銀河英雄伝説~流血と硝煙と運命の日々~   作:雪の師走

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拙作を読んでくれている方々、投稿出来なくてすみません。
体調を崩してしまい、仕事もあって書く気力がありませんでした。
ボチボチやっていくので気長にお待ち頂けたらと思います。


血の代価

宇宙暦794年 エル・ファシル 補給基地 自室

 

第6次イゼルローン要塞攻略戦が終わり一週間が経った。正確な戦闘詳報が提出され、それに副司令長官として目を通す。特別に不審な点はなく、正確に記載されている。

総参謀長がグリーンヒル大将なので虚偽や虚飾は無いと思っているが予想通りで安心する。

ただ1つ確認しないといけないことが有る為にとある男からの連絡を待っている。

約束の時間になったら通信が入った。ボタンを押して出る。ヤン大佐だ。互いに敬礼をする。

『総司令部作戦参謀ヤン・ウェンリー大佐です。御用と伺い連絡を致しました。』

「先日の戦闘は御苦労だったな、ヤン大佐。活躍を認められ准将に昇進すると聞いた。おめでとう。」

『祝いの御言葉、ありがとうございます。』

「何故、今回連絡を取ったか想像はつくな、ヤン。」

私の言葉も表情も険しいのが分かったのだろう。ヤンも沈痛な面持ちで話し始めた。

『ミューゼル少将の艦隊を取り逃がした事についてですね。』

「ああ、お前なら私の考えを理解しているだろう。出来る敵は早々に撃たなければならない。大きくなる前に。そして大きくなるに連れて撃つ機会が少なくなっていくと云うことは。」

『はい。包囲網を敷き他方向からの包囲殲滅を図ったのですが数が足りずに後1歩の所で取り逃がました。』

「何故、そんなことになった。」

『私は1個艦隊で包囲網を敷くように進言したのです。ですが小規模の艦隊にそのような大部隊を使うのを恥と思わないのかと。各艦隊の分艦隊合わせて5000隻もあれば十分だろうとロボス司令長官が。』

天を仰ぎながら溜め息を吐いた。その様子を見ながら続きを話してくる。

『総参謀長も1分艦隊規模に1個艦隊も出すのは如何と。それにロボス司令長官は要塞攻略戦を早く執り行いたいようでそういった戦闘は雑事のように対応していました。』

「別動隊によるミサイル攻撃か。それをしたいが為にミューゼル少将を取り逃がした。そしてミサイル攻撃をミューゼル少将に阻止される。なんと評していいのか分からんな。」

『………』

「ヤン。今回の功績でミューゼル少将は中将になるだろう。つまりは1個艦隊、もしくはそれに準ずる艦隊を指揮する事になるだろう。」

『はい、申し訳なく思っています。』

私が責めていると思ったのだろう。謝罪を口にしてきた。

「勘違いするなよ、ヤン。私はお前を責めている訳では無い。お前は今回の戦いでは1参謀に過ぎない。つまりはその他兵士とそこまで変わらない。責任を負うべきは司令官、総参謀長の2人だ。」

「歴史に詳しいヤンなら知っているだろうが過去に大業を成した軍人、武将は何人もいるが敵に殺される危機、殺すチャンスはある。そこで生き延びたから大業を成せた。曹操、ナポレオン、アレクサンダー大王、カエサル、織田信長、チンギス・ハーン。」

『はい。』

「今回、彼を逃がしたことで同盟は大きな犠牲を払った。そして次もある。それを考えると彼を取り逃がした事による血の代価はいかほどになるのか考えると恐ろしいよ。」

「何れは私も、そしてお前も艦隊司令官として彼と向き合う時がくるだろうな。その時はどちらの血が流れる事になるのか。」

『教官……』

「御苦労だったな。ヤン、ハイネセンに戻ったらユリアン君と共に食事に行こう。いいな、約束だぞ。」

意識的に笑顔を作って約束を迫ると苦笑しながら頷いた。

『分かりました。ユリアンには伝えておきます。』

「では、またな。」

そう言って敬礼をするとヤンも答礼を返してくる。それを確認してから通信を切った。

椅子を回転させて窓の方を向く。夕陽になろうとする太陽が見える。少し赤みがかった太陽だ。

血生臭い話をしたからか、太陽の色が血の色に似ていると考えてしまう。

今回の戦いで敗戦したと考えたシトレ本部長は次の出兵計画を立案した。

目玉は総司令官に私、副司令長官ユーリ・クーロ大将を据えて計画しているそうだ。

近年は同盟で帝国軍艦隊に損害を与えているのは私。なので総司令官と言うことらしい。ロボスは元帥に昇進した。それに鈴を付ける意味合いも含まれていると私は睨んでいるが。

私を含めて3個艦隊を計画しているようだ。恐らくは迎撃戦になるだろう。要塞攻略戦は趣味じゃないと常々言っている私にさせることは無いと思う。

同盟と帝国、撃っては撃たれ、殺しては殺され、100年近くが経った。こんな事を何時まで続けるのか。

私も何時までするのか、底知れぬ沼に溺れ、終わりの見えない道を歩いているようだ。

その果てに何があるのか分からず、見えずにいる。

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