで十分です。私個人に関しては。」

暗に不満なのはろくに戦えなかった中央のシトレ大将と右翼のビュコック中将の艦隊だろうと云う当て擦りに気づいたの苦笑いをしている。

「それに関しては残念だが負けるよりはいいさ。私達は次の機会に期待しているよ。」

「それならばよろしいのですが。」

「では、しばらく追って折を見て引き返すことにしよう。」

通信が切れてから大きく息を吐いた。

「チュン参謀長、ゆるゆると敵の後を追います。突出することのないように厳命してください。」

「ハッ、かしこまりました。」

敬礼して指示を伝えにいった。私の最初の艦隊司令官の戦闘は終わりのようだ。

疲れた。早くゆっくりと休みたいと思った。

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