銀河英雄伝説~流血と硝煙と運命の日々~   作:雪の師走

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防衛態勢の要望

宇宙歴788年 ハイネセン 統合作戦本部

 

ヤンと共にハイネセンに帰還してから1週間がたった。ヤンは彼方此方と引っ張りだこだが他の軍人は通常業務に勤しんでいた。

私の艦隊も訓練帰りなので補給や休暇を行っていた。補給に関してはアレックスが全面的に請負ってくれているので楽が出来る。エル・ファシルの救援に一番乗りで行ったことも無条件で補給出来る要因らしく、アレックスが周りがあまりにも協力的で恐いそうだ。

そんな時にシトレ大将に呼び出しを受けてシトレ大将の待っている部屋に向かう。話の内容が読めないので困る。

「クーロ中将、参りました。」

部屋の前で声をかけて入る。

「来たか、座りたまえ。」

ソファーに腰掛けると正面にシトレ大将が座って話を始めた。

「エル・ファシルの件はご苦労だったね。」

「いえ、一番近くに居たのが私の艦隊なので。」

「そうか。国防委員会では君を副司令長官にという声もあるそうだ。」

あまりに自分の中では荒唐無稽な話に唖然とする。

「そんな話があるんですか?正規艦隊司令官では一番年少で期間も短いのですが?」

シトレ大将が笑っている。冗談だと思った。

「かなり小さい声だがね。ここ最近で艦隊個人で勝っているのは君だけだ。ロボス派閥は敵に与えた損害と同等の被害を受けているからな。」

「私も君が崩してくれたので敗走に追い込んでいる。なので近年の武勲1位は君という評価だ。しかも圧倒的にな。だから相応しい地位にという事らしい。」

厳しい顔をしている自覚がある。そんな話が有ることにも驚いたが自分の評価が思ったよりも高くなっていることにも驚いた。

「その話はどこまで本当なのです?」

「100か1000の内の1案といったところだよ。そうなるには後2戦位君の活躍で勝利が出て、ようやく人事案の有力候補になるだろうな。」

「気の遠くなる話ですね。少将から中将の昇進は早かったのに。」

「君の昇進が早すぎるから士官学校に教官として送り、間を空ける意味があったのだよ。まあ、その間にも色々とやってくれたから上げざるを得なかっただけなのだがね。」

シトレ大将の話も一通り終わって、本題に入るように促した。

「それで何の用件で御呼びになったのです?」

1つ大きく頷いてシトレ大将が話し始めた。

「君は同盟の防衛体制にも色々と苦言を呈していたがそれをしっかりと聞こうと思ってね。」

「よろしいのですか?辛辣な意見ばかりになりますが?」

「仕方ない。言いたいことが沢山有るのだろう?」

そう言って溜め息を吐いている。

「分かりました。では言わせていただきます。」

シトレ大将が頷いてくれたので話し始めた。

「まずはハイネセンに正規艦隊を全部待機させる意味が分かりません。イゼルローンまで1ヶ月程かかるのにそこで待機させる必要があるのか私には分かりません。」

「今はフェザーンの連絡で帝国が攻めてくる時期、規模、将帥が分かりますがそれも善意ではなくフェザーンなりの思惑があっての事ということを理解しているのか同盟政府、軍部、市民が理解しているのか大いに不安です。」

シトレ大将がウーーーンと考え込んでいる。

「それの対応策はあるのかね?」

「エル・ファシルを中心に艦隊を配置して防衛体制を強化するのはどうでしょうか?前線に半分配置して中間に2、3個艦隊を置き、予備とするのがベストかと。」

ふむと言ってコーヒーに手を伸ばすシトレ大将に釣られて私もコーヒーを1口飲む。

「これはフェザーンがどちらにも肩入れしない。もしくは両方に肩入れしている状況であるならベストです。」

「というとどういうことかな?」

「フェザーンが何かしらの理由で帝国に肩入れして、フェザーン回廊の通行を許可した時に防衛体制が崩れますのでフェザーン方面も睨んだ体制をするべきでしょう。」

シトレ大将が目を見開いている。

「フェザーンが同盟を裏切るというのかね。」

「フェザーンは商人の国です。帝国に付く方が大きな益になるなら付く。そういった国ですよ。それにどちらかに付く以外にも正しい情報を与えない、正確な情報が分からなかった等の言い訳をされても此方には確認する術がありません。」

「なるほど。確かにその通りだな。」

「2つ目はアルテミスの首飾りです。」

何が疑問か分からなかったのだろう。首を傾げている。

「中将、何が問題かね?」

「ハイネセンに有っても意味がありません。置くのならイゼルローン回廊の入り口を封鎖するように置くのがベストです。ハイネセンまで攻められたら他の有人惑星は攻略されています。そしてハイネセンは人口が圧倒的に多いので自給自足は出来ないので兵糧攻めで終わりです。それなのに惑星防衛兵器など有っても交戦論、主戦論を助長させるだけで、百害あって一利なしです。」

また溜め息を吐いた。

「続けても?」

「ああ、続けてくれ。何時かは聞かないとならんだろうからな。今聞いてしまおう。」

そう言って溜め息を吐いた。

「エル・ファシル等に大規模な補給基地、駐留基地を造るべきです。後方の安定は勝ち負けに多大な影響を与えます。ハイネセンから出発するより近隣から出発する方が早いので便利かと。それにエル・ファシル等の近隣惑星の経済に大きい影響を与えると思いますが。」

腕を組み考え込んでいる。

「他にも有るかね?」

「シトレ大将はまだイゼルローン要塞の攻略を考えているのでしょうか?」

怪訝な顔をして私を見ている。

「同盟市民の悲願だ。当然だろう?これはロボスも同意見だろうね。」

「国力に差が有るので大敗は同盟の軍事の屋台骨が皹が入るか折れる等になりかねませんが?」

「君はイゼルローン要塞攻略をしないと云うのかね?」

「はい、今のところは攻略をする必要がありませんから。」

シトレ大将は苦笑している。

「君はあっさりしているな。それが君の持ち味なのだろうな。」

私は微笑み返して言葉を濁して話を終えた。

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