前半は原作の帝国軍の会議です。
次は同盟の話の予定です。4月中に上げれるように頑張ります。
宇宙暦796年 首都星オーディン ローエングラム元帥府
エルネスト・メックリンガー
アスターテ会戦で叛乱軍に勝利したミューゼル上級大将は貴族としてはローエングラム伯爵家を継ぎ、軍人としては元帥に昇進なされ、宇宙艦隊副司令長官に任命され、宇宙艦隊の半数を指揮下に入れられた。
そのローエングラム元帥が元帥府を開かれ、何人もの軍人を自らの元帥府に招聘なされた。私もその内の一人だ。
他にはミッターマイヤー中将、ロイエンタール中将、ビッテンフェルト中将、ケンプ中将、ワーレン中将、ルッツ中将、キルヒアイス中将の7人が正規艦隊司令官として配属された。
これに私とローエングラム元帥を入れ、9個艦隊がローエングラム元帥府の戦力になる。
我々、艦隊司令官に招集命令が下され、定刻にローエングラム元帥が会議室に現れた。
恐らくは最近、市井の民衆にも拡がっている叛乱軍の侵攻作戦についての話し合いが行なわれるのだろう。兵力三千万人を越え、率いる将は当代無双と言われるクーロ元帥だ。市井の民衆も貴族も政府も、そして我々軍人も気になる話だ。
前にローエングラム元帥が来られ、我々の方を向かれた時に敬礼を行う。元帥が答礼を返されてから手を下ろす。
「卿等も承知の事だろう。自由惑星同盟を僭称する辺境の叛徒共、帝国の前哨基地であるイゼルローンを強奪、占拠した。情報によれば現在、敵は彼の地に膨大な兵力を結集しつつある。推定では艦艇二十万隻、将兵三千万。」
場に驚きの声にならない声が響いた。
「叛徒共は我が帝国の中枢部へ向け、全面攻勢をかけてくるつもりだ。この敵の妄動に対し、私が迎撃の任に当たる事になった。近く勅命が下るだろう。卿等の善戦を希望する。」
ローエングラム元帥府に所属し、正規艦隊司令官になっての初の戦いが叛乱軍の大攻勢を迎え撃つとは得も知れぬ昂揚感を感じずにはおれまい。
「要するに他の部隊は全て後宮の飾り人形。まるで頼りにならないというわけだ。昇進と勲章を手に入れる良い機会だぞ。」
ローエングラム伯のあからさまな言葉に失笑と苦笑が漏れた。
「昨日、帝国軍3長官会議で決まった事を通達する。敵のクーロ元帥を撃ったものは2階級特進、250万帝国マルクの賞与、双頭鷲武勲章の授与、トラウンシュタイン産バッファローの毛皮を1枚下賜される事が決まった。」
「「「「「「おお〜〜〜〜〜〜〜。」」」」」」
私だけではなく、他の艦隊司令官も驚愕の声をあげた。
2階級特進だけならまだしも、元帥の年間給与と同額の250万帝国マルクに双頭鷲武勲章、トラウンシュタイン産バッファローの毛皮とは破格の恩賞ではないか。
一人の命に此処までの物を付けるとは。
「では卿等の意見を聞きたい。我々は如何なる戦術で叛徒共を迎え撃つか、忌憚無く申してみよ。」
先ずは好戦的なケンプ中将、ビッテンフェルト中将、ミッターマイヤー中将辺りが進言するだろう。
「敵がイゼルローン回廊を出ると同時に叩く。これに優る戦術はありますまい。」
ビッテンフェルト中将が自信満々に言い、手を打ち合わせた。確かに妥当な作戦案だ。これが第一案に出るは当然の作戦案ではある。
「確かに。敵の出現する宙域を特定でき、先頭を正面から叩くことも、半包囲体勢を取ることも可能です。」
ミッターマイヤー中将がビッテンフェルト中将の意見に賛意を示した。
「叛徒共は帝国領を寸土も踏むことなく逃げ失せましょうな。」
ミッターマイヤー中将が賛意を示した事に自信を深めたのかビッテンフェルト中将が更に言い募った。
「卿等の意気や良し。だが、回廊出口での迎撃は敵も予測しているはず。先頭には精鋭を配置している可能性が高く、叩いた所で残りが回廊から出てこなければ攻勢の掛けようがない。」
ローエングラム伯の言葉に私も皆も驚きの声を上げた。確かに叛乱軍の迎撃に適した作戦案だ。無難だか堅実のものだ。
それだけではローエングラム伯は不満だと言っている。
