禁断師弟がベル君の先輩なのは間違っているだろうか 作:ナカタカナ
今回はちょっと長いです。
ロキ・ファミリアが先に出発してから、とある事件が発生した。
なんと、ヘスティアが誘拐されたのだ。
犯人からの手紙にはベルが一人で来るようにと書かれていた。
「僕にこんなことをしてもいいと思っているのかい? 僕は、これでも神なんだぞ。」
十八階層の森林地帯にて、ヘスティアが縄で木に括りつけられていた。
「よう、来たなリトル・ルーキー。」
「リトル・ルーキー」とは、ベルの二つ名であり、ヘスティアを誘拐した犯人は、ベルが気に食わなかったようだ。
「神様はどこですか。」
「安心しろ、神様は無事だぜ。俺だって神に手をあげるような罰当たりなことはできねぇ。」
そして、二人は戦った。
ベルト対峙する冒険者の名はモルド。決闘が始まるや否や、ベルの目を砂で潰し、自身はすぐに、どこかの神から貰ったハデスの隠れ兜を使用し、自身の姿を隠した。
姿が見えない相手に、ベルは成すすべなくやられる。
「がっ」
「おらおらどうしたッ!!」
モルドはベルに拳を叩きこむ。
すると、異変に気付いたヴェルフたちが駆けつけた。
「一体、何が起きているんだ・・・」
ヘスティアは響いてくる剣のぶつかり合う音で、不安に駆られる。
「俺達もいくか?」
「そうだな、ここで見張ってばかりじゃつまらねぇし。」
ヘスティアを見張っていた冒険者たちも、戦闘に参加したいという闘争本能に駆られたようだ。
「ちょっと、待てよ。」
するとそこへ、誰かが待ったをかける。アースだ。
「なんだおめぇ?」
「あぁ、リトル・ルーキーと同じファミリアのやつか。神様を助けに来たのか。」
「アース君ッ!!」
あちこちを全速力で駆け回ったのか、少し汗を掻いている。
「なに、俺の義母さんに手をだしてんだ?」
「丁度いい、俺達も戦いたくてうずうず、してたところなんだ。」
「せいぜい、気持ち良く殴られてくれよ。ガハハッ。」
その瞬間、二人の冒険者は吹っ飛んだ。
「喧嘩するのに人質とってんじゃねぇよッ!!」
そう叫ぶアースの瞳には怒りの炎が揺らいでいた。
「大丈夫かヘスティア様!!」
「う、うん、助かったよアース君。ベル君は?」
「どうやら、犯人と喧嘩してるっぽいな。」
「急がないと!」
「あぁ、しっかり捕まってろよ。」
そういって、アースはヘスティアをお姫様抱っこする。
「ちょ、アース君!?」
「飛ばすぜ。」
そしてアースは走り出した。
元の世界で過去に飛ばされた際、七勇者の一人で、自身の妹分であるエスピを助けたときのように、アースはただひたすらに、走った。
「見つけた。あそこだ。」
「あぁ、だが、アイツらが邪魔だな。」
二人はベルの姿を捉える。しかし、その前には多数の冒険者とヴェルフたちが交戦していた。
「やめろおおおおおおおお。」
ヘスティアが争いを止めるべく叫んだ。 それと、同時にアースが跳躍した。
ヘスティアを抱えたまま、アースは冒険者たちを飛び越えて、ベルとモルドの傍に着地した。
モルドのナイフがベルの頬を傷つけた瞬間、ヘスティアの神威が解放された。
「やめるんだ。」
神威によって、モルドたちは争いをやめ、すぐさま逃げ出す。
そしてヘスティアはアースに降ろされると、すぐにベルに抱き着いた。
「ベル君! 無事でよかった。ごめんよっ! 僕のせいでボコボコにされて・・・」
「神様・・・僕の方こそ、護ってあげられなくてごめんなさい。」
これにて、一件落着と思い一安心。
ところが、突如ダンジョンが震えた。
「な、なんだよアレ。」
「これは嫌な予感がします。」
十八階層の天井に亀裂が入る。
そして生まれた・・・黒い巨人。ゴライアスだ。
このモンスターが生まれたのはダンジョンが神を排除するための措置なのだろう。
アースたちに緊張が走った。
「た、助けにいかないとッ!!」
ゴライアスはリヴィラの街を襲う。黒い巨腕によって薙ぎ払われ、街を踏みつぶす足は、まるで黒い鉄槌のようだ。
「本当に助けにいくのですか? このパーティで・・・」
リューがベルに問う。
