銀河英雄伝説~流血と硝煙と運命の日々~   作:雪の師走

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帝国の旗艦は悩んだんですがノイエ版でいきます。

旧版も好きなんですが…………

何か急にUAとか伸びてて怖いんですが………何かあったんですか?

いや自分の作品が多くの人に読まれるって云うのは嬉しく思いますが急になんでビビってます。


猛る思い

宇宙暦796年 旗艦ヒューベリオン ヤン・ウェンリー

 

 

『アヤツはまだ来んのか!?』

ビュコック提督が幾ばくか苛立ちが混じった言葉を放たれた。

『まさかとは思うが、戦死なされたと云う事は…………。』

不安気に言葉を漏らされたのはボロディン提督だ。

「死んではいないと思います。もし帝国軍が討ち取っていたら大々的に喧伝し、帝国軍の士気を上げ、此方の士気を下げにかかる筈です。そこを考えるに恐らく教官は、今も尚戦っていて連絡が取れる状況にないか、隠密行動中か、ここの戦闘を遠巻きから観戦し、致命的一撃の機を窺っているものと思われます。」

私の考察に納得の表情を浮かべられた。実際に彼が死ぬとは思わない。何ならここにいる誰よりも長生きしそうだ。その事を言うと艦橋の司令部要員、ビュコック、ボロディン両提督と司令部要員が笑った。

『確かにアヤツは無駄に長生きしそうじゃな。こんな筈じゃなかったとかぶつくさ言いながら儂の歳を越えても働いていそうじゃの?』

『確かに。彼程の才覚に努力、財力、身体と全てに恵まれています。100まで生きていても不思議じゃない。』

両提督の言葉にみんなから笑いが溢れた。良い傾向だ。恐らく長引く防御戦闘にイライラや焦燥感、倦怠感など様々な感情を持っている下士官や一兵卒の気晴らしも込めて漫才の様なやり取りをしたのだろう。上官の悪口は蜜の味とも言われるのがよく分かる。

現状、ビュコック提督の第五艦隊10000隻、ボロディン提督の第十二艦隊5000隻、私の第十三艦隊10000隻、モートン少将率いる第九艦隊残存部隊3000隻、アッテンボロー少将率いる第十艦隊残存部隊3000隻の合わせて三万を若干越える数が生き残り、イゼルローン回廊出入り口付近に集まった。

現在連絡が取れていないクーロ元帥以外の他の艦隊は生死が分かっている。現状ここにいるのが帝国領侵攻作戦に参加した艦隊の全てになる。

『それにしても攻めてくる帝国軍。エルネスト・メックリンガーにコルネリアス・ルッツと言ったかの?真に良い将じゃな。クーロ元帥の資料がなくば手痛い一撃を貰っておったやもしれんな。』

『はい。どちらも名将と言って差し支えないかと。一個艦隊同士の戦いでも勝てるか自信がありませんな。』

ビュコック提督とボロディン提督の今攻めてきている帝国軍の2将の評価に自分も賛成だ。碌な隙がない。退却路の確保をし続けるという制約のお陰で打つ手が限られ、効果的な反撃が出来ていない。敵に援軍が来る可能性がある以上は何時までもこうしてはいられない。

暫くすると艦隊の陣形を整え終えたのか、4度目の攻勢を仕掛けてきた。全軍に死守だとビュコック提督の激が飛び、皆が奮戦する。早く来てくれないとジリ貧になる。頼みますよ、教官。

 

 

 

 

宇宙暦796年 ヘルズブレイズ コルネリアス・ルッツ

 

 

