銀河英雄伝説~流血と硝煙と運命の日々~   作:雪の師走

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戦争への準備期間

宇宙暦792 ハイネセン 統合作戦本部

 

司令長官になったシトレ大将の号令の下に出兵命令が出た。4月にハイネセンを発つ事になり、後方支援の部署と遠征部隊は準備に大忙しだ。

部隊は第一艦隊の私と第四艦隊グリーンヒル中将、第五艦隊のビュコック中将の3個艦隊とシトレ大将の直卒艦隊半個の計3個半艦隊を動員する事になった。

先に行われた艦隊司令官会議では私が左翼、中央にグリーンヒル中将、右翼にビュコック中将を配置して中央後方にシトレ司令長官が待機して指揮統率をする事になった。予備の役割もある。

今回の目的、目標はイゼルローン要塞を攻略する事にある。そのため陸戦部隊も3個師団が用意されている。各正規艦隊に1師団ずつが配備され、それが要塞内の攻略の主戦力になる。

私の艦隊は補給に関してはアレックスが全面的に請け負ってくれているので安心している。艦の整備状況もチュン参謀長を中心に見てくれているので安心。

代わりにその決裁の書類が山のようになっているので処理している。

書類仕事が嫌いな人が多いが私は好きだ。殺し合うより余程健全的で有意義だ。

正午を告げるベルが鳴り、そろそろキリの良いところで昼食に行こうか考えていると扉が空いた。視線を向けるとヤンが入ってきている。

「あれ、教官。ラップは居ないんですか?」

「ヤン、先ずはノックをしろ。ラップならキャゼルヌ少佐の所に補給関係の書類を出しに行ってもらってる。その内に帰ってくるだろうから座って待っていろ。」

そう言ってペンで目の前のソファーを指した。

「慣れたか?司令長官直属の参謀は?」

そう尋ねると苦笑しながら頭を掻いている。

シトレ大将は年越し前に行われた帝国との艦隊決戦でミュッケンベンガー元帥の艦隊に損害を与えて6分4分の勝利を得た為、年明けの論功行賞で代理が取れて宇宙艦隊司令長官に任命された。

ヤンも3月1日付でシトレ司令長官直属の作戦参謀として配属されている。

「どうも息苦しいですね。教官の元が良かったですよ。気を遣わなくて良いので。」

「ヤン。職務中に酒が飲めるからじゃないだろうな?」

図星をつかれたのか苦笑いしている。仕方ないやつだ。

「ヤンは今回の作戦は聞いているのか?」

「はい、教官が反対されているということもシトレ校長に教えてもらいました。」

「どう思う?今は2人だ。率直な意見を言え。」

「閣下の懸念は分かりますが攻略の可能性は多分に有ります。」

「味方殺しが起こる可能性はあるか。私の艦隊は混戦にすることはない。」

命令を無視すると言った私に驚いたのかヤンが視線を向けてくる。

「司令長官に言うも言わないも自由にしろ。今言うのか戦争後に言うのかも全て任せる。」

私の生殺与奪の権利も与える発言に眼を見開いて此方を凝視している。

「聞かなかった。聞こえなかったの対応でも好きにすればいい。」

大きな溜め息を吐いているヤンを見て、つい笑ってしまった。

ヤンが何か言おうとした時にラップが帰ってきた。2人に昼休憩に行ってこいと告げて話を終わらせた。

 

 

 

帝国暦483年 オーディン 軍務省尚書室

 

ミュッケンベルガー視点

 

軍務尚書の執務室に軍のトップ3長官が集まっている。エーレンベルク軍務尚書、シュタインホフ統帥本部総長、そして宇宙艦隊司令長官グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー元帥がフェザーンより知らされたある報せについて話し合うことになっている。

「フェザーンより叛乱軍がイゼルローン要塞攻略を行うようだ。4月に軍を発すると報せがあった。」

「叛乱軍の規模はどの程度になるのかな?」

私の疑問に軍務尚書が答える。

「正規艦隊3個にシトレ大将の半個艦隊の3個半になると報せにある。」

視線を統帥本部総長に向けると1つ頷いて話し出した。

「情報部からも同じ内容が入ってきている。間違いはなかろう。」

「率いる司令官は分かるかな?」

「フェザーンからの報せではシトレ、ビュコック、グリーンヒル、クーロの4名が率いるらしい。」

3人で目を合わせた。

「彼奴が来るのか。ユーリ・クーロ中将。」

「ああ、叛乱軍の若き名将だ。ここ最近の敗けは彼奴に齎された。」

「そこも考えて援軍を送らなければなるまい。」

私の言葉に軍務尚書、統帥本部総長も同意してくれた。

「司令長官は行けるのかな?」

軍務尚書の問いに首を横に振った。

「無理だ。先の戦闘で分艦隊司令官2人が死んだ。他のと合わせては5000隻は減った。補充はされたが新兵のようなものだ。訓練に今少しの時間がいる。」

「では他の司令官を派遣するしかあるまい。」

統帥本部総長の言葉に頷いた。

「ゼークトも先の戦闘で被害を受けた。出せるのはシュトックハウゼン、クラーゼン、メルカッツ辺りであろう。」

誰にするかと問う軍務尚書の視線に頷いて答える。

「シュトックハウゼンとメルカッツにしようと考えている。そこにヴァルテンベルクの駐留艦隊があれば数はほぼ同数。要塞のトゥールハンマーもある。」

それで良いかと2人に視線を向けると頷いてくれたので此方も頷く。

「ではシュトックハウゼンとメルカッツの2人に出兵命令を出そう。」

これで3長官会議は終わった。後は大神オーディンに祈るばかりだ。

 

 

 

宇宙暦792年 ハイネセン 街中

 

出兵を5日後に控えて、今日はジェシカとショッピングに来ている。朝早くから色々な所を回っている。

朝の8時に迎えに行き、軽食を取り、映画を見て午前中を過ごした。昼は窯焼きのピザが有名な店で食べ、腹ごなしにウインドウショッピングしている。

あれこれと服を着てみて、雑貨を見て回る。夕方にケーキの美味しいカフェに連れていかれた。

テラスに座りジェシカはミルフィーユと紅茶を、私はチョコケーキにコーヒーを楽しんでいる。

30分ほどで食べ終わり、出ようかと声をかけると少し話が有ると言ってきた。

「もうすぐ出兵ね。」

「ああ。」

会話が続かない。ジェシカが話すまで待とうと口を噤んだ。1分ほどの静寂の後、話し出した。

「その、ユーリは何で男女のその、一線を越えようとしないの?」

恥ずかしいのか顔を真っ赤にしている。耳も赤い。

まさかの質問に答えを窮した。いや、答えは決まっているが伝えるべきか濁すべきかで窮したのだ。覚悟を決めて問うてきたのだ。誠実に答えるべきだろう。

「私と君の年齢差は10近くある。付き合い始めた時は君は20にもなっていなかったから手を出すのが憚られた。20歳を越えてからも私よりも相応しい相手がいるのではと云う思い、迷いがあった。」

「後悔なんてしないわ。私が自分で選んだ相手だもの。私は貴方を愛してるわ。だから貴方も私を愛して。」

顔が赤いが強い意志が籠った強い視線を向けてくる。それに対して誠実に答えるべきだろうと思った。

「分かった。君が真剣に答えてくれたんだ。私も答えよう。ジェシカ、愛してる。ずっと傍にいて欲しい。」

「ユーリ、末永くお願いね。」

目に涙を溜めながら満面の笑みを浮かべているジェシカを見て、やはり綺麗な子だなと改めて思った。

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