銀河英雄伝説~流血と硝煙と運命の日々~   作:雪の師走

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長々と書きましたがそんな考えもあるな程度に考えてください。
軍事行動、作戦に関しては素人なので。
自分は無理な作戦には反対派なので批判的に書いてます。
色々な考え方、感じ方が有ると思うので強い批判、拒絶等は控えて下さると幸いです。


部下との情報共有

宇宙歴792年 ハイネセン 艦隊司令官室

 

ラップと補給関係や艦隊の修理、乗員の休暇等の書類を片付けながら午後をのんびりと過ごしていた。

「アッシュビー提督の調査をしたかと思えばエコニアで騒乱に巻き込まれるとは。乱がヤンを呼ぶのかヤンが乱を呼ぶのか悩ましいな、ラップ大尉。」

私の物言いが可笑しかったのか面白かったのか笑っている。恐らく失笑だろうが。

「偶然でしょうがここまでくると呪われてますね。」

「そういった星の下に生まれたんだろうな。御苦労なことだ、ずっとこういったことに巻き込まれるなら。」

「閣下も大差無いと思いますが。自宅が襲撃されるなど早々ありませんよ。しかも3回もなんて。」

「1回目の時にボロボロになった家を見て物を置くのを止めようと思ったな。だからシンプルかつ物が少ないだろう。今は将官用のゴールデンブリッジだから無いがそれも何時までか分からんからな。質素は変えられないよ。」

言ってから虚しくなり溜め息を吐いた。ラップも同情の視線を向けている。そんな昼下がりの時間にチュン参謀長がやってきた。厳しい顔をしているのが分かった。傍に寄ってきて直ぐに話し掛けてきた。

「閣下、閣下がイゼルローン要塞攻略を反対していると統合作戦本部、宇宙艦隊司令部で噂になっています。事実でしょうか?」

聞かれた内容に覚えがあったので頷いた。

「事実だ。」

「宇宙艦隊司令部では中々に大きな話になっております。帝国と戦うことに消極的な者が艦隊司令官とは如何な事かと。」

声高に言っている面々の顔が脳裏に思い浮かんで失笑してしまった。それがチュン参謀長の琴線に触れてしまったようだ。

「閣下!笑い事ではありません!」

手をチュン参謀長に差し出して言葉を止めた。

「すまない。しかしな、ヤル気があっても自分が被害を受ける奴とヤル気がなくても帝国に被害を与える奴のどちらが有能かな。」

ラップは口を押さえて笑うのを我慢している。ヤル気がある無能とヤル気の無い有能のどっちが使えるか聞いたのだから中々に皮肉が効いているだろう。

「戦果にヤル気の要素は無かったと思うが私の勘違いかな?あのバカどもがそこまで言うなら辞表を出そう。その時は味方に被害を出してばかりのアホな同僚に妬まれて苛められて辞めることにしたとマスコミに言うことにしよう。」

そう告げるとラップは腹を抱えて爆笑している。目の前にいるチュン参謀長もどう返せばいいのか分からずに変な顔をしている。

「閣下がそう言うなら私もそのように答えましょう。」

「よろしく頼むよ。」

チュン参謀長も納得してくれたようなので笑いながら答えた。ロボス派に呆れているのが伝わったのが分かったから良しとしよう。

呆れた顔をしていたチュン参謀長がまた真面目な顔をした。

「内密な話があるのですが。御時間頂けますでしょうか?」

「それは2人でということかな?」

「はい、出来ましたら2人で。」

頷いてラップに顔を向ける。

「すまないがこの書類をキャゼルヌに届けてきてくれ。話が終われば連絡する。」

「承知しました。キャゼルヌ少佐に渡しましたら、食堂で待機しています。」

「すまないな。よろしく頼むよ。」

ラップが書類を受け取って部屋から出ていったのを確認してから参謀長に声を掛けた。

「長くなるから座ろうか。」

そういってソファーを指差して私も移動する。

「それで話とはなにかな?」

「イゼルローン要塞攻略を反対している真のお考えです。それを参謀長として是非とも伺っておきたいと思います。」

厳しい視線を向けても逸らさない参謀長に1つ溜め息を吐いた。

「参謀長の胸の中にしまっておけますか?」

「はい、閣下の御深慮を他所で他言するようなことはありません。例え最高評議会議長や統合作戦本部長、宇宙艦隊司令長官であろうとも。」

「分かりました。まず、私はイゼルローン要塞の攻略を完璧に反対しているわけではありません。」

私の物言いが分からなかったのだろう。顔に?を浮かべている。

「といいますと?」

「参謀長もお分かりの通りあの要塞は難攻不落と謳われています。」

「はい、既に何度も手痛い損害を受けて敗退しています。」

「あの要塞は普通に攻めたら落とせないように出来ているのです。」

私の言葉の意味が分からなかったのだろう。疑問が顔に出ている。

「今回、シトレ大将がイゼルローン要塞攻略を考えています。規模としては私、グリーンヒル提督、ビュコック提督の3個艦隊を動員。シトレ大将の半個艦隊合わせて3個半艦隊になります。」