『中々崩せないな。』

画面に映るローエングラム元帥府の同僚であり、競争相手でもある艦隊司令官エルネスト・メックリンガー中将が相対する叛乱軍を見て連絡を入れてきた。

4度目の攻勢は先の3度と違い、敵の両端を崩す作戦だった。しかし敵に上手く対応された。今は両端の崩しは諦めて中央に砲火を集中している。

「ここを抑えられれば帝国領にいる叛乱軍は孤立するから敵も必死ですよ。逃げ帰れなくなる。」

そう言い、肩を竦めるとメックリンガー提督も軽く笑いながら頷いた。

『後は撃ち漏らした敗残兵とキルヒアイス提督が取り逃がしたクーロ元帥か。』

今回の戦争の最大の獲物だ。破格の恩賞が貰えるのだ。下の者も功を逸っている節がある。好戦的で前進が早く、後退が遅いのが気になる。相手の作戦行動に制限があるから目立たないが、逆撃を受ける恐れがある。注意して落ち着かせたいが士気、戦意の高さを考えると、変に抑えるのもどうかと考えてしまう。

今の所は問題ないと割り切ろう。このまま行こうと決心する。攻撃命令を出し、攻勢を強めたと云う報告を受けた直ぐに通信兵から別の驚くべき報告があった。

『左方より熱源!…………これは!叛乱軍です!』

なっ!!!このタイミングで敵が来るのか!!艦隊を左方に展開しようにも眼前の敵が見て取ったのか攻勢を仕掛けてきた。

このままでは横っ腹を食い破られる。ぬかった。

 

 

 

 

宇宙暦796年 旗艦アトラス ユーリ・クーロ

 

 

 

「前方に熱源。同盟軍と帝国軍が戦闘中です!」

索敵兵の報告がしてくる。眼前のモニターにレーザーやビームの光源、被弾し爆発する艦船が放つ光が映っている。

小惑星帯を潜り抜け、帝国軍も知らない裏道を通る事により両軍の横に出る形になった。敵が横っ腹を此方に晒している。

「戦術エクスカリバーを行う。全艦に通達。」

司令部要員がざわりと騒がしくなった。ジロリと参謀長に視線をやると、ビクッと姿勢を正して命令を伝達し始めた。

「はっ!戦術エクスカリバーを行う。全艦に通達!」

命令を伝達し終えると、直ぐに艦隊の陣形が変わっていく。紡錘陣形を形成していく。

「閣下。狙撃ポイントは此方でよろしいでしょうか?」

参謀のワイドボーン准将がそう言って端末を渡してきた。示されている。ポイントをチェックすると気になった点があったので修正を指示する。

「3射目はもっと後方にしろ。敵は先ず眼前の部隊との距離をとろうと急速後退を行う。それでは最初の攻撃で空いた穴に攻撃することになる。」

「はっ!直ちに此方を伝達します。」

そう言って端末のデータを飛ばし、各艦に送信し始めた。

2分もしない内に射程距離まで、もう少しという距離になった。

「ミサイル斉射。」

「はっ。全艦ミサイル斉射。」

私の命令を受けてミサイルを保持した艦艇からミサイルが帝国軍艦艇に飛んでいく。射程距離にはまだ間があり、恐らく半ばを行ったところで迎撃されるだろう。

「主砲斉射準備。」

「主砲斉射3連準備!」

今か今かと私の命令を待つ。シーンとした静かな空間に私の静かなる闘志が伝わったの張り詰めたような緊張感と同盟軍最強と謳われる第一艦隊の全力戦闘が行われると云う緊迫感が醸し出しているのだろう。

帝国軍2個艦隊がミサイルで此方のミサイルを迎撃しようとした瞬間に命令を発した。

「撃て。」

「主砲斉射!」

私の感情の起伏を抑えに抑えた声に続いて、チュン参謀長の気合いの入った声での命令が下される。

聖なる剣を模した戦術を喰らえ。死んでいった部下とアップルトンの弔いだ。中央に集結した全艦から攻撃の光が放たれた。

迎撃されたミサイルが巻き上げた広範囲の爆煙を切り裂き敵の中央に集中された攻撃の束が帝国軍を襲う。敵の被害に歓声が上がるが、私はそんな声に一喜一憂せずに次の命令を下す。

「第二射用意。」

「はっ!第二射用意!」

私達の声に直ぐに我に返った兵が動き出す。そうだ!まだ終わっていない!

