何か最近アオのハコに熱が入っています。
もう一回銀英伝熱が起こらないとほぼ1ヵ月1か2ヵ月1更新のままかも。
自分に大事が無い限りは完結まで書く事は、拙作を読んでくれている希少で奇特な読者の方達の為にもお約束します。
宇宙暦797年 統合作戦本部 スーン・スールズカリッター
年が明け、同盟軍の混乱もやっと収束が見えてきた。閣下が四六時中働き、再編に取り組んだ結果ではあるが何とか実戦部隊と後方部隊の形は整った。
第13艦隊2万隻、第1艦隊2万隻、第5艦隊1万5千隻、第11艦隊1万5千隻の4個艦隊が戦力化出来た正規艦隊だ。
とは言っても実戦に耐えうるのは第1と第13艦隊の2個艦隊で他の2つはクーロ大元帥の指示でフェザーン方面にある惑星ウルヴァシーで訓練中だ。
もし帝国軍がイゼルローン要塞を攻めてきたら第1艦隊が援軍として行くことになる。その際の留守を預かるのは後方勤務本部長ウィルコック中将が統合作戦本部長代理になり、職務を滞りなく進める旨が、関係各所で確認された。
2月に入ったこの時期まで組織再編に時間がかかった原因は新年早々に行われた統合作戦本部、後方勤務本部、法務局の一斉摘発があったせいである。クーロ大元帥の名の下、一斉に不正や違法天下りの摘発が行われた。その様は謀反か革命かとテレビ等のメディアが騒ぎ立てた程であった。
しかしその内容を市民が知ると納得と歓喜と怒号の声が上がった。クーロ大元帥が得意とする不正の摘発を行ったこと。それに伴う不正金や使途不明金の額を公表した所、今回の件で摘発された者達への怒号とその摘発を行なったクーロ大元帥への賞賛の声が響くことになった。
当の本人は“これで仕事がしやすくなった”と漏らし、後は法務局に任せ、次の仕事と行動し始めた。
補給部隊や補給基地のスリム化、問題士官の放逐等の処理を行うと昨年の予算の2割程が浮くことが分かり、直ぐに新規艦隊の編成に取り掛かることになった。
それと並行して宇宙艦隊司令部並びに第1艦隊司令部の再編にもとりかかり、やっと終了した所だ。
閣下は、あの悪夢の遠征から帰国して一度も休日を取らずに仕事に励んでいる。そこを憂いたクブルスリー元帥はトラバース法を使い、閣下の身の回りの世話をする従卒兼養子を配することを決められた。
こうすることで、その子の面倒を見る事による休暇を取らせることができると考えられたそうだ。そもそも休暇になるのかという意見もあったが養子になる子には言い含めてあるそうで、しっかりしている子を配したそうだ。
“ビーーーーー”とブザーが鳴った。どうやら件の子が来たようだ。一息入れる為にコーヒーをカップに注いでいる閣下に視線をやると、頷いたので入室を許可し、ロックを外した。
キビキビと歩いて閣下の前に来ると敬礼し、官姓名を名乗った。
「カーテローゼ・フォン・クロイツェル兵長待遇であります。この度、閣下の身辺のお世話をするように仰せつかりました。」
コーヒー片手に億劫そうに答礼を返し、閣下はボソリと一言呟かれた。
「お世話とは夜の世話も入るのかな?」
閣下が気怠げに言った内容を理解したクロイツェル兵長待遇が身体を動かした瞬間に私も動いていた。
宇宙暦797年 統合作戦本部 カーテローゼ・フォン・クロイツェル
言われた言葉を脳が処理し、理解した瞬間には身体が動いていた。反射的、本能的に反応したから“あっ”と思う暇もなかったと後から考えると思った。
手がクーロ大元帥の頬を捉える瞬間に身体が、視線がぶれた。そして直ぐに背中に強烈な衝撃を受け、痛みで目を閉じてしまった。目を開けた瞬間には周りに銃を構えた人達が私を囲っていた。手首足首を踏んで動けない様にもしている。この状況に呆気にとられ、身動き一つ出来なかった。
「閣下、いつも思うのですが。これする必要あります?」
「お前達が常に油断していないか見るのと彼女の内面を見る為だ。事は何事も一石二鳥にだ。」
「それはそうなのですが…………。」