「では、どうなされると?」
ミッターマイヤー中将が疑問を呈した。
「叛乱軍を帝国領奥深くまで侵攻させ、時期を見て殲滅する。」
艦隊司令官皆が驚愕の顔を見合わせた。
「て、帝国領への侵攻を許すと仰っしゃるので!?」
ビッテンフェルト中将が我々の思いを代弁してくれた。神聖不可侵なる帝国領への侵攻を許すとなれば皇帝陛下、門閥貴族、政府のローエングラム伯を嫌っている、危険視されている方々に問題にされるのでは……
「帝国領奥深くまで侵攻させ、戦線と補給線が限界まで伸び切った所を全軍で攻撃する。敵は全兵力の6割を投入してくる。我々はこれを掃滅し、叛徒共の反抗の意思を完全に打ち砕く。それによって我々が力秀でたる者達だと云う事を叛乱軍にも帝国臣民にも知らしめる。」
ローエングラム伯の仰っしゃられる事は分かるが……
「オーベルシュタイン。」
我々、艦隊司令官の後ろに居る一人の男をローエングラム伯は呼んだ。
先のイゼルローン要塞陥落の折に駐留艦隊司令官ゼークト大将の参謀であった男だ。ゼークト大将の元を去り、敵前逃亡の罪に問われていた処をローエングラム伯が帝国軍3長官に口添えし、自らの元帥府に入れたと聞いたが……
「では本作戦の要旨を説明いたします。」
感情の起伏なく、淡々とした口調で話しだした。
作戦の中身を聞かされたが皆が驚きの顔をし、周りの様子を伺いながら沈思黙考した。確かに敵に多大な負担を与え、勝つまでの時間を早める事が出来るだろう。しかしそれは辺境の貴族、辺境の臣民に多大な負担を掛け、ローエングラム伯への要らぬ嫌悪、憎悪、嫌疑が出ないか?
叛乱軍を掃滅後に叛乱軍の脅威が激減した時、ローエングラム伯の排除へ向かわぬ保証はない。帝国への脅威は圧倒的な軍才を持ち正規艦隊の半数を指揮下に置いており、帝国、政府、門閥貴族への反感、敵意を持っていると見られているローエングラム伯と見られる可能性がある。元帥は大逆罪以外では処罰されない特権を持つが我々正規艦隊司令官は違う。政府、門閥貴族、軍部の話し合いでローエングラム伯の排除に動く可能性だってある。
名誉職へと昇進させ、実戦部隊から離す。これでローエングラム伯の危険性は大きく削がれる事になるだろう。
嫌な考えばかりが脳裏を過ぎる。ローエングラム元帥府に入った今、最早この方と進むしかないのだが一抹の不安を心に宿す事になった。
宇宙暦796年 首都星オーディン ミッターマイヤー邸
オスカー・フォン・ロイエンタール
元帥府での会議が終わり、ミッターマイヤーに夕食を共にしないかと誘いを受けた。了承すると奥方に連絡すると言って足早に目の前から去り、自室へと向かったミッターマイヤーに苦笑していたのが昼過ぎであった。
そこから夕方まで艦隊戦力の確認と司令部要員、副司令官、分艦隊司令官との打ち合わせ、補給関連の決裁をし、ミッターマイヤーから誘いの通信が入ると仕事を切り上げ、共にミッターマイヤー邸へと向かった。
花屋へ連絡して用意した奥方へのプレゼントの薔薇の花束を見たミッターマイヤーは苦笑して、俺が夫なのに何もしない酷い男に見えないかと告げてきた。
それに私も苦笑し、なら卿も奥方に何か送ればよかろうと助言した。そうだなそれが良いと笑って何を送ればいいか訊ねてきたので、そこは卿の才覚の見せ所だろうと告げると苦手なのだが自分で考える事に意味があるかと納得したようだ。
家に着き、呼び鈴を鳴らして玄関を潜ると直ぐに奥方が出迎えてくれた。
「ウォルフ、おかえりなさい。ロイエンタール提督もようこそいらっしゃいませ。」
ミッターマイヤーと私に挨拶をしてリビングに案内をしようとする奥方を引き留め、薔薇の花束を今日のお礼として渡すと折角だからリビングに飾ろうと言い花瓶を持ってくると去って行った。
ミッターマイヤーがリビングに行っておこうと言い、案内してくれた。テーブルに食事の準備が大半出来ていた。
