銀河英雄伝説~流血と硝煙と運命の日々~   作:雪の師走

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ほぼほぼ外伝のセリフと流れです。

ちょいちょい変えたり、セリフを足したりしてますが会話は基本的に外伝のです。
御容赦ください。

後半もこんな感じになると思います。


第3次ティアマト会戦 帝国その一

宇宙暦794年 オーディン 軍務省 軍務尚書室

 

 

ミュッケンベルガー元帥

 

「それでは陛下の在位30周年記念の式典に花を添えるために出征せよと言われるのか?」

私の疑問に軍務尚書が答える。

「だが司令長官、この数年来叛乱軍の大規模な攻勢が続いておるのも事実だ。先般もイゼルローン要塞に六度目の攻撃をかけてきておる。」

「それは撃退しておるし、その前にはヴァンフリート星域迄進出して、叛徒どもの前線基地を叩いておるではないか。」

「しかし2年前にもイゼルローン要塞に肉薄されておるし、被害もかなり受けておる。」

ヌゥ、と唸り声を出してしまった。

「別に卿だけの責任を問うているのではない。我らは同じ責任を負うておるのだ。」

軍務尚書の言葉に統帥本部総長も深く頷いている。

「ここいらで叛乱軍に手痛い報復をくれてやり、我らも実績を上げねばならぬ時期に来ておると言うことだ。」

「軍務尚書の言いたいことは分かった。だがな、フェザーンからの情報では次の迎撃に叛乱軍はあやつが総司令官として出てくるそうではないか。」

統帥本部総長が引き継いで話してくれた。

「叛乱軍随一の名将ユーリ・クーロか。しかし総司令官としては初であろう?どうかな?」

「分からぬ。だが艦隊運用をみても戦略家と言ってよい。此方が勝てるとは限らないぞ。」

私の言葉に軍務尚書は腕を組んで考え込んだ。

「出征は決定なのだ。出来ることは誰を連れていくかであろう?司令長官は誰がよいのだ?」

「私の他に参謀長を務めてくれたグライフス大将、勝つことを重視するならメルカッツを連れていきたいが艦隊の再編中だ。となるとイゼルローン要塞の駐留艦隊のゼークトか近頃武勲を上げて中将になり1個艦隊を指揮する事になったミューゼル中将辺りか。」

「その事だが興味深い話がある。どうやらユーリ・クーロがミューゼルに興味があるらしい。何でも艦隊運用を見事と褒め、情報を集める指示をだしたそうな。」

統帥本部総長の言葉に事実かと視線を向けると事実だと頷いた。

「では決まりだな。グライフスとミューゼルを連れていくことにする。」

不満があろうと決定は覆ることはない。なら最善を尽くすのみだ。

 

 

 

宇宙暦795年 オーディン 出征式典

 

ラインハルト

 

「中将に昇進して、ようやく1個艦隊を指揮する身となった途端、この出征だ。運気が巡ってきているな。」

「ミュッケンベルガーを見ろ。堂々たるものだ。」

チラリとキルヒアイスに目線だけ送る。

「ただし、堂々たるだけだ。」

私の言葉に溜め息を吐いている。

「閣下、今回の敵はあのクーロ提督が総司令官だそうです。努々油断なさらぬように。」

「キルヒアイス、総司令官と云うことは中央を担当すると云うことではないか。俺が相手をする事は余程の事がなければあるまい。」

「左様ですが…」

「分かった、分かった。気を付けることにしよう。」

「はい…」

 

キルヒアイス

 

