宇宙暦792年 エル・ファシル近郊 旗艦
明日、エル・ファシルに着く。それからのスケジュールを司令部要員と査閲を行うヤンで行っている。
チュン参謀長が読み上げてくれるので、それを聞いている。
「到着したら閣下とヤン中佐は就任式典、凱旋式典に参加していただきます。その後、エル・ファシルの代表者達と打ち合わせを行い、取材や収録等のメディアに出演していただきます。」
私とヤンが頷く。それを確認して連絡を続ける。
「翌日には閣下には艦隊に戻っていただき、駐留基地の確認とイゼルローン回廊迄の予想戦地の確認を二週間かけて行う予定です。」
「その間にヤン中佐には商店街での握手会、デパートでの写真撮影会、児童施設への慰問、戦災被害者との懇談会など様々な行事に参加していただく事になります。」
驚くヤンに苦笑する。嫌がるからギリギリまで伏せていた甲斐があったようだ。決定事項を告げる。
「ヤン中佐、まさかとは思うが二週間の休暇を貰えると思っていた訳ではあるまいな。エル・ファシルの英雄の凱旋だぞ。使う場面は沢山ある。」
「そんなあ。折角の休暇がなくなるなんて。」
私もチュン参謀長もラップ、ワイドボーンも笑ってしまった。
「副司令長官としての最初の命令だ。」
命令するとヤンは肩を落として項垂れている。
「了解しました。」
1つ大きく頷いてから残りの命令も伝える。
「ラップ大尉をマネージャー代わりに付けてやる。ラップ、分かっていると思うがサボらせるなよ。」
ラップがお手本のような敬礼を笑いながらしている。それを見て、ヤンが苦虫を噛み潰したような顔をしている。
「ジェシカに伝えてあるから寝泊りは私の家でするように。ラップも泊まっていくといい。」
「いいんですか?その…」
「構わない。護衛代わりになるし、お前が遅刻、欠席とかされるよりはな。引っ越しの片付けも2人とも手付かずだろうからな。」
「……了解しました。」
「そういうことで。よろしく頼むよ。」
伝える事は伝えたので解散して明日に備えるよう命令を出してミーティングを終えた。
宇宙暦792年 エル・ファシル 自宅
私の自宅で私とジェシカ、ヤン、ラップの4人で食事をしている。半月前にジェシカが先に来て、家具や食器等の引っ越しの荷解きをしてくれたので、初日から確りとした生活する用意が出来ている。
「閣下、回廊迄の戦地の確認ですが何処を見る予定なのです?」
質問してきたラップに眼を見て答えた。
「ティアマト、ヴァンフリート、ダゴン、アスターテは戦術的に確りとチェックしないといけないだろうな。アルレスハイム、パランティア、ファイアザードもだな。」
「意外と手広くするのですね。」
「ああ、戦場を決めるのは此方と彼方の駆け引きから決まる。なので勝つ為に、負けない為に必要な努力だな。」
「努力をすると口にするのは簡単だが実行すると難しい。際限がないからな。」
「ですね。」
食事をしながら艦隊の今後の行動予定を確認して、その日を終えた。
寝室でジェシカと2人で横になっている。客室にヤンとラップを各々放り込んでいる。どの部屋も家具を置いた最低限の部屋になっている。寝室もベッドにテーブル、カーテン、小物類を入れるミニ箪笥だけだ。
3回の襲撃に片付けから修理、買い物、設置の行程が面倒になり、どんどん不要な物が無くなり簡素になった。
ジェシカが文句を言うかと思ったが彼女も最低限揃っているのを確認して必要な物を揃えたようだ。主に台所周りの家電等だが。
「明日から二週間居なくなるのね?」
「ああ、戦場になる可能性の有る場所は直に確認しておきたい。有利に戦うためにな。」
「貴方が居なくて暇だから初等科の教師の仕事をしようと思うの。教師になるのが夢でもあったから。」
「いいと思う。したいことはどんどんすればいいさ。短いのか長いのか分からないのが人の一生だからな。」
ジェシカが胸元に顔をうずめて、顔を赤くしている。
「その、しばらく会えないから、その。したいなって……。」
顔を見せないようにしているジェシカを愛おしく感じた。ぐいっと身体を起こして入れ替えて、ジェシカを下にして目を見詰めた。
「いいか?」
「はい。」
彼女の返事を聞いてから胸元に顔をうずめた。