どうも、志羽辰也です。   作:そっくりさん

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司波達也(し ば たつや)志羽辰也(し ば たつや)

 

第一高校の入学式の日。まだ開会二時間前の早朝。

 

「何故お兄様が補欠なのですか? 入試の成績はトップだったじゃありませんか!」

 

深雪は、自分が補欠であるのに納得いっていないのかそう言葉にする。

 

「深雪……俺の実技能力は知っているだろう? 自分じゃあ――――」

 

深雪をなだめるように俺はそう口にする。

 

「お兄様……そんな、「想っている」だなんて……」

 

――最後、何か大きな勘違いをしていたようだが。

 

ともあれ、講堂に去っていく深雪を見送り。

 

周辺にあるベンチに腰を落ち着けて、しばらく時間を潰していると。

 

「ここ、いいか」

 

誰かの声を聞いて、思わず動揺する。

 

なぜなら、その声は自分の声と()()()()()()()()()()()()()

 

声域・特徴どちらも自分と同じ。自分が発する声を聞くのと、何かの機械に録音した自分の声を聞くのとでは違って聞こえるという話は知っている。

 

だが――――この声は。自分と同じだ、と本能的に察してしまうほどにそっくりなそれだった。

 

動揺を前面に出さぬよう、取り計らって。

 

声をかけたと思われる人物に顔を向けると。

 

「――――ッ?」

 

そこに立っていたのは……まぎれもなく、()()()()()

 

顔も、髪も、体格も、声も。表面的に判断できる特徴、その全てが自分と同じだった。

 

生まれてからの付きあいである自分の顔など、とうの昔に見飽きている。

 

だからなのか、目の前に立っているであろう男の、あまりにも異様なそれに一瞬呼吸を忘れてしまう。

 

ただ似ているというレベルではない、何らかの魔法にやられたのではないかと疑ってしまうほどに――――あまりにも似すぎている。

 

まさか……クローンか?

 

そんな可能性を模索せざるを得ないほどに、あまりにも目の前にいる男と自分は酷似している――いや、“同じ”だと言わざるを得ない。

 

男を注意深く見ていると――――さらに驚愕せざるを得ないモノを目にすることになる。

 

……同じなのだ、身体の癖や歩く際の重心移動が、自分と。

 

――――そんな、バカな。

 

身体の癖や重心移動は、似せようとしても似せられないものなのだ。

 

どうしても、その人自体の“癖”が出てしまう。

 

遺伝子といったレベルと同じく、同じであることなど()()()()()()()()()()()()()()

 

だというのに、目の前にいる男は――――それすらも越えて、“司波達也”と同じそれだ。

 

常識――いや、世界の理というレベルでさえ超えるほどの完成度。

 

もしこの男が自分を殺して、“司波達也”という人物に成り代わるのなら、恐らく容易にできるのだろうとそう思わざるを得ないほどのソレ。

 

――――気味が悪い。

 

自分の中で、警鐘が鳴らす。

 

今すぐコイツをどうかにしろ。

 

さもなければ、破滅に繋がってしまうかもしれないと。

 

「ありがとう」

 

そんな長い思考を働いている中、またもや自分と同じ声がこの男から発した。

 

二度聞いてみたが――やはり、気味が悪い以外に何者でもなかった。

 

……胸にかけてあるエンブレムは、俺と同じ二科生徒を示すもの。

 

ここまで同じと来ると、もはや何が何でも同じだと言ってもおかしくはない。

 

「新入生だよな? 俺も同じ新入生だ、しばたつやという。よろしく」

「――――何?」

 

男から発する、名前を耳にして、背が凍る思いをした。

 

――今、この男はなんといった?

 

“しばたつや”。

 

偽名でもなんでもなければ、この男は俺と同じ名前を口にした。

 

……前言を撤回しよう。

 

まさか名前の読み方まで同じとは、流石にこれには驚愕の一言。

 

事前に俺のことを知っていたとしても俺と同じ名前を名乗るメリット自体がない。

 

とすると、本当に俺と同じ読み方の名前だということになるだろう。

 

これは夢か? それともドッペルゲンガーが俺を乗っ取ろうとしてきたのか?

 

そんな非科学的な論理を立てざるを得ないほどに、名前の一致は緊急事態のそれだった。

 

「……ああ、俺は司波達也というんだ。よろしく」

 

動揺を悟られぬよう、抑えて名を名乗ると、“しばたつや”である彼は驚愕めいた顔をする。

 

――知らなかった、のか? 俺が誰か知っている上でそう近づいてきたのではないのか?

 

いや、待て。

 

そもそも、ただ激似なだけの他人という可能性もある。

 

……ある、のか?