「撃て。」

「第二射、撃て!」

命令が下される。帝国軍の後方に砲火の束が襲う。また大きな爆発が起こる。今度は私の様子を察したの第三射を待つ態勢になっていた。

「第三射用意。」

「第三射用意!」

粛々と任務をこなす眼前の兵をチラリと見てから、モニターに映る混乱の極致の帝国軍に目を遣る。此方の二射で大層な被害を受けている。斜め後方に引きながら此方にも戦線を引こうとするも混乱が酷く、動きが緩慢で上手くいっていない。

「撃て。」

「第三射、撃て!」

放たれた砲火が帝国軍に襲いかかる。先程の二射よりも爆発は小さいが敵に着実に損害を与えている。どうやら敵は退却するようだ。損害が馬鹿にならないのだろう。前と横に敵を持ちながら戦闘を行い、かつ立て直しなどどんな将にも無理な話だ。賢明な判断と言える。

「私達も敵の後退に合わせて離脱する。全軍に通達。」

返事を行い、皆が動き出した。すると間を置かずに3名から通信が入っていると報告が入り、モニターに映すように指示すると直ぐに映った。

ビュコック提督、ボロディン提督、ヤン提督の3人だ。半分は死んだのか。痛いな。人的被害が大き過ぎる。馬鹿な計画で死んで良い者たちではないのに。

『ご無事で何よりです、副司令長官殿。』

ビュコック提督が何時もの好々爺然とした口調で話してきた。

「何時なったら来るんだ、あの小僧は!とでも言っていたのでは?」

私が笑いながら返すと、大仰に手振りを見せた。

『まさか!私は閣下が必ず生きて戻ってくると信じておりました故、そのような事。』

「そうですか。さて生き残った皆と感動の再会と洒落込みたい所ではありますが、まだ窮地を脱したわけではありません。後退し、軍を再編、敵の追撃に備えたいと思いますが?」

私の問いかけに、皆が一様に頷いた。

生き残った艦隊を聞き出し、再編の指示を出す。

「ボロディン提督は私の艦隊の分艦隊を務めてください。モートン提督、アッテンボロー提督は十三艦隊の分艦隊に。ビュコック提督は直ちにこの場を離脱し、イゼルローン要塞に帰還を。」

最後のビュコック提督を先行し帰還させる命令に艦橋も各司令官もざわめく。

『皆で迎撃戦を成さるべきでは?それに帰還なされるなら副司令長官が帰られるべきでは?』

ボロディン提督の疑問は最もだが、面白くない事実がある。

「私が先行して帰還するとイゼルローン要塞の元総司令部と同士討ちが発生する可能性があります。指揮権の停止を艦隊司令官の総意で正式に決議しましたが、実権を手放していない可能性があります。解任動議を発起したのは私です。それを考えると私ではない方がいいでしょう。」

私の意見に唸り声や渋い声があがる。元々私と仲が悪かった総司令部連中だ。何をするか分からん。

『儂なら大丈夫と言えるのかね?』

「ここでビュコック提督を撃てば軍法会議で反逆罪になります。あの連中に一司令官であるビュコック提督を撃つ度胸はありませんよ。私だったら破れかぶれや気が狂って何かの拍子に撃ってくるかもしれませんが。」

肩を竦めながら私が言うと、なるほどと皆が一様に頷いた。

「それに帝国軍の追撃は烈しさを増します。それを考えると私が残るのが最善でしょう。溜まりに溜まった鬱憤を帝国軍相手に先ずは晴らさせてもらう。」

怒りと決意を込めた言葉に皆が押し黙った。

「ヤン。そこにローゼンリッターのシェーンコップはいるな?」

『はい。直ぐに繋ぎます。』

ヤンに問うと直ぐに繋いでくれた。

『ご無沙汰しております。生きていて何よりで。』

大仰な挨拶をしてきたのでバッサリ切る。

「そんな挨拶はどうでもいい。それよりもお前たちローゼンリッターは全てビュコック提督の艦隊に移動してくれ。」

私の発言に察したのか、表情が変わった。一人の指揮官、一人の戦士のそれだ。

『それはもう一度イゼルローン要塞を攻略せよと?』

「話が早くて助かる。要塞には艦隊戦力はほぼない。つまり要塞内部を守る兵士しかいない。元総司令部は独自の戦力を持っていないが、抵抗されれば手間だ。制圧をお前たちに頼む。」

