銀河英雄伝説~流血と硝煙と運命の日々~   作:雪の師走

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ヴァンフリート星域会戦、始まる

宇宙暦794年 ヴァンフリート星域 旗艦

 

艦隊同士の距離が近づいている。イエローゾーンに入り、間もなくレッドゾーンに先頭が入る。この瞬間は何時も緊張する。いよいよ命のやり取りをするという事実にだ。そんな時にオペレーターが声を上げる。

「先頭がレッドゾーンに入ります。」

その声を聞き、チュン参謀長、ワイドボーン参謀、副官のラップ大尉の顔を見る。皆が一様に緊張している様でホッとした。

「間もなく全艦レッドゾーンに入ります!」

オペレーターの引き続きの報告に右手を上げる。誰かの唾を飲み込むゴクリという音が聞こえた。

「全艦、レッドゾーン入りました!」

その声を聞き、振り下ろして命令を出した。

「撃て!!」「撃て!」

チュン参謀長の復唱の声を聞きながら、敵味方の戦列から砲撃が放たれた。帝国軍からも同じように砲撃が来る。戦闘が始まった。

 

 

宇宙暦794年 ヴァンフリート星域 旗艦

 

始まって1時間が経った。私の方は1万隻、帝国軍は1万5000隻で数の上では不利なので隊列を維持して応戦する。敵が積極的に攻めてこないので流れとしては動きが無い状態である。

「参謀長、どう思う?」

チュン参謀長に意見を求めると顎に手をやり、考え込んでいる。

「数の利で押してくると思ったのですが意外に慎重な艦隊運用ですな。」

2人で考え込んでいるとワイドボーンが会話に入ってきた。

「恐らく閣下を警戒しているのでしょう。積極的に攻めれば逆撃を喰らうと考えているのではないかと推測します。」

私とチュン参謀長は視線を合わせてからワイドボーンにチュン参謀長が問いかけた。

「どういうことだ?ここまでの戦力差があるのにそこまで神経質になる理由が分からないのだが?」

私もチュン参謀長の意見に同意なので1つ頷いて、ワイドボーンに先を促した。私達の答えが分かっていない様子に眼をパチクリし、苦笑した。

「最近の同盟と帝国の戦争で戦功を毎回あげているのは閣下だけです。それも艦隊を崩しています。帝国が一番警戒しているのは閣下に間違いありません。だから1万隻の我々に1万5000隻の艦隊を当てたのでしょう。本来であれば1万2000隻のグリンメルスハウゼン艦隊を我々に当てて、1万4000隻のムーア提督にグライフス提督の1万5000隻を当てるのが順当です。それが逆になっている事から私は推測しました。」

ワイドボーンの意見に私、チュン参謀長、ラップ大尉は顔を見合わせて苦笑した。どうやら我々は自分達が考えている以上に敵に評価されているらしい。

「ということは此のままの戦況で進むのは敵の狙い通りと云うわけか。」

「そういうことだと思います。」

ワイドボーンの同意に小さく息を吐いた。

「他の艦隊の戦況はどうかな?」

3人に問いかけるとモニターを見ながらチュン参謀長が答えた。

「中央はミュッケンベルガー元帥が大分激しく攻めていますな。連敗しているので焦っているのか、背水の陣なのか。ビュコック提督、ボロディン提督が中々に被害を出している様に見えます。どうも艦隊の防御陣形がヴァンフリート星域特有の気象に保てていないように見えます。戦い難さがデータを上回っていたのかと。右翼のムーア提督は果敢に攻め込んでいますが追い払われているみたいです。」

「グリンメルスハウゼン艦隊のあの小艦隊が良い動きをする。1000隻にも満たないが良いタイミングで攻撃している。ムーア提督の鋭峰をすっかり丸めている。あれでは攻撃が刺さることはない。見事だよ。」

ラップ大尉がマーカーで件の艦隊を示した。

「この艦隊ですね?確かに見事な艦隊運用です。剣がすっかりナマクラにされている。」

「あの指揮官は大層出来ますね。立身出世したら厄介になりそうですね。」

ワイドボーンがラップに続き意見を述べる。チュン参謀長も頷いて賛意を示している。

「是非とも部下に欲しいな。大層楽をさせてくれそうだ。」

私の言葉に3人が目線を合わせて笑い出した。そろそろ動くか。此のままダラダラしても仕方ないし、敵は消極的だから、此方から仕掛けないと変わらない。

大きく息を吐いて姿勢を正した。その様子を見て、艦橋に緊張が走った。

「動くぞ。パターン15の応用でいく、全艦に通達しろ。中央に集中砲火、主砲斉射三連…撃て~!」

私の命令が行われ、敵の中央が大きく被害を受け乱れている。 中央を前に出して、敵の中央に紡錘陣形で攻撃する様子を見せる。敵が慌てて中央の被害を受けた艦隊を後方の本隊に合流させ、縦深陣を構築しようとしている。この瞬間を待っていた。

「中央は左右に別れて敵の両翼を半包囲しろ。中央は本隊が前に出る。両翼は艦列を伸ばして側面にも展開しろ。」

敵の後方にいる本隊は中央の被害を受けた艦隊が入った為に此方の動きに即応出来ない。この瞬間がチャンスと両翼を叩きに出る。

敵の両翼は中央突破を図る動きを見せた私の艦隊の側面を突こうと横に艦を向けようとしたのか動きが鈍い。

敵が後退をするまでの機会、しっかりと攻撃を行う。30分程で態勢を敵の艦隊は整えたので攻撃を打ち切った。恐らく4000隻近くは被害を与えただろう。此方は500隻程のようだ。緒戦は此方が優勢と云ってよいだろう。

このまま何事もなく進んでほしいと思った。

 

 

宇宙暦794年 ヴァンフリート星域 戦艦

 

???サイド

 

「敵は相変わらず正面突破か。芸がないな。猪のようだ。」

私の言葉に側に立つ男は苦笑している。

「此方は何とかなりそうだか逆の方は危ういな。」

「グライフス提督と叛乱軍のユーリ・クーロ提督の戦線ですね。」

「ああ、見事な艦隊運用だ。中央に集中砲火を浴びせてた。グライフスは前衛を下げて本隊に合流させる決断をした。その動きを見たクーロ提督は中央突破の動きを見せた。それに対してグライフスは縦深陣を敷く為に両翼を内よりに向ける。その動きを見たクーロ提督は中央の部隊を外に向け、両翼の部隊と包囲をする。中央は本隊同士で攻撃するので動けず。両翼が後退するまで一方的に攻撃をされた。中央で2000隻、両翼で2000隻位の被害を受けたようだな。」

「これで彼方側は戦力差は互角になったと云うことですね。」

「そういうことだ。さて、ミュッケンベルガーはどうするか。お手並み拝見だな。」

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