席に着いて一心地つくと奥方が花瓶に活けられた薔薇とワインを持ってきてくれた。 ウォルフと言い、ミッターマイヤーにワインを渡して俺のグラスに入れるように促した。
「直ぐに残りの料理を持ってきますわね。」
そう言って足早にリビングからキッチンへと立ち去った。
「さぁ、ロイエンタール。先に始めていよう。」
そう言ってミッターマイヤーはボトルを俺の方に向けていた。苦笑しながらもグラスをミッターマイヤーの方に差し出すとトクトクと小気味の良い音が鳴り、赤褐色色の液体がグラスに注がれた。注がれたグラスをテーブルに置き、ミッターマイヤーと声を掛けるとボトルを差し出してきた。それを受け取り、ミッターマイヤーのグラスにワインを注ぐ。
互いに注ぎ終わると丁度良いタイミングで奥方が料理を持ってきてくれた。
互いの前にメインを置いてくれ、「さぁ、食べましょうか。」と声を掛けてくれた。
それを見てからワインボトルを奥方に差し出すと少し驚きながら「では一杯だけ。」と言ってグラスを持ったのでそれに注いだ。
食事が始まると奥方の美味しい料理に舌鼓をうち。料理を褒める言葉だけが話題だった。
1時間程で食事が終わると今度は酒席になった。話題はやはり、今度の叛乱軍の事だった。
「叛乱軍が大軍で攻めてくるという話がオーディンに拡がっています。ローエングラム元帥が迎撃に出ると専らの噂です。」
奥方が不安そうな表情で不安を口にした。ミッターマイヤーが厳しい表情をしているがそれでは不安を煽るだけになると判断して笑いながらある程度の真実を伝える。
「叛乱軍がイゼルローン要塞を落とし、その勢いのまま帝国領への侵攻作戦を決行するようだ。」
「おい、ロイエンタール!」
私が真実を話し始めた事にミッターマイヤーが注意をした。
「ミッターマイヤー、大凡バレているのだ。下手に隠しても何れはバレる。此処はしっかりと事実を伝えた方が良い。」
そう言って奥方の方に視線を向けると姿勢を正して聞く体勢になっていた。
「叛乱軍は総兵力の半数を超える規模らしい。」
私の言葉に驚愕の表情を浮かべ、口元を手で覆った。
「街の噂では帝国でも名将と評されるクーロ元帥が総司令官と……」
かなり不安な表情をしている。クーロ元帥の評価は俺が思っているより高いようだ。だが間違いは正しておかねばな。
「それは間違いだ。クーロ元帥は前線の兵力を指揮する前線指揮官だか総司令官は叛乱軍の宇宙艦隊司令長官ロボス元帥だ。」
それでも愁眉は晴れないらしい。
「クーロ元帥はこの遠征に反対したらしい。これは帝国軍情報部に届いた内容だ。」
「まぁ、何故ですの?」
軍事的な事だからな分からないらしい。
「大規模侵攻作戦。言葉にすれば格好良いがそれに見合ったリターンを得れるかという問題がある。奥方も例えば買った調理器具が値段に見合わなければ不満だろう?それが高価な物であればあるだけ。」
私の例えが面白かったのか口元を手で抑えてクスクスと笑っている。
「それに今回の作戦は必ず決まる作戦だ。大勝利を獲られずとも此方の勝ちは揺るがないさ。」
私の話しに安堵の表情を浮かべていたが、また不安の色が顔を覗かせた。
「まだ何か不安かな?奥方には常日頃から美味しい手料理を御馳走になっている。奥方の不安を取り除く為なら万難を排しても努める所存だ。」
私が冗談めかして言うと不安そうな表情からまぁと嬉しそうな表情に様変わりした。が直ぐに不安げな表情になり。
「ウォルフが危険な目に遭わないかだけが心配で……」
「おい、エヴァ!」
ミッターマイヤーが叱責の声を上げた。
「ミッターマイヤー、そう怒るな。奥方の立場なら不安を口にするのは至極当然の事だ。」
「それはそうだが……」
「早く死んでくれと願われるよりはマシだろう?」
私のあけすけな言葉にミッターマイヤーは苦笑し、奥方は笑っている。
「奥方、心配しないでいい。ミッターマイヤーは帝国でも屈指の名将だ。それにいざという時は私が必ず助ける。奥方には毎回美味い食事を御馳走になっているからな。その恩を返さなければ。」
