銀河英雄伝説~流血と硝煙と運命の日々~   作:雪の師走

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遅くなりました。ハイネセン到着回を入れました。

次は間違いなく会議会です。お楽しみに。

といってもほぼ原作通りに進みますが


ハイネセン到着

宇宙暦796年  ハイネセン近郊 戦艦アトラス ブリッジ

 

マルコム・ワイドボーン准将

 

イゼルローン要塞を出てから一月が経った。ヤンがイゼルローン要塞を落としてから一月半が過ぎた計算になる。

ヤン提督率いる第十三艦隊の司令部要員がアトラスに移ってきた。このままアトラスで宇宙港に降りて、英雄としての役割を全うしてもらう予定になっている。

ただ艦橋内の空気が悪い。イゼルローン要塞での話し合いからヤンとクーロ元帥の関係改善がなされていない為だ。

一応、チュン参謀長、俺、ラップの三人で来たる帝国領進行作戦案の相談を元帥の居ないときにしているが。

恐らくは閣下は気付いているだろうな。卒のない方だから。

「ラップ大佐、ヤンを呼んでくれ。それと皆は悪いが席を外してくれ。」

閣下の言葉に皆が顔を見合わせた。頷いて席を立つ。我々が後ろにいる第十三艦隊の司令部要員の元に近寄ると彼らは緊張を露わに姿勢を正した。

それを素知らぬ顔でラップはヤンに閣下が呼んでいる旨を伝えた。

ヤンが閣下の傍に恐る恐ると近寄ると閣下が顔を少しヤンの方に向け、話しだした。

しばらくは互いに緊迫した空気を出していたが会話を続けていくと空気が弛緩していくのを感じた。互いに笑いながら話している。互いの気持ちに折り合いがついたようだ。

これから始まる未曾有の事態に対処しないといけない状況で二人の関係改善は間違いなく大きなプラス材料がなるだろう。

 

 

 

宇宙暦796年  ハイネセン

 

「あの、いいんですか?僕なんかを連れて来て?」

隣を歩くユリアン君に尋ねられたので正直に答えた。

「先にユリアン君との予定が入っていたんだ。先方が嫌ならそっちを断るさ。それが約束というものだ。」

「ですが……」

「それよりも外食になってしまって申し訳ないね。」

「いえ、それは大丈夫なんですが。」

ユリアン君の恐縮した態度に擦れていない素直な性格に好感を持つ。ヤンがイゼルローン要塞陥落の英雄として昼夜問わずにあちらこちらに駆り出されている為、一人のユリアン君を誘って食事をと思ったのだが。

私自身もジェシカがエル・ファシルにいるので一人だから丁度食事相手に良かったのだが。

「先方の奢りだからしっかりと食べるんだよ。分かったね。」

「はい。」

いい返事だ。

「さぁ、入ろうか。」

そう声を掛けて店に入ると名前と予約の待ち人がいることを伝えると奥の個室に案内された。

個室に入ると案の定といった人がいた。財務委員長ジョアン・レベロ、人的資源委員長ホアン・ルイの二人だ。

「シトレ本部長から会ってほしい人がいると聞いてきたのですがやはりと言ったところですね。」

私の言葉にホアン・ルイ委員長が訊ねてきた。

「私達が待っていると分かっていたのかね?」

「いえ、予想の何人かの内に入っていただけです。二人共。二人一緒とは思いませんでしたが。」

ユリアン君と二人、席に座ると飲み物と食事のコースのメインを聞きに来た。私はワイン、ユリアン君はジンジャーエールを頼み、メインは二人とも肉料理をお願いした。

「さて、時間も限られている。色々と君に聞きたいことがあってこうした場をシトレに頼み、用意してもらった。」

「シトレ本部長とはどういった関係なのです?」

真面目な顔でレベロ委員長が話してくれる。

「私と彼は同郷の幼馴染でね。私は政治家、彼は軍人になったから馴れ合うわけにもいかないが互いに同盟の将来に影響を持つ立場になったから必要最低限の連絡を取り合っている。そして彼が今回の議題になっている帝国領進行作戦案を危惧し、自身の進退が懸かっているという。」

そこまで言ってから隣のホアン・ルイ委員長が引き継いだ。

「なので後任と必要な話し合いをするべきだと言うので場を設けさせてもらったと云うことだ。」

「分かりました。そう云うことなら。で、何を話し合うのです?」

「君は帝国領進行作戦を危険視しているが何故かね?」

毎回同じ話をしないといけない状況に辟易しているがこれも仕事と割り切るしか無い。

「はい、此方が使える艦隊は私の第一艦隊、第三艦隊、第五艦隊、第七艦隊、第八艦隊、第九艦隊、第十艦隊、第十二艦隊、第十三艦隊の9個艦隊です。」

司令官は私、ルフェーブル、ビュコック、ホーウッド、アップルトン、アル・サレム、ウランフ、ボロディン、ヤンだ。

ここまでは良いかと視線を向けると二人が頷いたので続ける。

「それを迎撃する帝国軍はローエングラム元帥の9個艦隊、ミュッケンベルガー元帥の9個艦隊合わせて十八個艦隊、それに貴族の私設艦隊が十万隻は優に超えると言われています。ざっと十二万隻とすれば同盟では十個艦隊に匹敵する数です。三十個艦隊に近い敵を相手に9個艦隊で帝国領に進行など正気の沙汰とは思えませんね。」

