銀河英雄伝説~流血と硝煙と運命の日々~   作:雪の師走

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ヴァンフリート4=2宙域会戦の終結

宇宙暦794年 ヴァンフリート星域 旗艦

 

負傷して軍医に見てもらっている。

「状態はどうか?」

「右手の骨折はそこまで深刻ではありません。左肩の破片が刺さった負傷も止血と破片の除去は終わりました。輸血の必要がありますが概ね大丈夫です。」

「輸血はここでしてくれるかな。今も戦闘中だ。」

軍医が眉を顰めている。反対らしい。

「閣下、大丈夫は安静にしたらの話で仕事をしていいとは申していません。」

「私は艦隊を、多くの人命を預かる司令官です。自分の部下を守るためなら多少の無茶はしなければならない立場なのです。」

私の言葉に説得を諦めたのか首を横に振っている。

「分かりました。そこまでの覚悟をしているのならば仕方ありません。しかしながら治療はここでしっかりとさせていただきます。それでよろしいでしょうか?」

「ああ、それでお願いする。貴方にはすまないと思っている。」

治療に関しては終わった。次は艦隊の状況だ。

「参謀長、ワイドボーン参謀、艦隊の被害状況は?」

2人が顔を見合わせてからチュン参謀長が1歩前に出て報告してきた。

「さっきので2000隻程が落ちました。残存数は7000隻を越えていますが戦闘可能艦だけですと6500隻程になります。」

「そうか、大損害だな。他の艦隊はどうか?」

「ビュコック提督が被害を出しながらもミュッケンベルガー艦隊に傷を負わせています。ビュコック艦隊は1万隻程が戦闘しています。」

「ボロディン提督は帝国のグライフス提督と牽制し合っており大きな被害を受けていません。」

「ムーア提督ですが混乱が収まっておらず今ものたうち回っています。半数程が落とされたようで5000隻程になっています。」

チュン参謀長が尋ねてきた。

「閣下、この後は如何しますか?ミュッケンベルガー艦隊の後方に出るかボロディン提督の援護に行くのが現実的な案かと思いますが。」

衛星ヴァンフリート4=2の同盟軍基地をグリンメルスハウゼン艦隊が攻略中でその救援に行きたいが数において劣勢の為に私の艦隊は救援に行くことが出来ない。

とりあえず撤退するように命令したが逃げれるかどうか。

グリンメルスハウゼン艦隊を守るような形のミュッケンベルガー艦隊はビュコック提督の艦隊に正面から、左方からムーア提督が攻めているが互いに決め手に欠くようだ。

「参謀長、ボロディン提督の援護に向かう。私の援護が早いかグリンメルスハウゼン艦隊の攻略が早いか時間の勝負になるだろう。」

「承知しました。全艦に命令。ボロディン提督の援護に向かう。」

これで艦隊は動き出した。移動に時間がかかるだろうから少し席で休むことにしよう。

「閣下、何故ミュッケンベルガー艦隊の後方、もしくは右方に出ないのですか?そちらの方が近いのに?」

ラップとワイドボーンが疑問を持ったことを聞いてきた。

「十分な数があればその手をとったが後方のグリンメルスハウゼンが怖いから少し離れた所で戦闘中のボロディン提督の援護に行くことにしたんだ。グリンメルスハウゼン艦隊が動いて来たら此方が圧倒的に不利になるからな。」

「では時間の勝負とは?」

「敵は基地を攻略し終えたら艦隊を整えて撤退するだろうな。このまま続けてもダラダラと消耗戦になる。そうなるよりは基地攻略を手土産に引き揚げるが妥当だということだ。」

なるほどと思ったのか2人はウンウンと頷いている。

移動に半日はかかるようだ。どちらに賽の目が転ぶか運命の半日になりそうだ。

 

 

ボロディン提督の援護に動いて6時間後にグリンメルスハウゼン艦隊が動き出したとビュコック提督から連絡があった。どうやら基地の攻略が終わったようだ。ミュッケンベルガー艦隊の横に付いて足並みを揃えて後退しているようだ。ボロディン提督もグライフス提督が後退していると連絡してきた。それを聞いたロボス司令長官は追撃を命令しようとしたが戦闘が長引いたこと、兵力差がないこと、私の艦隊が移動中の為に追撃に移れない事から取り止めたようだ。

ロボス司令長官から衛星ヴァンフリート4=2の基地に赴き、生存者の確認と基地の状態の確認を命令された。ビュコック提督らは帝国軍がしっかりと撤退したのかを確認しているようだ。

これで今回の戦闘は終わりのようだ。半日後に基地に輸送艦を降ろし、生存者を収容していく。収容中にシェーンコップがやって来た。

「閣下、救援ありがとうございました。」

「いや、遅くなって申し訳ない。上の艦隊戦が上手くいかずこのような結果になってしまった。」

「閣下のそのお姿を見れば何も言えませんな。愚痴か悪態の1つでも言ってやろうかと思ったのですが。」

「すまなかった。」

「何度も謝らなくて結構ですよ。」

首を横に振ってから心に思っていた事を告げた。

「そうじゃない。私が司令官、副司令長官になった時にローゼンリッターを艦隊の陸戦隊に呼ぼうとしたんだ。しかし、リューネブルクの亡命がネックになって許可が下りなかったんだ。エル・ファシルはイゼルローン要塞に近い。後に続くものが出るのではと。」

「左様でしたか。まあ、あの状況なら仕方ないでしょうな。何れは呼んでいただけると思って、その時を待ちましょう。では失礼します。」

そう言って敬礼して下がっていった。

とりあえず今回も負傷したが生き延びたようだ。早く家に帰りたいと思った。

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