現在はイゼルローン要塞で最終的補給を受けている。

ラインハルト様が楽しそうに話しかけてきた。

「聞いたか、キルヒアイス?要塞司令官のシュトックハウゼンと要塞駐留艦隊のゼークトがまた角を突き合わせたそうだ。」

「またですか?」

「それも今度は総司令官の前でだそうだ。それでミュッケンベルガーが仲裁役をせねばならなかったらしい。如何に堂々と双方を宥めたかこいつは見物だったな。」

「どうやらゼークトが出征への同行を望んだらしい。それに対してシュトックハウゼンが要塞を空にしてどうする!と罵ったらしい。」

からかい口調で言うラインハルト様はいつも通りのようだ。

「ラインハルト様もお人が悪い。」

「そういうな。ところで何か用か?」

「その、ミュッケンベルガー元帥の旗艦でそろそろ会議が始まります。ご用意ください。」

真顔に早変わりした。

「あぁ、そうだったな。」

「お忘れでしたか?」

「忘れてはいないさ。忘れたかっただけだ。まだまだ他人に呼びつけられれば出向かざるを得ない我が身をな。」

「ラインハルト様。」

少し注意喚起しなければ。

「ダゴン星域で無能者のヘルベルト大公が惨敗して以来、幾度戦いがあったと思う?」

これは不満を消化させた方がいいようだ。

「さぁ?」

「小競り合いを入れて329回だ。150年間に329回、よく飽きもせずに繰り返したものだ。」

「決着が着きませんでしたから。」

「同盟軍、いや叛乱軍の奴らは戦略を知らんのだ。流血を見ずしてイゼルローン要塞を無力化する方法があるものを。」

「件のユーリ・クーロも参戦していたな。奴が積極的に要塞攻略を行っていたなら興醒めだ。」

此方を見てきた。

「そもそも何故奴らは愚劣にもイゼルローンに固執する。要塞があれば正面から戦って落とさねばならぬと信じている。思考の硬直の極みだな。」

「だからこそ帝国にとっては要塞を建設した意味がありましょう。」

「違いないな。」

少しは鬱憤も晴れたかな。会議への参加を促すか。

「それにしてもそろそろお時間です。シャトルの用意は整ってノルデン少将もお待ちですが。」

「出たくない。どうせ出たところで意見を求められるでもない。無視や悪意には慣れているが不毛な時間を1人で過ごすのはやりきれない。キルヒアイス、せめてお前が一緒なら未だしも、同席するのがあの参謀長ではなぁ。」

「ノルデン少将はお嫌いですか?」

「好き嫌いの問題ではない。奴は使えない。」

「32才で少将です。そうとばかりも言えますまい。」

「子爵家の嫡男だから出世が早いだけだ。奴を見ていると軍も単なる官僚組織でしかないのを思い知る。大体あんな奴を俺の下に付けるとは人事局の悪意が感じられるな。」

「単に配慮が足りないだけだと思いますが。それはそうとラインハルト様。」

再度促すとハァーと溜め息を吐いた。

「俺が出席すると出席者の平均年齢が下がる。其れだけがまぁ取り柄だな。」

愚痴を溢しながら立ち上がられた。ようやく向かわれるようだ。

 

 

ラインハルト

 

「敵の降伏を認めず、完全に撃滅し、もって皇帝陛下の栄誉を知らしむる、此れが今回の目的である。」

ミュッケンベルガー元帥が遠征の目的を話した。

馬鹿馬鹿しいにも程がある内容だ。

(そんなものが目的か。どのような戦略上の課題を満足させるために数万隻の艦隊を動かし、数百万の兵士を死地に立たせ、膨大な物資とエネルギーを消費するのか。)

(その根本から目を反らし、課題を戦術レベルに限定し、尤もらしく討議したところで何の益がある。)

(こいつらは戦争ゴッコをやっているだけなのだ。自由惑星同盟等と称する叛乱軍の輩と似合いの好敵手と言うべきだろう。)

(それとも何か。帝国内での抗争に敗れて同盟に亡命した数を考えると将来の亡命先を失うことがないように手加減でもしているのか。いや、これは過大評価だろう。全力を上げてもこの程度に違いない。)

「ミューゼル中将、貴官には右翼に布陣してもらう。何か思うところが有るのか?」

(俺を後方に置いて予備にしないところだけは評価に値するな)

周りの視線も感じる。呆れて首を振ったのを咎められたか?

「承知しました。意見と仰られましても特にありません。元帥閣下のご遠望は少官ごとき若輩の考え及ぶところではございません。」

「うむ、では他に意見もないようだし戦勝の前祝いとして酒を開け、陛下の栄光と帝国の隆盛を卿らと共に祈ることとしよう。」

(成すべき事を成してもいないのに勝利だけを確信しうるという精神構造が理解を絶する。)

「それでは、皇帝陛下の恩為に。」

好敵手足り得るかも知れぬクーロ提督の相手も出来ず、右翼でじっとしていろとは。

 