「まぁ、こんな食事でロイエンタール提督の力添えをいただけるなら更に腕によりをかけますわ。」
そう言いながらクスクスと笑っている。
「そろそろ片付けて休むわ。ウォルフ、ロイエンタール提督をよろしくお願いしますね。部屋はいつもの所を準備しておきました。」
「ああ、いつもすまないな。」
そう言って退室した奥方を確認すると真面目な顔になった。これからが本題なのだろう。
「卿はどう思った?」
「どうと言われてもな。」
答え倦ねていると少し苛立った表情を見せた。
「はぐらかす様な言い方はよせ。」
「と言ってもな。内に外にと厄介事がある状況だ。」
「内の問題を先にしよう。」
俺の言葉にミッターマイヤーが内の問題を話そうと提案し、先に話せと此方を見つめている。
「オーベルシュタインか。出来る男ではあるようだ。」
私の感想に同意する様にミッターマイヤーが頷いた。
「あぁ、切れる男なのは分かった。切れ過ぎるほどだ。」
「問題は奴の切れ味が此方側にも発揮している点だ。」
俺の言う事に今一ピンときていないようだ。
「今回の辺境星域の焦土作戦。それによって叛乱軍に補給の負担を多大に負わせる。辺境だけでも人口は数億人はいるだろう。今回の叛乱軍の遠征の規模は三千万人らしいから軽く見積もっても5倍から10倍だ。その補給もするとなれば半年どころか数ヶ月で補給は破綻するだろうな。」
「しかしそれでは辺境の住民達が飢餓に陥る可能性がある。」
辺境の住民達の心配か。ミッターマイヤーは優しい男だ。こんな男だから俺のような男とも付き合えているのだろうな。
「今回の叛乱軍の目的は帝国の圧政からの解放を謳っているそうだ。それを鑑みれば食料の配布を行わざるを得まい。徴発を叛乱軍がイゼルローン要塞を発った時にすれば一週間程で届く事にはなる。そして叛乱軍が補給の限界にきた所で打ち払い、辺境臣民に食料を返す手筈だ。しかし辺境の食料を徴発した事には変わりない。食べ物の恨みは恐いからな。帝国ではローエングラム伯が一心にそれを負う事になるだろうな。」
「……………」
沈黙が流れた。
「ローエングラム伯が焦土作戦を取ると言った以上、決定事項だ。キルヒアイス中将も意見具申くらいはしていよう。それでも翻意なされなかったという事だ。」
「やるしかないのか……」
苦渋に満ちた表情をしている。
「あぁ、心苦しいのは俺も同じだ。話を変えよう。次は外の話をしよう。」
暗く重い空気を入れ替える目的で違う話を振ってみた。俺の気遣いに気付いたのかミッターマイヤーは苦笑しながら気持ちを入れ替える目的でワインを一口飲んだ。
「ユーリ・クーロ元帥が前線司令官か。」
「奴の軍歴は半分は綱紀粛正だ。前線指揮官としては准将からだな。」
俺がクーロ元帥の軍歴はペラペラと話すのに疑問の顔をしている。
「調べたのか?」
「ああ、情報部に私の知り合いがいて、頼んでみたら冊子をくれたよ。卿も見るか?」
そう言って傍にあった俺の鞄から冊子を取り出し、ミッターマイヤーに手渡した。
「奴の家系はアーレ・ハイネセンのロンゲストマーチで医者を務めていた男の家系らしい。そこから代々医者として働いていたらしい。」
「なるほど。」
ミッターマイヤは頷き、返事をしながら最初の方に書かれている事をなぞりながら聞いている。
「奴自身は幼少期から優秀で勉学で一番以外の成績を取ったことがない。そして15歳の時に3次元チェスで大人も含め1位になる。前代未聞の事だな。」
「帝国でも流行ったクーロシステム。敵に攻勢主導権を渡し、此方は少ない手数で凌ぎ、駒得をする思考の下に生み出された戦法だ。」
俺もミッターマイヤーも嗜み程度に3次元チェスをするが先ず上手くなる為に覚える戦法の一つがクーロシステムだ。交互に指すゲームである以上、駒を攻勢の準備を進めながら前に進める手順がある相手と自身の陣地を徹底防御の構えに出る此方側では手数が違う。
故に防御側が有利に進めれる。敵の攻勢を上手く凌ぎ、相手の損害を大きく、此方の損害を小さくする。その手法に感嘆した覚えがある。
