銀河英雄伝説~流血と硝煙と運命の日々~   作:雪の師走

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ハイネセンへ帰還

宇宙暦794年 ハイネセン 宇宙港

 

ハイネセンに帰ってきた。宇宙港の出入口にヤンが待っていた。私を待っていたようだ。敬礼しながら話しかけてきた。

「お帰りなさい、教官。」

「エル・ファシルの英雄に出迎えしてもらえるとは。痛み入るな。」

「いい加減、そのからかい方は止めてくださいよ。」

「分かった、分かった。それで本部長からの迎えだな?」

「はい、私に行けと。キャゼルヌ大佐は忙しくて代わりにと。」

「そうか。では、行こうか。」

「そういえば、明日はキャゼルヌさんの家で食事会をするそうですね?」

「耳聡いな。私とジェシカで伺う予定だが?」

「出来たら私も参加したいのですが?紹介したい人が居まして。」

前を向いて歩いていたのだが、まさかのヤンの発言に足を止めて、顔を凝視してしまった。

「お前が結婚するとは思わなかったな。酒で失敗してどこぞの女でも妊娠させたのか?」

今度は私の発言に驚いたのか手を振りながら否定した。

「まさか。違いますよ。実はトラバース法で養子を取ることになりまして、同居人を紹介したいのですが。」

「なんだ、そうだったのか。驚いたよ。」

「私もですよ。で、どうですか?」

「私は構わない。アレックスに許可取っておけよ。」

「分かりました。教官がシトレ本部長と会っている間に取っておきますよ。」

そんな話をしながら統合作戦本部に向かった。

 

 

「クーロ副司令長官です。」

「座りたまえ。コーヒーでいいな?」

「ありがとうございます。」

遣り取りをしながらコーヒーの入ったカップを貰い、一口飲んだ。

「先の戦闘でムーア提督の処遇が今一つ定まらないので君に来てもらった。」

眉間に力が入っているのが自分でも分かった。

「そんな嫌そうな顔をするな。取り敢えず聞いてくれ。3つの案が上がっている。1つは退役させるだ。後腐れ無くさっぱりするな。2つ目は留任させて再戦の機会を与えるだ。これ迄、艦隊司令官として励んでいたのだ。1回の敗北で評価するのはどうかという意見だな。3つ目は降格させて下積みからやらせる。どこかの艦隊の参謀長、分艦隊司令官にするという案だ。」

「はぁ、それで。」

手を顎下で組む、お決まりのポーズを取って言ってきた。

「君の艦隊にどうかな?」

「嫌です。」

「え?」

「え?もしかして了承すると思ったんですか?嫌ですよ。あんなバカを配下に持つなんて。絶対御免です。」

「彼のせいで負傷した。その償いという意味もあるのだが。」

「償いなら2度と関わらせないでください。勘弁ですよ。」

「分かった。そこまで言うなら、この人事は無しにしよう。」

互いに笑いながら話す事が出来た。

「それでどんな処分になりそうなので?」

「恐らく、降格させて最後のチャンスを与える形になるだろうな。」

「そうですか。そろそろ時間なのですが式典に向かいませんか?」

「そうだな。遅れるよりはいい。出ようか。」

そう言って2人で式典に向かうことにした。

 

 