戦闘が始まった。

「独創性の欠片もない陣形から独創性の欠片もない戦闘が産み出されている。」

「ラインハルト様。」

此れがユーリ・クーロの戦い方か?何の事もない平均的な戦いが?だとすれば期待外れもいいところだが。

そう思っていると叛乱軍右翼が動き出した。バラバラになってグライフス艦隊に突っ込んできた。

下がって体勢を整えればいいものを。

「敵将が誰かは知らんが理論を無視することが奇策だと思っているらしいな。それに掻き回されている方も情けない限りだが。」

「下がって体勢を整えればいいものを。」

「ラインハルト様と同じ位置に下がると云うのが嫌なのでしょう。」

「それであの有り様か。器が小さいのか自尊心が大きいのか判断の悩ましい所だな。」

「ラインハルト様の仰る通りですがあの跳ね回っている艦隊の運動は芸術的ですね。」

「芸術とは非生産的なものだな。動きの秩序の無さを見るがいい。エネルギーを浪費するために動き回っているようだ。」

「独創的には違いありませんが。」

キルヒアイスの言葉に首を振ってしまった。

「独創的とは新たな理論を構築することだ。既存の理論を破壊するだけでは独創とはなり得ん。」

「敵ながら見事な用兵ですなぁ。」

前から呑気な声をだしながら近づいてくる男がいる。今回の戦いに参謀長として着任したノルデン少将だ。

「敵将の用兵は既成の戦術理論を越えております。一定の戦闘体系を取らず、さながらアメーバの様に自在に四方に動き回り、意表を突いて痛撃を加えきます。中々非凡と言わざるを得ません。」

「下には下がある。無能者どもが。思いもかけぬところを痛打されたからといって何程の事がある。中枢部を直撃されたわけではないぞ。」

「無能と仰いますが、彼らは帝国軍人として勇敢に闘い、その本分を尽くしております。翻って我が艦隊は遠巻きから牽制なのか威嚇なのか攻撃なのか分からない事をしていますが閣下のお考えは?」

「前進すれば前の艦隊と隣のクーロ提督が攻撃をかけてくるぞ。卿は2個艦隊を相手したいのか。ミュッケンベルガー元帥、グライフス大将は敵との混戦で何も出来ずにいる。我が艦隊がミュッケンベルガー元帥の艦隊に並べば必ずやあの跳ね回っている艦隊は我が艦隊にも入り込んでくる。そうなりたいか!」

「そもそも、あの帝国軍内部に入った敵は速度と躍動性には優れているが他の艦隊との連係を欠き、また補給線が伸びるのを無視しているのが明らかだ。つまりその意図は極端な短期決戦であって、用兵の基本を無視した動きによって、我が軍の混乱を誘い、それに突け込んで出血を増大せしむるにある。」

「だとすれば我が軍は無用な交戦を避け、敵が前進すれば同じだけ後退し、敵がエネルギーを使い果たした時点で反攻に移るべきだ。故に現時点では応戦する必要はない。」

敵が彼方此方に跳ね回っているのだ。此方は後ろに下がる。つまりエネルギー消費量に違いが出る。必ず敵の方が先にエネルギーが尽きるのだ。

「では何時応戦なさるのです?」

「敵が行動の限界点に達したらだ。」

「ほう、何時の事です?一年後ですか?それとも百年後ですかな?」

ここまで言っても分からない阿呆がこの俺の参謀長とは、こいつが可笑しいのか他の参謀長もこんな奴ばかりなのか。拳を力一杯握りしめた。

キルヒアイスが心配そうに此方を見ている。分かっている。手を振り下がるように命じた。

「キルヒアイス、キルヒアイス、俺を褒めてくれ。全くこの2週間俺はよく我慢をしている。一生の忍耐力をここで使い果たしてしまいそうだ。」

「今少しのご辛抱です。ラインハルト様のお手で形勢が逆転すればいずれが正しかったかどんな愚か者にも分かります。その時、思い切り勝ち誇っておやりなさい。」

「そうしよう。だがキルヒアイス、いざ俺が勝ち誇るとお前は言うのさ。彼らは自分達の誤りを知って恥じているのだから許しておあげくださいとな。」

キルヒアイスの前髪に手を伸ばした。

「それにしても同盟軍のクーロ提督は何もしていないな。」

「恐らくは突出した艦隊司令官の独断かと。」

「それでは私の他にクーロ提督も不本意の極みか。」

「そうなりますね。」

まだしばらくはミュッケンベルガー元帥、グライフス大将、叛乱軍のホーランド艦隊との混戦を眺める事になるようだ。




後で修正入れました。

規定に引っ掛かるなら更に修正を入れますがなければこのままいきます。
加筆する事があるかもしれませんが。
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