「3年連続チャンピオンになると同時にフライングボールの得点王にもなる。この時も学業はトップを譲らず、ハイネセンでは文武両道の鏡の様に云われたそうだ。」
「天は二物も三物も与えたか。」
ミッターマイヤーが羨ましい声を上げた。確かに此処まで出来れば羨望の目を向けるか嫉妬の念を抱くだろう。
「まあ、そんな男だから大層モテる。ハイネセン屈指の美人との浮き名にも事欠かない。任官するまで1年毎に相手がいる。」
「季節毎に変える卿よりはマシだか確かに多いな。」
此方にからかいの表情を向ける。嫌味がないから腹も立たない。苦笑して返した。
「それにしても軍人にならず医者にでもなっていればいいものを。」
「それには同意する。ローエングラム伯にも土を付けた男だ。只者ではない。」
「ああ。」
互いに先のアスターテの会戦の最終局面を思い出し、振り返っていた。
「ロイエンタール、奴の何が凄いと思う?」
「速さだろうな。」
「速さ?」
俺の言った内容が理解できなかったのか首を傾げている。
「ああ、敵が攻勢に出る。それに対して効果的な防御陣を築きながら刺す一手も同時に行う。此方が陣形を変える、それに対して素早く陣形を変えて一瞬の隙を突く。此方は陣形変更中だから適切な反撃に時間を要する事になる。その間はあちらの独壇場だ。一方的に攻撃する。そして此方が陣形を整えたらさっさと退く。攻撃を受けていた分、此方が更に不利な状況になる。言葉にすれば簡単だがそれを同時進行出来る艦隊司令官が何人いるか。」
「う〜〜〜〜む。」
「先のアスターテでは互いに陣形を変えながら相手を探った。その時に帝国の左翼が血気に逸っていると視たのだ。少し挙動が可笑しかったからな。」
「何?そうなのか?」
ミッターマイヤーが驚きの声を上げた。
「ああ、気になったので調べてみたが確かに前進は速かったが前進に比べて後退が遅かった。どうみても攻勢を掛けたがっているように見えた。そこでクーロ元帥はより大きな隙を作って見せたのだ。」
「それに此方は引っかかったということか。」
「そうなるな。」
ミッターマイヤーがう〜〜〜〜むと唸りながら腕を組んでいる。
「今回の叛乱軍の侵攻作戦はどうなると思う?」
ミッターマイヤーが問いかけてきた。
「クーロ元帥が前線指揮官とは云え、帝国臣民を圧政からの解放を謳っている以上は辺境臣民の保護をしなければならない。つまりは食糧や医薬品、生活物資の供出だな。敵が幾ら多く揃えたとしてもそれを運ぶ手段は限られている。」
「ああ、戦争中だ。最前線になる辺境宙域で民間企業の輸送船は使えないからな。軍の輸送船を使おうにもそれを補うだけの数を揃えることは出来ないだろうな。」
ミッターマイヤーの意見に頷きながら追加で得た情報を伝えるか。
「クーロ元帥が反対したのは焦土作戦をされた時の補給の困難さもあるが辺境を占拠した時に辺境を前線基地化する事の大変さも訴えたらしい。今回の遠征軍の費用と同等の金が少なくとも毎年掛かるだろう。何せ、辺境奪還の軍を帝国が起こす度にハイネセンから艦隊を派遣とはいくまい。距離の問題による時間がネックになるからな。そうなると辺境に駐留艦隊を数個艦隊の規模で置かなければならないだろう。だがイゼルローン要塞を防衛ラインにしておけばその負担は無いからな。安心して戦力の拡充を行える。」
「確かにそうだな。となると叛乱軍は致命的な悪手を打ったということか。」
「そうなるな。後は誰が誰を相手にしてクーロ元帥の首を取るか。取れるのかと云う問題だけだ。」
互いに笑っていた。勝つという一点に対しては間違いなく此方が圧倒的に有利だ。後は何処まで勝ちきれるかが勝負と云うことだ。チラリと時計を見るともう日付が変わろうとしていた。
「そろそろ休もうか、ミッターマイヤー。」
「ああ、話したい事も話せたし休もう。何時もの部屋を使ってくれ。」
「いつもすまないな。」
そう言って。互いにリビングを出た。
いつも皆さん、誤字修正や感想ありがとうございます。