銀河英雄伝説~流血と硝煙と運命の日々~   作:雪の師走

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ヤンとの会話

宇宙歴783年 テルヌーゼン 士官学校

 

机に両足を乗っけている候補生に注意をしたら後ろ向きで倒れてきた。そのままの状態で敬礼と挨拶をしてきた。

「戦史研究科初年生のヤン=ウェンリーです、クーロ教官。」

「そんな体勢で敬礼、挨拶をされたのは初めてだ。」

つい笑ってしまった。これが私と不敗の魔術師の最初の出会いだった。

私の言葉に頭を擦りながら立ち上がったヤン=ウェンリー候補生は改めて敬礼をした。

「戦史研究科初年生のヤン=ウェンリーです、クーロ教官。」

1つ頷き、此方も答礼をした。

「ユーリ・クーロ准将だ。よろしくウェンリー候補生。」

「さて、ウェンリー候補生。君に3つの選択肢をあげよう。視聴覚ブースの掃除、私の持つ本を教官室まで運ぶ、そして反省文だ。どれがいい?好きなのを選びたまえ。」

驚いた顔をしている。言われた内容を理解したのかおずおずと返事をしてきた。

「お荷物をお持ちします。」

手を差し出してきたので本を載っける。

「よろしく頼むよ。では行こうか。」

資料室を出てからウェンリー候補生に話しかけた。

「君は何で戦史研究科に入ったんだい?」

「歴史研究家になりたいので無料で歴史を学べる当校に入ったんです。」

「そうか、それで昔の映像を見ていたと云うことか。」

「はい。教官は何をしに資料室に?」

ウェンリー候補生の疑問に微笑みながら答える。

「講義で使う資料を取りに来たんだ。人類が地球にいた頃の戦法等を振り返ろうとな。」

ウェンリー候補生が怪訝な顔をしている。

「そんな古い戦法が役に立つんですか?」

そんなことを聞いてきた。それに対して正直に答えた。

「分からん。だが何かのヒントになるものが有るかもしれないし、知識として持っておくのは決して無駄ではないと思っている。私は今はここで教官の任に着いているがいずれは艦隊司令官になる。その時の為の勉強でもあるのさ。」

私の考えを聞いて少し考え込んでいる。顔を上げると意を決した表情をしていた。

「何故そこまで努力するのですか?出世欲ですか?名誉欲ですか?何が貴方を突き動かしているのですか?」

ウェンリーの真剣な表情に感じるものがあったので此方も真剣に答えた。

「私は今、准将の地位にいる。部下を何人も持ったことがある。そして何人も部下が死んでいる。その部下の生きた証、その部下の家族の悲しみ、苦しみ、様々な想いを背負ってしまったんだ。ここまで来て引き返すことも後戻りも出来ない。」

私の吐露した思いを聞いてウェンリーは俯いた。そもそも軍人なんて殺した殺されたなんて阿漕な職業だ。その職業で他人の思いを背負って戦うなんて馬鹿げているが、それでも死んだ者を無視して生きていくことも出来ない。

「難儀な生き方をしているんですね。自分は軍人に向いていませんね。」

そんなことを言うウェンリーに対して自分の考えを答えた。

「私も最初の少尉の時はそういった思いはなかった。昇進していく喜びがあった。部下を持って任務に当たる時もな。しかし、直卒の部下を亡くした時に抱き始めた。そして何人も亡くしていくと大きくなってきたんだ。」

言ってしまってからしまったと思った。まだ候補生に重たい話だ。悪影響が出ないか心配になった。

「それをどうやって自分の中で消化しているんですか?」

そんなことを聞いてきたので真剣に真摯に正直に答えた。

「消化なんて出来ていないさ。私は背負い続けて生きていくと決めたんだ。」

「何も感じない奴もいるし、自分の出世しか見えない奴もいる。でも私はそういった生き方しか出来ないんだ。」

「つまらない話をしてしまったな。ありがとう、ウェンリー候補生。ここまででいい。」

本を受け取り部屋に入ろうとしたら声をかけてきた。

「いえ、此方こそ色々とありがとうございました。よろしかったらヤンと呼んでください。」

そう言ってきたので。

「分かった、ヤン。また会おう。」

そういって部屋に入った。

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