ここまでは良いかと視線を向けると頷いてくれたので続ける。

「フェザーンは帝国に同盟の軍事行動の規模、出発日、将帥の情報を伝えるでしょう。普通の指揮官なら同等の数はイゼルローン要塞に援軍として差し向けます。つまりその援軍と駐留艦隊を排除してイゼルローン要塞の攻略を開始できるのです。」

「それに要塞自体にも浮遊砲台が無数にあり、何よりトールハンマーが多数の艦船を吹き飛ばします。」

「要塞内も要塞司令官直属の陸戦隊か装甲擲弾兵が多数いるでしょうね。それを排除して始めて攻略完了です。」

言っていて憂鬱になったので溜め息を吐いた。

「私が一番懸念しているのがもし、万が一、あわよくば落とせたとします。その後の作戦計画が白紙なんです。その後の事など考えたことを政府も軍部もないでしょうね。」

私の言ったことが分からなかったのだろう。ポカーンとしている。

「今まで要塞を攻めるか、同盟側の回廊に侵攻してきた帝国艦隊を迎撃するの2つだったと言うことです。」

「要塞を落とせたとしましょう。戦場が持ち主の変わった要塞から帝国側の回廊、帝国辺境地域になります。帝国がイゼルローン攻略をする。それを防ぐだけなら満足なのですが打倒帝国を掲げる同盟がそれで満足すると思いますか?市民が、政府が、軍部が。国内の世論は主戦論が圧倒的に優勢です。辺境星域の占領、帝都攻略なんて考え、立案されるかもしれません。」

チュン参謀長は顔を青くしているが知ったことではない。知りたいと言ったのは彼だ。最後まで責任を持って聞いて貰おうと話を続ける。

「昔、フェザーンに駐在武官として赴任した時に聞いたのですが帝国辺境はフェザーン商人は行かないようです。貧しく商機がないようで。そこを同盟が占領して何の得が有るか分かりません。インフラも十分では無いようなので後方支援の基地にするのも大変でしょう。」

「何より獲ったら守らなければならない。帝国の正規艦隊は18個、それに貴族の私設艦隊が沢山有るそうです。帝国屈指のブラウンシュバイク公爵、リッテンハイム侯爵の艦隊は合わせて3個艦隊分はあるそうなので貴族全部で10万隻は軽々と上回るでしょうね。そんな数を相手に同盟は守れますか?12個艦隊しかない同盟が。」

なんか言ってて自分も虚しくなってきたな。溜め息しか出ない。

「で、ではそれを上層部に言えばよろしいのでは?」

チュン参謀長の疑問は当然なのだがそれを言っても意味はないのだ。

「今さら方針転換出来ると思いますか?これまで多くの人命が失われてきました。残念ですが打倒帝国は諦めますと。政府が、軍部が言えますか?」

首を横に振って答えるとチュン参謀長も首を横に振った。

「帝都攻略を目指すと最悪ですよ。後方の遮断が恐いですから要塞に1個艦隊、補給線の確保に数個艦隊はいるでしょう。実際に帝都を目指して侵攻するのはどれくらいの規模になると思います?10個艦隊使っての侵攻作戦だと半分程の艦隊で帝都を目指すことになります。袋叩きに遭うでしょうね。チュン参謀長はしたいですか?」

「いえ。」

そういってチュン参謀長は口を噤んだ。

「貴族が味方についてくれるとか考えてるなら無駄ですよ。大貴族は特権の剥奪等、認められませんから。同盟も許せないでしょうしね。」

肩を竦めながら言うとチュン参謀長は遂に顔を手で覆って俯いた。

「こんなところですよ、私が考えてることは。口には出せませんが。まぁ、とりあえずは今回の要塞攻略戦を考えましょう。どうせ落ちないでしょうから撤退の方法とか。」

私の提案に苦笑して頷いた。憂鬱になった午後の一時だった。

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