『手荒く行っても?』

不敵な表情で言うシェーンコップが頼もしい。ここでオロオロされると命じる此方も萎える。

「降伏勧告は必ず一度しろ。それでも抵抗するなら抗命罪、反逆罪で処分して構わん。誰であろうと生死は問わん。」

私の言葉に諌める声が艦隊司令官から出るが関係ない。

「お前たちの命と秤には掛けれんよ。此方の味方と敵になった奴らではな。」

続けた私の言葉に皆が黙った。

『承知した。ローゼンリッター連隊、これより任に服します。』

意気揚々とコイツに頼もしさを感じると同時にこういった所が普通の奴らに信頼されない所なんだろうと思った。まあ俺は使える者は誰でも使うがな。

 

 

 

 

 

宇宙暦796年 ブリュンヒルト ラインハルト・フォン・ローエングラム

 

 

 

「ご苦労だった。卿らは我が艦隊と共に後衛につくように。」

そう伝えるとモニターに映った二人が“はっ!”と敬礼をしたので答礼を返し、通信を切った。

ルッツ、メックリンガーがクーロ元帥に横撃を喰らい、手酷い損害を受けた。ルッツが8000隻近くを、メックリンガーが6000隻を越える数の損害を一連の戦闘で受けた。何方も半数を割り込んだので一個艦隊として計算出来ない為、我が艦隊と共に後衛を務める様に命を出した次第だ。

両名とも一個艦隊を撃破しているから功としては十分ではあるが、またアイツに名を成さしめた事に忸怩たる思いがある。

「中々に上手くいきませんな。」

冷静沈着と云うよりも他人事の様に発言する参謀長のオーベルシュタインに上手くいかない事に苛立ち全身の、特に頭に血が登りカーーーッとなり怒鳴りつけそうになる。

しかし彼の温度を感じさせない態度、視線、声音に幾ばくか冷静になった。

「追撃に移る。全軍に命令を。1陣はワーレン、ケンプ。2陣はミッターマイヤー、ビッテンフェルト。3陣はロイエンタール、キルヒアイスだ。」

手を振って、前から失せろ。命令を発しに行けと合図すると軽く一礼し立ち去った。

イゼルローン要塞まで戦闘隊形を維持しながらの撤退なら5日はかかるだろう。

ここまで敵の戦力を減らしたのだ。次は当代無双の名将ユーリ・クーロ、そしてイゼルローンの英雄ヤン・ウェンリーの首を挙げたいものだ。オーディンで待つ姉上に良い土産話になる。暫くすると麾下の宇宙艦隊の半数、自身の艦隊を含め9個艦隊が進軍準備完了と連絡が入った。モニターに艦隊司令官の面々が映っている。

大きな損害を受けたメックリンガー、ルッツ以外の提督は意気軒昂で今か今かと進軍命令を待っている。

「これより帝国領を蹂躙した叛乱軍を追撃する。一切の情け容赦は無用。卿等の武勲にせよ。全軍最大戦速でイゼルローン回廊に突入せよ!」

『『『『『『『『ハッ!!』』』』』』』』

8人の艦隊司令官が一斉に敬礼して命令を受けた。

ユーリ・クーロ、アスターテで舐めた辛酸を今こそ晴らす。覚悟しろ!




次の更新はSEEDかアオのハコを予定してます。

銀英伝の次の内容は回廊内の戦闘を書く予定です。楽しみにしてくれている方はお楽しみに。
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