宇宙歴783年 テルヌーゼン 士官学校
始めての講義を終え、廊下を歩いていると前方から一人の候補生が此方に視線を逸らさずに向かってくる。
ウィレム・ホーランドだ。普通は数メートル先で上官を避けて敬礼をするのがルールなのだが立ちふさがっている。
「ホーランド候補生。何をしているのかな?通行の邪魔になっているのだが。」
顔を険しくして声も厳しい口調にした。そうしたら敬礼をして話しかけてきた。
「クーロ准将閣下にお願いがあり、こうした行動に出た次第であります。」
お願いが直ぐに分かったので憂鬱になった。
「是非ともシミュレーターで1個艦隊同士の艦隊戦のシミュレーションをお願いしたい。」
断ってもしつこく付き纏われるのが一目で分かったので仕方ないから行うことにした。
「分かった。いいだろう。講義後の1600時に第一シミュレーションルームに来い。一戦だけ相手をしてやる。それでいいな?」
「はっ、ありがとうございます。」
敬礼をして去っていた。いずれは来ると思っていたが予想よりも早かったな。我慢が出来ないのか、自分の実力に自信があり、それを証明したいのかどちらにしても度しがたいことだと思い、苦笑してしまった。
午前中の講義を終えて、昼食を取ろうと教官室を出ると隣の事務局からキャゼルヌ大尉が出てくる所だった。
「クーロ准将、お昼ですか?よろしければご一緒させてもらえませんか?」
「ええ、構いませんよ。行きましょうか。」
「そういえばウィレム・ホーランドと模擬戦をすると聞きましたが?」
「耳が早いですね。流石は後方支援の練達者として有名なキャゼルヌ大尉ですね。」
「勝てるのか?奴は中々優秀と聞いているが?」
「問題ありませんよ。多分。」
私の答えが面白かったのか笑っている。
「いや、悪いな。自信が有るのか無いのか分からないからつい笑ってしまった。」
「構いませんよ。」
食堂に着いたのでプレートを貰い、教官用の席で食べ始めた。
「経験の差が大きいですから此方が有利ではあるでしょうね。」
「俺はよく分からんのだが経験の差っていうのはそんなに大きいのか?」
後方支援畑のキャゼルヌ大尉では今一分からないみたいだ。
「経験の数が多いということは取れる選択肢が多いということになります。同じ局面でも攻める人と守る人が出るのはそのためです。そして流れがどちらかに傾いた時に適切な判断、決断、実行が出来るかで優位か不利かが決まります。」
「そして素早く状況判断を適切な決断をして指揮下の部隊に実行させることが出来るのが有能か無能かの違いでしょうね。」
「なるほどそれが出来たからクーロ准将は昇進しているというわけですね。」
キャゼルヌ大尉のヨイショに笑ってしまった。
「私の昇進は戦場の戦功と後方の取り締まりの半々なので少ないですよ。」
「私も時間が合えば見に行ってもよろしいですか?
「ええ、多くの方が来るでしょうから1人や2人増えても大丈夫ですよ。」
「では見学させてもらいますね。」
「ほどほどに頑張りますよ。」
丁度食べ終わったので、そうキャゼルヌ大尉に告げて食堂を後にした。