サボってました。仕事と趣味で忙しくて。
週1か二週に1かで投稿頑張りますp(^-^)q
今回はラップ視点オンリーです。
宇宙暦795年 アスターテ星域 旗艦
ラップ少佐
ホーランド提督との通信が切れた。副司令長官は映らなくなった画面を今だに見ている。
そんな様子を見ていられなくなったのだろう。ワイドボーンが声を掛けた。
「閣下、宜しいので……」
声を掛けられた閣下が顔をワイドボーンに向けると口を噤んだ。
そしてまた正面を向いた。
「参謀長、プランF35ーD51 を全艦に通達して下さい。」
唐突の命令に参謀長に視線を向けるとチュン参謀長が顔を強張らせている。
何だ。手元にある端末で作戦情報を検索する。
こ、これは!思わず閣下、参謀長、ワイドボーンに視線を向ける。
閣下は変わらずに前を向いている。参謀長は顔を強張らせながら口をパクパクしている。
ワイドボーンも顔を蒼白にしながら端末を凝視している。
「参謀長、復唱はどうしました?」
「か、かしこまりました。オペレーター!プランF35ーD51を通達しろ!」
我に返ったワイドボーンが閣下に質問をした。
「閣下、本当にこの作戦案をするのですか!?」
混戦状態の敵2個艦隊を味方諸とも撃つ作戦だ。ウランフ提督と協力すれば壊滅的被害を与えられるだろう。ホーランド艦隊をも巻き込んで戦果になるが。
その後はスパルタニアンで掃討戦を行わせ、本艦隊とウランフ提督でミューゼル艦隊を挟撃に移る作戦案だ。
「悩んでいる。勝つ為の現在の最良の作戦だ。」
「味方諸とも撃つことになりますが。」
「命令無視、抗命罪だ。ホーランド艦隊を味方と呼ぶか呼べるのかどうか悩んでいる。」
クーロ閣下とワイドボーンの遣り取りを見ているとチュン参謀長が間に入ってきた。
「閣下、副司令官、分艦隊司令官は了解、命令を待つと返信がありました。」
ワイドボーンが顔を引き攣らせている。恐らくは俺もそうだろう。
「参謀長、小用に行きます。10分程艦橋と指揮を頼みます。ラップ、付き合え。」
そう言って立ち上がり出ていこうとしている。
「恐らく、閣下は指揮下の艦隊の引締めを行ったのだ。命令に背けばこのような手を使うことも有ると。」
チュン参謀長が溜め息を吐きながら教えてくれた。
「ラップ少佐、早く行きたまえ。」
参謀長に促されて後を追った。
前を歩く男がいる。ユーリ・クーロ大将、同盟軍副司令長官の地位に居る。
士官学校を卒業し中尉任官すると数ヶ月で任地の汚職を検挙して昇進した。近隣惑星も捲き込む大騒動に発展。大尉に昇進。その後、パトロール艦隊に勤務し、サイオキシン麻薬の密輸を阻止。少佐に昇進。
その後、ほとぼりを冷ます目的でフェザーンに駐在武官として赴任、そこでも産業スパイを帝国軍人と協力して逮捕。中佐に昇進している。
辺境の補給基地に後方支援の任務に着くと会計の詐称、偽証、地元の大企業との癒着を暴き、大佐に昇進。
パトロール艦隊の司令として6隻を指揮し、帝国の先遣艦隊を撃退する。
その功績を持って士官学校教官に赴任となっている。
一年に一回のペースで昇進している。
あまりの昇進スピードに待ったをかける意味の士官学校教官だった。30歳になる前で将官になる予定だったのだ。自身が前線を望まず、昇進を望まなかったからこうなったが望んでいたらブルース・アッシュビーを越える最年少司令長官になっていたと思う。それくらいの隔絶した能力がある。政略、戦略、戦術どれを取っても一流だ。
戦場にあっては冷静沈着で怜悧、冷徹な程に生死、勝敗に拘っている。
前を歩いているクーロ大将が振り返った。
「ラップ。聞きたいこと、言いたいことがあるなら遠慮無く言え。何も言わずにジッと見られるのは気分がよくない。不平、不満を腹に抱えたまま副官を勤められても俺がしんどい。お前もだろう?」
そう言ってきた。予想外の言葉に慌てて返事をした。
「その、味方ごと攻撃する作戦案を出されてましたが。」
「まぁ作戦案としては秀逸だが無理だろうな。市民感情や政府、軍上層部が五月蝿くなる。負けると分かっていても、勝つ為の手段があるのにも関わらず、手が出せないとは歯痒いことだ。」
何も言えない。言えることがない。
「今回は我が艦隊の被害は軽微と云うことで自らの心と折り合いをつけるしかないな。」
そう言って前を向いて歩き出した。
目の前でホーランド艦隊がやられている。攻勢限界点がきたのだ。
「戦艦エピメテウス、撃沈!!ホーランド提督戦死!!」
オペレーターの報告に艦橋が固まった。
「第11艦隊に後退の命令を出せ。指揮は私が引き継ぐ。可能な限り早く後退しろと伝えろ。」
閣下が指示を出すと動き始めた。
「ウランフ提督より通信が入りました。」
「モニターに映せ。」
「総司令官閣下、予想通りになりましたな。」
「ウランフ提督にはミューゼル艦隊の監視を頼みます。彼が追撃戦に参加しないなら両翼からミュッケンベルガー、グライフス艦隊を挟む形にしましょう。」
「かしこまりました。」
互いに敬礼をして通信を終えた。
帝国の追撃戦も1時間で終わった。ミューゼル艦隊が動かないと確認出来たウランフ提督と左右から挟み込むように攻められて音をあげたようだ。
概算だが帝国は5000隻、同盟は10000隻は失ったようだ。
帰還後に今回の論功行賞が行われた。色々な要素が絡み合った出征であったがクーロ副司令長官はホーランドに厳しい処分をと望み、国防委員長、ロボス司令長官が折れたことで戦死による2階級特進は無し、1階級降格の少将になるそうだ。
そしてどう云った意図、目的かは分からないがクーロ副司令長官に最新鋭の旗艦級戦艦が与えられることになった。
旗艦の名前は『アトラス』機動性、防御力、通信能力が大きく強化されており、最後まで生き残って指揮を取ることに主眼がおかれた戦艦である。
数々の戦いを潜り抜け、数奇な運命を辿ることになる戦艦とクーロ提督の出会いがあった。