 

名前の読み方も同じなのに?

 

「まさか名前が同じなんてな。俺は志ざすの“志”に、はねの“羽”で“しば”。干支の“辰”に、也だ。まさか漢字まで同じ……なんてことはないよな?」

 

志羽辰也、と書いて“しばたつや”というらしい。

 

……漢字こそ、俺とは違うようだが、それでも読み方が“しばたつや”である以上何らかの意図を感じざるを得ない。

 

「あ、ああ。俺は司るの“司”に、なみの“波”で“司波”。達するの“達”に、也だ。よろしく」

「なるほど、司波達也か。よろしく」

 

そう言って、志羽辰也(しば たつや)は笑顔を浮かべる。

 

……自分が自分に笑いかけられているようで、非常に奇妙な気分だ。

 

その男は隣に座っているが、こうして近くで見てみても……やはり自分のそれと“同一”だと言わざるを得ない。

 

――何が目的だ。

 

たまたま同じ容姿で、たまたま名前の読み方が同じでしかない?

 

そんなわけがないだろう。明らかにこの男は何かの意図を持って俺に近づいている。

 

【精霊の眼】を発動させようかとも思ったが……この男に気づかれでもしたらそれでこそ面倒なことになる。

 

ここまで同じと来ると、恐らく俺と似たような技術を用いると言ってもおかしい話はない。

 

――――まさか。

 

【分解】や【再成】も使える?

 

その可能性も捨てきれない、とそう認識すると志羽辰也(しば たつや)への警戒を大きく引き上げる。

 

「新入生ですね、そろそろ開場の時間です……よ……?」

 

先輩と思われる女性が、俺達にそう声をかけたと同時に驚愕めいた顔をした。

 

……やはり、俺達が似すぎているという事実は周囲も認識しているようだ。

 

とすると、魔法ではない……?

 

いや、そう判断するのは早計だ。

 

ともかく、一刻も早くこの男の分析を進まなければならない。

 

俺の第一高校での生活は、ただ事では済まさなそうだ。

 

 

 

 

俺は志羽辰也(しば たつや)

 

両親とも非魔法師だったが、突然変異で魔法師として俺は生まれた。

 

いわゆる、“第一世代”というらしい。

 

せっかく持って生まれた力を有効活用したいと思って、この第一高校に来た。

 

張り切りすぎて、開場より40分ぐらい早く来てしまったものだからどこかベンチでも座って待つかと思い。

 

探していたら、あるベンチに誰かが座っていた。

 

どうやらスクリーン型の携帯情報端末をのぞき込んでいる様子が見られる。

 

そのベンチに空きがあったからそっちに足を運び、腰を落ち着けている人物に目をやると――俺とそっくりだった。

 

え、ドッペルゲンガー? と思いつつも、俺は話しかけることにした。

 

『ここ、いいか』

 

そう言うと、俺と同じ顔のしたそいつは、驚いた顔をしながら首を縦に振った。

 

改めて見てみると、何から何まで俺と瓜二つだ。

 

いやー……まさか自分と同じ顔をした人がいるなんて。

 

世界を探せば自分と同じ顔をした人が3人はいる、とかいう話を聞いたけどアレって本当だったんだなぁ。

 

そう思うほどに、そいつと似ていた。

 

世界は広いもんだなぁ……いや、この場合だと日本って広いもんだなぁ……か?

 

ともあれ、ベンチに腰を落ち着ける。

 

そこで簡単に自己紹介をしたわけだが、何と名前の読み方が同じと来る。

 

ええ、ナニコレ? そんなのってあるのか?

 

顔が似ているのでさえ奇跡に近いと言ってもおかしくないのに、名前の読み方まで同じ?

 

それ、どんだけの確率なんだ。

 

「……」

 

――――ところで、さっきから思ってたんだけどさ。

 

俺のそっくりさんがめっちゃ怖い。

 

表情こそ変わらないが、“謎の圧”を感じる。というか、警戒か?

 

顔がそっくり、というレベルではなく瓜二つっていうレベルだからなぁ。

 

俺も何かあるんじゃないかって、勘ぐってしまうけど……まぁ、初対面だし気にしすぎてもしょうがない。

 

けど、けどさ。もうちょっとその“謎の圧”を抑えてください。って声を大にして言いたい。

 

肌がピリピリするぐらいに、警戒がとんでもないんですよ。

 

――――俺、何かした?

 

警戒をしている司波達也(しば たつや)と反面、志羽辰也(しば たつや)は内面あたふたとしているのだった。

 




ちなみに、オリ主の戦闘能力は、普通に達也に負けます。もっともそれを覆すほどの魔法は持っていますが……
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