銀河英雄伝説~流血と硝煙と運命の日々~   作:雪の師走

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第6次イゼルローン要塞攻略戦前哨戦

宇宙暦794年 エル・ファシル 補給基地 司令官室

 

 

夏が過ぎて9月に入ると第6次イゼルローン要塞攻略戦が軍から発表された。動員する艦隊は第7、第8、第9の3個艦隊になった。

司令官はホーウッド中将、アップルトン中将、アル・サレム中将の3人。

総司令官はロボス大将、総参謀長のグリーンヒル大将だ。そこに作戦参謀でヤン大佐が、補給担当でキャゼルヌ准将が配属されている。

先日知り合いになったアッテンボロー少佐も駆逐艦エルムⅢ艦長として参加するようだ。

4万隻を越える同盟に対し、帝国も駐留艦隊の1万5000隻にメルカッツ提督の1万5000隻、ミュッケンベルガー元帥の1万隻の4万隻らしい。

前回の戦いで勝ったと云える帝国はヤル気満々だな。

10月から11月はイゼルローン回廊同盟側からイゼルローン要塞前までの間の宙域争奪戦が行われている。

残念な事にその戦いは連戦連敗らしい。

そんな敗戦の書類を見ていると連絡が入った。ヤンの家のようだ。出るとユリアン君が映っていた。

「ユーリさん、お久しぶりです。」

「ユリアン君か。この間は楽しい一時だった。それで何の用かな?」

「はい、あの、同盟が連戦連敗ってニュースになっていて。ヤン准将が心配で。誰かに聞きたいのですが皆さん出征しているので。」

「そこで出征していない私という訳か。」

申し訳なさそうに言うユリアン君に笑ってしまった。

「す、すみません。失礼でしたよね。ごめんなさい。」

私に失礼をしてしまったと慌てているユリアン君に顔を横に振りながら答えた。

「いや、大丈夫だよ。良いところに目を付けたから感心していたんだ。いいよ、答えよう。ただし、コーヒーを用意するから少し待ってくれ。」

そういって準備をしてから話し始めた。

「イゼルローン回廊の中央にイゼルローン要塞がある。そしてそこに到るまでの間に数日はかかるくらいの距離がある。5個艦隊位は展開できる広さがある場所もある。隠れやすい小惑星帯などが道々にある。ここまではいいかな?」

ユリアン君に視線を向けると頷いたので話を続ける。

「後背や側面をそこに隠れて突くという事をされると面倒なので哨戒、偵察をする必要がある。何もないなら安全という事だからな。地味に見えるが万全の態勢で攻める為に必要な行動だな。かといって大部隊を各所に送るのは効率が悪い。なので少数、分艦隊や特殊部隊、特別編成の艦隊を送ることになる。つまり少数対少数になる。であれば有能な艦隊、司令官がいる方が有利になるということだ。」

話終えるとユリアン君がウンウンと考え込んでいた。やはりこの子は真面目だな。元々の性格かヤンを反面教師にしたか分からないが良い子だ。

「つまり帝国の艦隊、司令官が優秀だと云うことですか?」

「そうなるな。ここまで連戦連敗ということは非常に優秀と言って良いな。」

「これからどうなりますか?」

「恐らく総司令部も看過出来なくなるだろう。士気にも影響が出るだろうしな。その艦隊が同じなら罠を仕掛けて一網打尽を狙うだろうな。」

「それじゃあ勝てますか?」

「分からん。だがここまで連戦連勝の艦隊なら油断、慢心、増長が起こっても可笑しくない状況だ。そこを巧く突ければ。」

「なるほど。分かりやすく説明してくれたので納得しました。流石は士官学校の教官ですね。ヤン中佐も授業が楽しかったと言ってました。」

「そうか、奴がそんな事を君に。また聞きたいことがあれば連絡してくればいい。」

「ありがとうございます!」

そういって通信を切った。出来る敵は討てる時に討つ。戦場の鉄則だがロボスが総司令官。果てしなく不安になるのは私の杞憂だろうか。

 

 

1週間後に新たな戦闘詳報が届いた。どうやら罠を掛けたが逃げられたようだ。

ヤンが時間差の包囲作戦を発案して実施したそうだ。しかしながら同盟軍が戦力の出し惜しみをしたために逃げられたらしい。愚かな事だ。大魚を逃した。

これを契機に帝国はイゼルローン要塞に後退し、要塞にて待ち受ける作戦に切り替えたようだ。

前哨戦は被害数的には同盟の敗北だが当初の目的通りにイゼルローン要塞攻略に取りかかれるようだ。

どんな作戦かは知らないが被害が少なくすむことを切に願う。

第6次イゼルローン要塞攻略戦を本番がこれから始まる。

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