「数だけで勝敗は決まらんだろう?先のアスターテでは倍の同盟軍が負けた。」

「戦いは数と補給等を含めた後方支援、そして戦略、戦術が複雑に絡み合い勝敗が決まります。しかし大抵は戦力差が大きなアドバンテージになり、押し切られてしまいます。」

「どうにかして勝つ事は出来んかね?」

政治家というのは無茶や無理、夢想を押し付ける癖があるのか。

「此方が9個艦隊でローエングラム元帥の9個艦隊と対峙した時にミュッケンベルガー元帥、貴族艦隊に対応出来る予備がありません。側面や後方を何時突かれるか恐る恐る戦う羽目になります。」

二人が険しい顔をしている。私の話を理解してくれたようだ。

「分かった、勝つのは厳しい。なら巧く畳む事を考える必要があるな。」

「それに関してはシトレ本部長が司令長官、総司令部の主導で進めさせ、私は一貫して反対の立場に立ち、彼らの作戦の破綻を待ち、責任を取らせ一掃する予定です。」

二人が厳しい視線を向けてくる。

「私は敗戦した後はイゼルローン要塞での防衛に専念し、同盟、同盟軍の財政、軍事の立て直しを図るべき提案、提言する予定です。国家として借金をしながら戦争等バカの極致でしょう。」

私の発言に若干の苛立ちを見せながら此方にこれからの話をしてきた。

「今回の進行作戦で政府内の主戦派は力を失うだろう。そこに私達の反戦派、ソーンダイク率いる和平派が票を伸ばし、席も伸ばすだろう。政権運営を担当するまでかそれに匹敵するまで行くと思う。そうなったら君にも君の奥方にも活躍してもらう事になるだろう。協力してくれるかね?」

「私は私の考えで彼女は彼女の意思で活動しています。協力出来ることならしますがそれは絶対ではないことは御理解下さい。」

二人が顔を見合わせて頷いた。恐らくはそれで良いといったところか。

「分かった。今日は有意義な話し合いが出来たと思う。感謝している。」

そう言われたので軽く数cm程度頭を下げて此方もと意思表示をした。

食事も終わり、デザートを食べて店を後にした。ユリアン君と歩きながらヤンの家に送っていく。

「また戦争になるのですか?」

「ああ、残念ながら今の政府では帝国領進行作戦が決定されるだろう。」

「皆さん、無事に帰ってきますよね?」

不安そうに此方を見ながら訊ねてきた。

「正直に言うと分からない。不確定要素が敵味方に多すぎて未来の予想、想定が追いつかない。私もヤンもどうなるか。」

「そんな……」

「だが、最善を尽くすことを尽くさせることを誓う。私もヤンも。」

「ありがとうございます。」

私の言葉に安心したようだ。しばらく歩くとユリアン君が相談があると言ってきた。

「僕は将来軍人になりたいんです。ですが…」

「ヤンが反対しているか?」

「はい、死んだ父が軍人でした。今も遺族年金や支援を受けているので。」

「ヤンにもそれくらいの金はあるだろう?君の成績ならフライングボールのプロや大学に行ってもいい。働きたいというなら交易会社を私が紹介してもいい。」

「ですが………」

「君が本当に考えて決めたのなら応援しよう。私は周囲に流されて軍人になった。代々医者の家系だったが父は何も言わなかったから誘われるまま士官学校に入った。」

ユリアン君に視線を向けると困惑している。

「後悔しているのですか。」

「父が医者になれといえば医者になっただろう。自分で決めず他人に決められるのが楽だからな。生憎と才能もあり、努力も苦にならない性格なので軍人でもメキメキと頭角を現し、四十を前に軍のNo.3だ。だが敵も味方も多く殺す今の立場が苦痛を伴うものであることを理解していなかった。」

「ユリアン君、君が本当に軍人になりたいなら推薦書は書いてやる。ヤンでは士官学校は頼りにならんからな。諸々よく考えるんだな。」

歩いていたユリアン君が立ち止まった。

「もう少し考えてみようと思います。自分の将来について。」

「ああ、一回限りの人生でやり直しがきかない。後悔がないようにな。」

「はい!」

少しは吹っ切れたのだろう。しっかりと返事をし、歩き出した。若者の苦悩しながらも前に進もうとする姿勢に嬉しくと思うと同時に後悔のないように協力出来ることはしてやろうと思う。

頑張れよ、ユリアン君。

 

 

 

宇宙暦796年  ハイネセン 統合作戦本部

 

必要な書類にサインをしていると来客のベルが鳴った。誰かと思ったらヤンがやって来た。

「教官に最高幕僚会議へ一緒に行かないかとお誘いに。」

チラリとヤンを見ると頭を掻いている。

「分かった、直ぐに準備する。少し待て。」

そう言って準備をする。といっても脱いでいた上着を着て、用意していた書類の入ったバックを持って行くだけだ。

「行こうか、ヤン。」

「はい、お供させていただきます。」

そう言って一歩後ろを歩いてくる。私は元帥、ヤンは中将だ。

「ユリアンの進路の相談に乗っていただけたようでありがとうございます。」

「大した事は言っていない。自分の人生だ。自分でしっかりと考えて決めろって言っただけだ。」

「それでも感謝します。義務感からか軍人になると考えていたのが自分の人生に目を向けるようになりました。」

「そうか。だが今からは私達の人生について考えよう。馬鹿馬鹿しい作戦案を元に馬鹿馬鹿しい会議が開かれる。」

「えらくあけすけですね。気持ちは分かりますが。」

「ヤン、お前も思うことがあるならしっかりと発言しろ。そして己の立場を明確にしておけ。」

「はい。」

「さあ、行こうか。冗談のような本気の、本気のような冗談な会議に。」

私の言葉にヤンが失笑を漏らした。これから同盟史に残る会議が始まる

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