式典会場に着いて将官用の席に着く。後ろはラップ、ワイドボーンの2人が待機してくれている。隣はビュコック提督、ボロディン提督、ムーア提督が座っている。

国防委員長の話が始まるようだ。皆が拍手をしているのを横目に鼻をかむ。それが気に触ったのか警備を勤める佐官が近寄ってきた。

「クーロ副司令長官、何故拍手をしないのです。」

「見て分からないのか?一目瞭然だろう。」

目付きが厳しくなった。怒っているようだ。

「先の戦闘の被害で両腕を怪我をした。拍手は腕に響くから良くないらしくて控えてるんだ。」

「振りでも軽くでもやりようはあるはずです。」

「手がまだ痛むので遠慮しておくよ。それよりもいいのかな?」

「なにがだ?」

「周りは皆、私達を見ているよ。副司令長官に絡む佐官として周りは見ているだろうね。」

周りを見回すと周囲はサッと視線を外したり、顔を背けたりした。それを見て恥ずかしくなったのか顔が紅潮している。

「さぁ、早く元の場所に戻りたまえ。委員長も話が出来なくて困っているよ。」

笑いながら告げたら体がブルブルと震えだした。私の気遣いに感動したのだろう。肩を震わせながら戻っていった。

隣のビュコック提督が話しかけてきた。

「お前さん、性格悪いな。遊んでおっただろう。」

「いえいえ、事実を伝えただけですよ。向こうが勝手に絡んできて恥を掻いたんです。私のせいにされても困ります。」

そんな下らないことを話ながらトリューニヒト委員長の話を流し聞いていた。

「私はあえて言おう。銀河帝国の専制的全体主義を打倒すべきこの聖戦に反対するものは、すべて国をそこなう者である。

誇り高き同盟の国民たる資格をもたぬ者である!」

そんな事を言ったので退室することにした。後ろにラップとワイドボーンが着いてきているのが分かった。

ロビーに出るとヤンが待っていた。恐らく私が出ていこうとしたのに便乗して出てきたのだろう。

「教官、今車の手配をしています。少々お待ち下さい。」

「えらく手配りがいいじゃないか?その勤勉さを日頃から見せて欲しいものだな。」

私の皮肉に頭を掻きながら苦笑している。

するとジェシカがやってきた。彼女も私の退室を見ていたらしい。

1人の青年が入り口から入ってきた。私を確認すると敬礼して挨拶をした。

「ダスティ・アッテンボロー大尉です。クーロ副司令長官閣下、お会いできて光栄です。」

「閣下が士官学校の教官から移動した後に入ってきた後輩です。会場の警備をしていたので車の手配を頼みました。」

「表に待たせてあります。行きましょう、ご案内致します。」

そういってアッテンボロー大尉は先頭を歩きだした。

「理由を付けて警備担当から外れるか。如才ない働きだ。ヤン、お前より世渡りが上手いな。」

私の言葉にヤンは頭を掻き、ラップ、ワイドボーンは口を抑えながら笑っている。

後部座席にジェシカ、私で座り、対面にヤン、ラップ、ワイドボーンの3人が座った。アッテンボロー大尉は運転席に座るようだ。自動運転だが万が一の為に座るようだ。

「それで何で教官は演説の途中で退席したのです?教官の言う如才ない対応なら静かに聞いているべきでしょう?」

「私は選んだ仕事が偶々軍人だっただけで、あの変な人の言う崇高なる精神など持っていないし、聖戦に参加した記憶も無い。そういう事にしておいてくれ。」

私の憮然とした返答に前に座る3人が肩を竦めた。

「それでこの後は閣下のご自宅でよろしいのですか?」

運転席に座るアッテンボロー大尉が後ろを振り向きながら尋ねてきた。

「いや、家に食材が無いから何かしら買いに行かなければ駄目だから店に寄ってくれ。お前達もどうだ?アッテンボロー大尉も暇なら来てくれ。」

そういって皆を誘うとラップとワイドボーンは家の家族に顔を見せないとと断られた。中心街で降りるそうだ。

ヤンも同居人がいるのでと言うので彼も呼べば良いと提案すると分かりましたと連絡を取り始めた。

「いいんですか?私までお邪魔しても?」

アッテンボロー大尉がそう言うので私は笑顔で頷いた。

「折角のヤンを慕う後輩だ。色々と面白い話も聞きたいしな。」

「では、お邪魔させていただきます。」

そんな会話をしているとヤンが通信を終えた。

「ユリアンが作っていた夕食を持ってきてくれるそうです。そこまで量はないので必要な物は買わないといけませんね。」

「なら酒のツマミとかも買いに行くか。」

中心街へと車の方向を向けてくれた。

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