私の眼前で銃を構えている人が幾分納得いかないような声をだしている。
「先の摘発も軍組織のスリム化と膿出し、そして私の派閥への権力集中が目的だった。二鳥どころか三つも大きな獲物を捕れた。十分過ぎる成果さ。」
大きな溜め息を吐いた後、私に手を差し出された。引き起こされると挨拶をしてこられた。先程からクーロ大元帥と話されていた人は主席副官のスーン・スールズカリッター少佐だそうだ。他にも10名程の人が紹介された。艦隊司令部と総司令部の参謀だそうだ。
その後は、スーン・スールズカリッター少佐に仕事を教わった。懇切丁寧に教えてくれるのを不思議に思っていると、第1艦隊の参謀長ラップ准将から教わった事を伝えているだけだそうだ。それでもそれをしっかり教えられるのは自分の中に息づいているからだろう。
そこからは閣下の小用を済ませながら、副司令官司令部や分艦隊司令官司令部へ挨拶を行った。
皆が優しく声をかけてくれ、閣下の事をよろしく頼むと必ず言われた。その一事だけでも閣下が皆から敬慕されているのが理解できた。
仕事が終わり、17時に閣下が乗られる自動運転車に同乗し、家に向かう。
家に入ると、荷物をリビングの椅子に置いてテキパキと家の中を案内してくれた。奥様はエル・ファシルで仕事だそうで不在のようだ。3月に此方に来る用があるから、その時に紹介すると言われた。
私の部屋も教えられ、必要なものがあればここに連絡をして用意してもらうようにと仰られた。
服もクローゼットにびっしりとかけられていた。サイズが合うのかと思ったが軍のパーソナルデータを商人に渡し、それを元に用意してくれたそうだ。
部屋の確認をしておくようにと言われ、様々な箇所を確認すると行き届いた部屋になっていて、文句の一つも出ない部屋を用意してあった。
夕食にしようと呼びに来られたので、2階から降りるとキッチンに入られていて、食材を用意していた。
手伝う旨を伝えるとテーブルを頼むと言われた。ナイフやフォーク、グラスやコップ、調味料を用意すると料理が運ばれてきた。
ポークソテー、スープグラタン、アヒージョが用意された。パンとサラダもあるのでボリュームがある夕食だ。
一口食べると意外や意外、美味しくて驚きの声が漏れた。
「美味しい……こんなの作れるんですね。」
「男の料理だよ。大したものじゃあない。」
苦笑しながら謙遜する彼は年相応の男の人に見えた。
「あの………何で私を従卒に選ばれたのですか?」
私の質問に怪訝そうな顔をしながら質問に答えてくれた。
「従卒を選んだのはクブルスリー元帥、チュン総参謀長だ。私は選ばれた君を資料として見ただけだよ。」
「……………。」
「君には病床の母親がいる。その入院代の工面の為に任官したがったようだね。」
そう。士官学校、下士官学校では規定の給料の半分しか出ない。しかし従卒待遇で任官したら7割が支給される。それを考えて希望を出した。まさか同盟軍一の名将の下へ行くことになるとは思わなかったけど。
「君が正式に任官した時にどの道に進みたいかは君の希望と適性、そして覚悟によって決まるだろう。幸いにも私の部下は軍政、軍略、戦略、戦術、格闘術、銃など様々な事を教えられる人材がいる。君に学ぶ気があるならな。励みなさい。」
「はい。」
私の返事を聞き、一つ頷いた。
「私は周囲にいた友人が皆軍に進む事になっていて、誘われるがまま軍に入った。後悔はないのか?最初で最後に問うておく。」
「分かりません。ただ、閣下のご両親が母の主治医をしてくれていると聞きました。なので閣下にお仕えして少しでもご恩を返せたらと。」
「そうか、分かった。ならよろしく頼む。」
「はい、こちらこそよろしくお願いします。」
この話し合いで多少あった蟠りが多少は減った気がした。
宇宙暦797年 オーディン 厩舎 グレゴール・フォン・ミュッケンベルガー
退役した私をわざわざ訪ねてくるとは………話の内容は想像に難くない。装甲擲弾兵総監であり、現在の上級大将筆頭にあるオフレッサーが来た要件は分かっている。来月、ブラウンシュヴァイク公の別荘で行われる園遊会への参加を要請しに来たのだろう。