「・・・」
ベルは仲間たちを見渡す。
「助けます。」
強くベルがそういった。
「あなたはリーダー失格だ。だが、間違っていない。」
リューは美しい顔を、英雄に憧れる少年のような表情へ変え、ゴライアスの元へと駆け抜けた。
「千草さん、神様をお願いします。」
ベルも、ヘスティアを千草に預けて、走り出す。
『あれが、神がダンジョンに入ってはならないという理由か・・・神も相当嫌われているようだ。』
「呑気にいってる場合かよ、なんとかしねぇとッ!」
『見た所、レベル5相当だな。』
「ハッ、面白れぇ。」
戦闘が始まりしばらく経った。
リヴィラにいた冒険者全員でゴライアスに立ち向かう。
「はあッ!!」
「せやッ!!」
桜花と命がゴライアスの足を斬りつける。
するとゴライアスは二人を標的にした。
「まずい
「ウィル・オ・ウィスプッ」
ゴライアスの口元で、魔法が破裂する。
「まずいっ!?」
煙から姿を現したゴライアスは再び魔法を放とうとヴェルフを見ていた。
「大魔フリッカァァァ!!」
まさに今、ゴライアスが魔法を放とうとした瞬間、何かがごライスの顔を殴り飛ばした。
「間に合ったな。大丈夫かヴェルフ。」
「すまん、助かった。」
そういって、ヴェルフは撤退する。
「アースさん、アンドロメダからの伝言です。これより街の魔導士が詠唱に入ります。詠唱を終え次第、一斉掃射するので、時間稼ぎをお願いしたいとのことです。」
「あぁッ、任せろ。」
アース、リュー、そして巻き込まれたアスフィの三人でゴライアスの注意を引き付ける。
「こっちを見やがれデカブツッ!! 大魔コークスクリューブロー!」
跳躍したアースはそのまま、ゴライアスの脇腹へ、数々の強敵を打ち破ってきた拳を叩きこむ。
ゴライアスは体勢を崩して、倒れ込む。
「ルミナス・ウィンドッ」
そこへ詠唱を終えたリューの魔法が炸裂する。
冒険者たちは各々が、自分のスタイルで黒い巨人へと挑む。連携何てものは知らない。ただただ、自分の戦い方で、他の冒険者の邪魔にならないように戦うというのが、ここでのルールだ。
「よぉ~っし!! 前衛は引けええええ!」
ボールスの指示で全員が退避する。
「放てええええええ!」
そして数十、数百の魔法がゴライアスを襲った。
直撃を喰らったゴライアスに止めを刺そうと、全冒険者が突っ込んだ。
しかし・・・
「グオオオオオオオオオオ」と雄叫びをあげると、ゴライアスの肉体は何もなかったかのように修復される。
「じ、自己再生・・・」
冒険者たちが絶望の淵へ落とされた。
さらに、十八階層へと現れた他のモンスターは増える一方だ。
「クラネルさんと、アースさんは、周囲のモンスターの掃討をお願いします。私たちがゴライアスを抑えます。時間を稼いで、魔法師たちで攻撃します。それでも倒せなかったら、何度でも倒します。」
リューの瞳が細く鋭利な物へと変わった。
「待てよ、リューさん。俺も手伝うぜ。」
「ありがたいですが、その前に、周囲のモンスターに襲われている冒険者たちを助けてあげてください。先ほどからモンスターは増える一方です。このままではゴライアスに潰される前に、モンスターの物量でやられてしまいます。」
「だがよ『それなら、私がやられないように、早くモンスターを倒してください。』あぁ、分かった。」
「死にますよリオン!?」
アスフィがそんなリューを見て、止める。
「ご武運を。」とだけ告げて、リューは再び風になった。
ヘスティアやリリは戦闘には参加せずに、補給地点にて冒険者たちのサポートに勤めていた。
「千草様は?」
「さっきの爆発で飛び出して行った。きっと桜花君たちの元だろう。」
「リオンッ!! 本当に死にますよ。」
戦闘が激しくなる一方で、ずっと一人、ゴライアスへ挑み続けるリューにアスフィが痺れをきらす。
「魔石を狙おうにも固すぎる。このままでは・・・」
「それでも、望みがあるのなら・・・」
そこへベルが現れる。
「クラネルさん!?」
「ファイアボルトオオオオオオオ。」
ベルの魔法がゴライアスの頭部へと放たれる。