反リヒテンラーデ公、反ローエングラム伯、そして打倒エルウィン・ヨーゼフ王政への軍事蜂起、その軍総司令をさせたいのだろう。
「敬礼はよせ。私は軍を退いた身だ。」
馬のブラッシングをして、毛並を整えながら話を聞くことにした。これなら話の内容に乗り気ではない、気が進まないことの証明にはなる。
「近く、ブラウンシュヴァイク公の別荘にて名目上園遊会が開かれます。内実は、ご承知でしょうな?」
「関わるつもりはない。」
「しかし閣下!」
オフレッサーの強い口調に馬が反応した。若干険が立っていたのだろう。
「閣下と呼ぶのもよせ。」
ここははっきりと告げねばならんな。
「あやつの才が未だに分からんか?」
「何故そんなに奴の肩を持つのです!」
「ただ、事実を見極めているだけだ。」
「閣下!」
納得出来ないのか、認められないのか………残念だな。
「引退した自由な身ゆえ、敢えて一つ進言させてもらおう。事実を見ようともしない者達を、あの男は一掃する気でいる。」
「っ!?」
門閥貴族の一掃をする気だと伝えたのが伝わったのだろう。そして私にその気がないのが分かったのか去っていった。
驚いていたな。あやつの目を見れば分かる。この帝国を手にしたいのだ。あの蒼い瞳の奥にある大炎をみた時に理解できた。
心臓に右手を当て、握り締めた。私は歴代の司令長官と比べても然程に差がないと評されるだろう。良くもなく悪くもなくと。
この銀河の行く末は叛乱軍……いや、自由惑星同盟ユーリ・クーロと銀河帝国ラインハルト・フォン・ローエングラムを軸に進むだろう。それを何時まで観客として観ていられるのか。
「さてオフレッサーも去った。そろそろ出て来てはどうか?」
後ろに向かって、そう告げると1人が物陰から姿を見せた。
「大変失礼をしました。ミュッケンベルガー伯。」
「誰だ?」
「私、CR商会の社長をしておりますミリアム・ローザスと申します。」
美しい妙齢の女性が一礼をし、身分を明かした。
「フェザーンで3指に入る豪商の社長か?」
「はい。そして貴方と御縁のあるアルフレッド・ローザスの孫娘でもあります。」
「あのブルース・アッシュビーの総参謀長だった男か!?」
「はい。」
私の驚きに反して落ち着いた女よ。女だてらに大企業の社長をやっているわけではないようだ。相当な修羅場や鉄火場を潜ってきたようだな。そこらの軍人よりも余程に腹が据わっている。
「それで、元敵国の女社長が私に何の用だ?」
「とある方より預かり物をお届けに参りました。」
「わざわざ貴女がか?」
意味有りげに微笑みを浮かべた。余程の大物なのだろうな。
「誰からの贈り物だ?」
「自由惑星同盟軍ユーリ・クーロ大元帥からになります。」
「っ!?なに!?」
今度は不敵な笑みを浮かべた。
「大元帥よりミュッケンベルガー伯へ御言葉を預かっております。この度、軍務を全うされたと聞き及び、お祝い申し上げる。この状況下で長きに渡り司令長官を務め上げられたことに、敬意と称賛を申し上げる。………との事です。」
そうか………あの男がわざわざ祝うだけの事をしたのか。
「こちらクーロ大元帥よりお預かりした同盟の最高級のワインとウィスキーとなります。」
「そうか、有り難く頂こう。そうか………私は生き抜いたのだな。」
感無量とはこの事なのだな。
「どうかな?私の屋敷で一杯付き合ってくれないか?」
私の誘いに一瞬驚いたが、直ぐに可笑しいものを見たかのように笑い出した。
「分かりました。お付き合いさせて頂きます。」
「ありがとう。昔を懐かしみながら飲むのもいいが、口に出したいこともある。」
予想外の来客に楽しい一夜になりそうだ。やはり抜け目のない男だな、ユーリ・クーロという男は。
次はアオのハコを2話、銀英伝かSEEDの早くできた順になるかな?
最近、めっきり寒くなったので皆さん御自愛ください。
短いですがごめんよ〜