雷の如き炎はゴライアスの顔、上半分を消し飛ばすことに成功するが、巨人はそれでも止まらない。
「グオオオオオオオオオオ。」
ゴライアスの腕がベルを襲うが、盾を構えた桜花が、ベルを背中にし、受け止める。
「ブレイクスルゥゥゥゥゥゥゥゥ。」
飛ばされた桜花とベルを緑の光を身に纏ったアースが受け止める。
「ベル君!!」
「桜花!!」
アースはヘスティアたちに意識を失ったベルを託し、光となってゴライアスへ突き進んだ。
「くそっ! モンスターが思いのほか、多かったせいで、ちっと遅れちまった。」
『焦るなよ童。』
「あぁ、目がチカチカして、頭が吹っ飛びそうだ。だけど!! 心は熱く、頭は冷静に・・・」
『分かっているならいい。いけ、童。』
牙を剥きだしにしたオオカミの如く、アースは拳を振りぬいた。
「大魔ソニックフリッカー!!」
音速を越えた拳はソニックブームとなり、ゴライアスの体へ突き刺さる。
「まだまだっ!!」
止まらない拳は更にゴライアスへと叩きつけられた。
「グオオオオ。」
ゴライアスの足がアースを潰しにかかる。
「大魔ソニック・アッパァァァァァァァ。」
それをアースは弾き返す。ゴライアスは再び姿勢を崩し、倒れ込んだ。
そこへ、回復した冒険者たちが一斉攻撃を始める。
高速戦闘の中でリューは平行詠唱を行い、命は重力魔法による結界を発動するために詠唱を始めた。
ベルはとどめの魔剣を使うために、己のスキルである「
「俺の拳のフルコースはまだ終わりじゃねぇええええええええ。大魔ソニックスマッシュ!」
「ルミナス・ウィンド!!」
「フツノミタマ!!」
アースの拳がゴライアスを吹き飛ばし、リューの魔法で切り刻む、最後にボロボロとなったゴライアスを閉じ込めるのは重力の結界。
しかし、結界はすぐさま解かれる。
「お前ら退けえええええええ!火月ッ。」
「あれは、クロッゾの魔剣・・・」
そこへヴェルフの魔剣が爆発を呼び起こす。
頑なにも魔剣を打つことを拒んでいたヴェルフが魔剣を使ったのは、彼の主神であるヘファイストスの言葉が原因だった。
「意地と仲間を秤にかけるのは止めなさい。」
「そうだ、ただの意地だ・・・」
そしてヴェルフは森へと落ちていく。
燃え盛る炎に身を焼かれたゴライアスに白い光を身に纏ったベルが近づく。
圧倒的な力の不条理に対して、そのたった一つの、ちっぽけな力で、逆らう・・・すなわち。
「英雄の一撃ッ!!」
「うおおおおおおッ!!」
直後、ロキ・ファミリアが置いて行った魔剣を使用したベルの一撃が炸裂した。
しかし、吹き飛んだのは首から上のみであった。
「ふざけろ・・・自己再生した部分が更に強化されていた、なんて・・・」
「あの一撃でも、倒せないなんて・・・」
「諦めんなッ!!」
誰もが終わりを覚悟した直後、アースが吠えた。
「俺の心は、魂は、宿った聖火は、まだ・・・消えちゃいねぇええええええええええ!」
「アース君!!」
魔呼吸によって、魔力を最大限まで回復したアースはブレイクスルーを解かずに、拳を天へと突きあげる。
「いけっ!アース君!」
「うおおおおおお 聖・大魔螺旋アース・スパイラル・ウェスタ・ブレイクゥゥゥゥゥゥゥゥ!!」
彼の拳に巻き付く螺旋は、魔力の塊ではなく、彼の主神の権能である聖火・・・決して折れることのない彼の心に宿った、力の本流であった。
「突き抜けろおおおおおおおおおおお」
そして、螺旋は、かの巨人を消し飛ばした。
「決めろ!ベルッ!」
「はいっ。」
その場に残った魔石に、ベルがナイフを突き立てた。
そして魔石は砕けた。
「ベル様とアース様がやりました。」
「よかったぁ~二人共無事で・・・」
「ハハハっ! 見たぞ、このヘルメスが、新たな
ゴライアスの討伐成功に冒険者全員の歓声が十八階層を揺さぶった。
書いてて思いました。本当にアースとヘスティア様は相性がいいです。
ベル君もまた、アースの弟になりそうですねw
とある弟「なに勝手に僕以外の弟を増やしているんだい?」
とある妹「ふわふわダイビングでミンチにされたいのかな?かな?」